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第一章―イニティウム皇国 『皇国の悪女』
10-2.赤髪の騎士と対立
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(……どーにも嫌われてるんだよなぁ)
時は少し遡り、クリスティーナとリオが祭りへ出立した頃の事。
二人と別れたエリアスは建国祭の見回りの為に派遣されている騎士達と交代する為に騎士団の訓練用の広場へ集まっていた。
他にも収拾された騎士が数十人おり、その先頭でレディング騎士団の団長が見回りの手順を指示している最中なのだが、明らかに敵意を持った視線がいくつか自分へ向けられていることにエリアスは居心地の悪さを感じていた。
最年少であるのにも拘らず公爵騎士団内で元皇国騎士団員という屈指の経歴を持つことが災いしてか、入団当初から今日に至るまでエリアスに対して当たりの強い騎士や実際に嫌味を言われる機会というのは残念ながら少なくなかった。
騎士団に所属しているとは言え皆が爵位をもらえるわけではないこともあって、騎士団の中でも爵位を持つ者達とそうでない者達の立場の差は目立ちやすい。
若輩者で、尚且つレディング騎士団に在籍してから日も浅いエリアスに対し身分相応の対応を強いられることは、時に騎士としての誇りを持つ彼らの自尊心を傷つけることにも繋がる様である。
故にエリアスは騎士団の中でも悪目立ちしやすい人間であった。
(はー……帰りてぇ)
故郷にまでとは言わない。せめて皇宮という出世コースに帰らせて欲しい。
団長の話に耳を傾けながらエリアスは青い空を仰いだのだった。
建国祭中の見回りではレディング領を細かくエリア分けし、通常六人編成の班を更に二手に分けて騎士が巡回する。
領地の広さに対して一か所に割り当てられる人数が少ないのは騎士団の人数に制限があるという問題の為でもあるし、そもそもこの見回りは大通りの交通整理や治安維持という目的で行われているものだという理由がある。
魔物の襲撃などは想定されていないのだ。
というのも、そもそも魔物は人が多く行き交う場所へ現れることはめったにない。
少人数の集落などではたまに目撃されることもあるらしいが、少なくとも皇国のような栄えた国で魔物が人を襲う事例はここ数百年起こっていないはずである。
日が沈もうとしている頃合い。
魔物を殲滅したエリアスは班長からのげんこつを食らいながらも事情を説明し、現場へ班員達を誘導した。
「やっぱり妙ですよね」
「そうだな……。森とかならともかく、こんな道の真ん中でってのは」
エリアスの言葉に同意をするのは長年公爵家の騎士を務める班の長。
彼は獣の死骸を取り囲み難しい顔をする。彼にとっても街で魔物が暴れるというのはイレギュラーな事態であったようだ。
「しかし行動が早かったな。おかげで被害者はゼロか」
「いやあ、こういう時の勘は働くんですよね」
賞賛を素直に受け取りながらも感じるのは自身へ向けられた嫌悪だ。
班員のうち二人がエリアスを睨みつけるように見ていることに彼は気付いていた。
しかし彼らがエリアスに対して良からぬ感情を抱いていそうなのは何も今日に始まったことではない。既に慣れた光景だ。
「どうしますか? 念の為周辺を確認しますか」
「そうだな。……しかし死骸をこのままにしておくわけにもいくまい。一度二手に分かれよう」
騒ぎがなければ見回りの為とっくに二手に分かれている頃合いだ。特に異を唱える者もおらず、エリアスの所属する班は魔物の死骸の処理と伝達を行う者と周囲の安全の確保の為偵察へ回る者の二手に分かれることになった。
しかしその人選を聞かされたエリアスは思わず顔を強張らせることとなる。
時は少し遡り、クリスティーナとリオが祭りへ出立した頃の事。
二人と別れたエリアスは建国祭の見回りの為に派遣されている騎士達と交代する為に騎士団の訓練用の広場へ集まっていた。
他にも収拾された騎士が数十人おり、その先頭でレディング騎士団の団長が見回りの手順を指示している最中なのだが、明らかに敵意を持った視線がいくつか自分へ向けられていることにエリアスは居心地の悪さを感じていた。
最年少であるのにも拘らず公爵騎士団内で元皇国騎士団員という屈指の経歴を持つことが災いしてか、入団当初から今日に至るまでエリアスに対して当たりの強い騎士や実際に嫌味を言われる機会というのは残念ながら少なくなかった。
騎士団に所属しているとは言え皆が爵位をもらえるわけではないこともあって、騎士団の中でも爵位を持つ者達とそうでない者達の立場の差は目立ちやすい。
若輩者で、尚且つレディング騎士団に在籍してから日も浅いエリアスに対し身分相応の対応を強いられることは、時に騎士としての誇りを持つ彼らの自尊心を傷つけることにも繋がる様である。
故にエリアスは騎士団の中でも悪目立ちしやすい人間であった。
(はー……帰りてぇ)
故郷にまでとは言わない。せめて皇宮という出世コースに帰らせて欲しい。
団長の話に耳を傾けながらエリアスは青い空を仰いだのだった。
建国祭中の見回りではレディング領を細かくエリア分けし、通常六人編成の班を更に二手に分けて騎士が巡回する。
領地の広さに対して一か所に割り当てられる人数が少ないのは騎士団の人数に制限があるという問題の為でもあるし、そもそもこの見回りは大通りの交通整理や治安維持という目的で行われているものだという理由がある。
魔物の襲撃などは想定されていないのだ。
というのも、そもそも魔物は人が多く行き交う場所へ現れることはめったにない。
少人数の集落などではたまに目撃されることもあるらしいが、少なくとも皇国のような栄えた国で魔物が人を襲う事例はここ数百年起こっていないはずである。
日が沈もうとしている頃合い。
魔物を殲滅したエリアスは班長からのげんこつを食らいながらも事情を説明し、現場へ班員達を誘導した。
「やっぱり妙ですよね」
「そうだな……。森とかならともかく、こんな道の真ん中でってのは」
エリアスの言葉に同意をするのは長年公爵家の騎士を務める班の長。
彼は獣の死骸を取り囲み難しい顔をする。彼にとっても街で魔物が暴れるというのはイレギュラーな事態であったようだ。
「しかし行動が早かったな。おかげで被害者はゼロか」
「いやあ、こういう時の勘は働くんですよね」
賞賛を素直に受け取りながらも感じるのは自身へ向けられた嫌悪だ。
班員のうち二人がエリアスを睨みつけるように見ていることに彼は気付いていた。
しかし彼らがエリアスに対して良からぬ感情を抱いていそうなのは何も今日に始まったことではない。既に慣れた光景だ。
「どうしますか? 念の為周辺を確認しますか」
「そうだな。……しかし死骸をこのままにしておくわけにもいくまい。一度二手に分かれよう」
騒ぎがなければ見回りの為とっくに二手に分かれている頃合いだ。特に異を唱える者もおらず、エリアスの所属する班は魔物の死骸の処理と伝達を行う者と周囲の安全の確保の為偵察へ回る者の二手に分かれることになった。
しかしその人選を聞かされたエリアスは思わず顔を強張らせることとなる。
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