野良魔道士は百合ハーレムの夢を見る

むぅ

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4.奴隷編

6.されど過去に手は届かず

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「大事ね」
「そうですね、大事です」

私とイリーさんは2人、顔を見合わせながら溜息を吐きます。

ミスティちゃんが自己紹介として軽く言い放った過去。それは1つの里が滅ぶまでの数瞬でした。


曰く、一月ほど前の夕暮れ時、里に全身をローブに包んだ何者かが現れたのだと。

曰く、その何者かは里の男衆と何らかの言い争いをしていたのだと。

曰く、その何者かが何事かを呟くと同時に里が火の海に沈んだのだと。

曰く、ミスティちゃんともう1人だけが火の手を逃れ川岸に辿り着くも、しかしもう1人はその魔手から逃げ切ることができず、目の前で焼き殺されたのだと。

曰く、川を泳いで下流に逃げようとするも途中で溺れ、次目が覚めたときにはもう奴隷商人の馬車に放り込まれていたのだと。


――おおよそ、自己紹介の場で軽く聞いて良い内容ではないでしょう。ミスティちゃんの言葉は単刀直入にして時期尚早。その話の真偽も含め、こういう話は時期を置き、互いに信頼関係が築けた頃に語るべき事柄だと思います。

流石は幼女といったところでしょうか。空気が読めていません。

しかも本人の表情が固いせいか悲嘆に暮れたような態度が一切見られず、ただ淡々とそれを告げるだけというのも相当反応に困ります。見れば私以外も反応に困っているようで、特にミーシャなんかは目の端に涙を浮かべながらおろおろとしています。

鏡があれば見せてあげたい愉快な顔つきになっていますが、誰もそれを笑う気にもなれません。何故ならミスティちゃんの言葉が正しいのであれば、ミスティちゃんの巻き込まれた事件は小村が野盗に襲われて壊滅したとかいう話とは、比べ物にならない大事なのですから。


「あの青の森の里が滅びた、ねぇ……ミスティちゃんの言葉が嘘でも勘違いでもないのなら、それって国を揺るがす大事のはずなのだけれども――」
「わたしの里、有名なの?」
「そうね、ある意味有名よ。クランテットから南西に少し行った先、グリマルス山脈麓の森にあるエルフの里。
アズマイル聖王国とハルフェラル帝国の軍事境界線上に存在していて、大戦時には両国から侵攻を受けたにもかかわらず終戦までそれを撃退し続た、完全な治外法権と自治権、そして里の規模に似つかわしくない異常な自衛力を保持する、両国における事実上の緩衝地帯。
――この里の衰退と共に戦争が再開してもおかしくない、軍事的な要所。それが青の森の里なのよ。それが滅びたって、本当の話?」


すっと目を細めながらそう言うイリーさんの言葉に、私は小さく頷きます。

青の森の里は、立地としてはハルフェラル帝国に属する小さな里です。最寄りであるランタ村から、クノエッサ川をつたって山道を上流へと進んでも、徒歩で20日程度の場所にあるので卑怯の里と言って過言ではないでしょう。

しかしその実態はと言えば、ランタ村のような貧村など歯牙にもかけない強大な勢力。里の人数は50人前後とそこらの小村と変わりないらしいのですが、その住民のほとんどがエルフの長命に裏打ちされた膨大な戦闘経験を持つ歴戦の戦士であり、その全てが守護獣と呼ばれる強力な使い魔を携えていると言われています。

その上、里のある森の中での防衛戦の巧みさにかけて言えば、かつてハルフェラル帝国とアズマイル聖王国とが戦争していた頃に、帝国軍2万人と王国軍6万人の挟み撃ちにあってなお両軍を撃退したという冗談じみた逸話が残っているほど。戦時中はこの里が存在しているせいで両国共に森の中に潜んでの行軍及び奇襲ができず、それ故に戦争が長引いたという説すらあります。青の森の里とは、それほどの影響力を持つ一大勢力なのです。

それが一瞬にして滅びるなんて、そうそう考えられるものではありません。しかしそれが真実だというのであれば、それは間違いなく国を揺るがす大事です。大事なのですが――


「ん、よくわかんない。でも、おじちゃんもおばちゃんもみんな優しかったよ?」
「……まぁ、子供の認識なんてそんなものよね。実は名前が同じだけの別の里だったりして」
「そうかもしれないの。でも、それはあんまり関係無いと思うの。どっちにしたって、わたしの里は、もう、無いから――」
「うわぁーん! ミスティちゃんには私がいるよーー!」


――とまぁ、情報源のミスティちゃんがどうにも信用できないのです。人格的な問題ではなく、感極まって泣きながら抱き付いているミーシャが話の邪魔になっているからでもなく、正確さの問題で。

そもそもエルフに限らず、子供というものは目にした物をありのままを伝える技術に乏しいです。

それは単純に語彙力の不足であったり、前提となる知識の不足であったり、偏見による勘違いであったり、興味関心の違いであったり――とにかく、子供の言うことは理解が難しいことが多いのです。

今回の件についてもそうです。襲撃者は何者なのか。なぜ里が襲撃されたのか。なぜその場から逃げたのに住民が皆殺しにされたと断言できるのか。言葉をそのままに受け取るには、情報として欠けたところが多すぎます。

――それに、ミスティちゃんの言うことが全て真実だとして、私たちに何ができるというのでしょう。

里を助けに行こうにもあまりに遠く、全員死んだと断言されては助ける相手も居ない。ミスティちゃんの敵討ちに付き合おうにも、その正体にたどり着く術が無い。そもそもミスティちゃんは敵討ちを望んでいる風ではなく、ただミーシャを手懐けようとしているだけ。要するに、ミスティちゃんの過去を聞いたところで私たちに何ができるという訳ではないのです。

もしかするとミスティちゃん自身、最初からそれを理解していたのかもしれません。どれだけ足掻いたとしても、過去に手が届くことはない。ならせめて、より良い未来に手を伸ばすべきなのだと。

奴隷として生活してきた日々がそうさせたのでしょうか、あるいはまた別の理由か。彼女はすでに、どのような形であれ自らの過去に折り合いをつけています。

――強い子です。それがたとえ度重なる不幸に感情が麻痺しているだけなのだとしても、前に進むことができるのであれば、それは紛れもないこの子の強さ。

それを認めないつもりもありませんし、私の女であるミーシャの奴隷として今この場に居る以上、もはや手放すつもりもありません。それにミスティちゃんとはもう、大人の一夜を共にした仲でもあります。私の主観ではもう、ミスティちゃんは私たちの仲間です。


「でも、多分これで終わりじゃないのよねぇ」
「私もそんな気がします」


そうして私とイリーさんは再度顔を合わせ、本日二度目の溜息を吐きます。

ミスティちゃんにとって、青の森の里が滅びたことは過去の話です。その切り替えの早さは称賛に値するべきですし、もし仮にそれが現実から目を逸らしているだけなのだとしても、心を守る対処療法としては悪くないでしょう。

しかしそれでは済まされないのが私たち冒険者。手に入れたあらゆる情報を吟味しあらゆる驚異の気配を嗅ぎとらなければ、ふとした拍子にポロっと命を落とす類の人種。ミーシャのように感極まって泣きながらミスティちゃんを抱き締め撫でているだけでは生きていけないのです。

特に今回の場合、ミスティちゃんがもたらした情報にはとても重要な点があります。矛盾点と言い換えてもいいかもしれません。


「青の森の里を遅う理由がある勢力は、私が知る限りたったの2つ。アズマイル聖王国と、ハルフェラル帝国。その境界線上にある里なのだから、まあ当然とも言えるわね。
でも現在、アズマイルは戦後の内乱で政情が不安定なの。どのくらい不安定かというと――そうね、国境を隔てたジューディス家に対して、情報を封鎖しきるほど人的余裕が無い程度には、ね」
「でも、イリーさんの様子を見る限り、初耳なんですよね?」


そう尋ねれば、イリーさんは小さく頷きます。

なんとなく予想はしていましたが、こうなると話は面倒です。なぜならこの情報に「まだ貴族だった頃のイリーさんが知らなかった」という一文が付け加えられるだけで、途端に不穏な気配を発するようになるのですから。


「一月前――つまり私がまだ貴族だった頃に情報が私にまで回ってこなかった時点で、この襲撃犯は帝国内に拠点があると考えられる。そしてミスティちゃんの口ぶりから察するに、本当に一人で全てをなしたとは考えにくいけれども、ごく少数の精鋭によって破壊工作は行われている。で、もしそうだとしたら、そんな精鋭を用意できる帝国内の勢力もまた、限られている。
さらに言えば、軍事目的で動いたとも考えにくいわね。青の森の里はアズマイル以外に攻め込むときは要害になりえないし、そのアズマイルは現在、王位を巡って内乱中。しかもその筆頭勢力には帝国の息がかかっているから、武力行使のために青の森の里を乗り越えなければならない理由が無いの。つまりこれは、軍事目的での襲撃という訳ではない」
「では、目的はなんだったのでしょうか? ……私には皆目見当もつきませんが、どうにも嫌な予感が拭えないんですよね」
「あら、セレスもそう感じるの。セレスって結構脳筋だから、こういう推論の場で意見が合うのは珍しいわね」


溜息交じりにイリーさんはそう言いますが、別に私は脳筋ではありません。ただ師匠であるクリックずさんの影響か、何かと数字や情報を引き出すイリーさんの考え方と比較して、ほんの少しだけ直感や根性論に頼っているところが多いだけです。

だからという訳ではありませんが、冒険者としての活動計画を話し合う際に意見が対立することも少なくはありません。もちろん、多少の話し合いで擦り合わせができる程度の差ではあるのですが、最初から同じ結論に達していることはそうそう無いのです。

ですがその分、最初から意見や推論が噛み合った時には、議論がスムーズに進むのです。異なる考え方で同じ結論に達したという実感が、出した結論に対する確かな自信となるのでしょう。

イリーさんが珍しいと言ったのは、そういう事です。そして今回もその例に漏れず、私でも理解が及ぶ範疇でイリーさんは答えを返してきました。


「帝国内に拠点を持ち、十分な情報操作能力を持ち、青の森の里を滅ぼしうる精鋭を従え、そして軍事に関わらない目的を持った組織――別に消去法でそれしか残らないって訳じゃないけれども、どうにも嫌な組織が選択肢の中に残るのよ。そしてその組織が下手人だった場合、おのずと目的も1つに絞られる」
「――ああなるほど、従魔聖典主義者の可能性ですね。それは確かに他人事では済まされませんね」


要するに、青の森の里が魔王の封印に関わっていた場合です。もしそうだった場合、時期的にもイリーさんを襲った従魔聖典主義者との関係性を疑わざるを得なくなります。そしてその可能性がわずかでも残っている限り、ミスティちゃんの身に起こった悲劇は対岸の火事だと言い切れません。

しかしながら火急の事態という確信も無く、さらに言えば何が起こりうるかも分からない。義憤に駆られて声を上げるなど下策も下策。魔王の封印が絡んだ情報としては、情報の信頼性を加味したうえでも重要なものではありますが、対応に困る代物であることに間違いは無いのです。


「まぁ、これについては今後、長期的な活動計画を立てる際の判断基準としましょう。ブランクポーションの購入費と生活費で家計が圧迫されて中長期的な活動ができない以上、この情報を扱える段階ではないわ」


つまるところ、保留。過去が追いかけてくるような事態になったとしても、その時はその時。それがミスティちゃんから得た情報に対する結論です。

パーティーを率いる者として、これ以上ミスティちゃんに寄った決断は下せないでしょう。いかに義憤に駆られた声を上げ、耳障りの良い美辞麗句を称えようと、それで腹が膨れるのは貴族だけなのですから。


「そうですね、でも――いつか一度は、ミスティちゃんは故郷に帰るべきだと思うんです。急な別れであったのなら、それを悼む時間はきっと必要ですから」
「――そうね、そうしましょうか。そういう遠出は自由人らしくて悪くないわね。
それにしても押し掛けの性奴隷だっていうのに、やけにミスティちゃんに甘いじゃない。何か思うところでもあるのかしら?」
「それはまぁ、ミスティちゃんをミーシャに託したっていう前の主が妹と同じ名前で、なんとなく無視できなくなったというのもありますが――その、ヤることはヤッてますし、ね?」
「ふふっ……このロリコン」
「せめて親心と言ってくれませんか。手、出しちゃいましたけど」


それでもいつかは、なんて思うのはもしかするとお節介なのかもしれません。きっと明日どうなるか分からない冒険者としては、馬鹿を見る典型であるとも言えるでしょう。

ですがそんなお節介でミーシャとミスティがじゃれ合い、マリーさんがお姉さんぶって窘めようとする、こののどかなひと時を甘受できるというのであれば、それはきっと悪いことではないのでしょう。あるいはこの守り、慈しみたくなる感情をこそ母性と呼ぶのかもしれません。

目を細めて柔らかな笑みを浮かべるイリーさんも、きっと同じ気持ちを抱いていることでしょう。勿論、夜になれば手を出すところまで含めて。


「随分と肉欲にまみれた親心ですこと……してその親心は、嫁の連れ子にどういったご機嫌取りをしてあげるのかしら?」
「イリーさんが考えているのと同じだと思いますよ。どうせやることは変わりませんし、これも縁だと思えばなかなか良いものです」




――――――――――――――――――――――――――――――――




「おねーちゃんをペットにしちゃダメなの? 昨日、ちゃんと言うこと聞いてくれたのに?」


自己紹介も終えてしばらくしたのち、セレスちゃんが放った「ミーシャは私の女なので勝手に盗るのは禁止です」という言葉にミスティちゃんは目を見開いて驚く。かくいう私もびっくり。セレスちゃんてば、いきなり私の女だなんて大胆なこと言うんだから。ちょっと胸がキュン、ってなっちゃった。


「だ、ダメに決まってるよ! 私はお姉ちゃんでご主人様でハーレム主なんだから、そういう恥ずかしいことしちゃダメなんだよ! いや別に、ペットを飼うのが禁止ってわけじゃないけどね?!」
「そうなの……おねーちゃん、飼えないの……」


でも一番びっくりなのは、ミスティちゃんが私のことをペットにするつもりだったってことだ。それも言い方からしてその日の夜だけって感じじゃなくて、死ぬまでずっとってニュアンスで。

奴隷だからペット禁止――なんてことは言うつもりは無いけれども、それでも私はご主人様でありお姉ちゃんなのだ。昨日は、ちょっと、その、一本取られちゃったけれど……あれは私のハーレム入りをした記念の出血大サービスだから。ずっとペットにしちゃって毎日あんなことをするなんて、恥ずかしいからダメに決まっている。

でもなんだかミスティちゃんは、ただペット化を断られたにしては相当ガッツリ落ち込んでいるように見える。あんなに悲しい過去を話していた時よりも、今の方がずっとダメージを受けているみたい。

それはまるで昔私が修行から逃げるために作った秘密基地の扉の傍に会心のフルスクラッチモデリングゴーレムを置いていた時、見つけたぞと叫びながら秘密基地に押し入ってきた師匠がゴーレムの上に思いっきり倒れ込んで完膚なきまでに粉々にしてしまった時に、その欠片を拾い集めてお掃除している時の私のよう。見ているだけで辛いのが分かっちゃう、あの感じだ。


「ミーシャをペットにしようという判断はなかなか良いですが、可愛いペットは早い者勝ちなんです」
「ねえセレスちゃん、今私のことペット扱いしてなかった?」
「なんのことでしょう。とにかく、ミーシャの独り占めはいけません。良いですか?」
「……ペット、飼えないの……?」


ちょっぴり強い口調のセレスちゃんに押し負けたのか、ミスティちゃんは俯きながら返事をする。絞り出すようなミスティちゃんのその言葉を聞いて、その心境をおぼろげながらも理解した。

たぶんミスティちゃんは私が好きすぎて、無理にでも私を捕まえたかったんだろう。恋は盲目っていうし、それで色々と加減が分からなくなっちゃってたのかも。

私はやっぱり罪な女だ。こんな幼気な女の子を、この身から溢れる超究極魔導士の全方面最強魅力でもって、たった一晩で篭絡してしまうだなんて――


「こんなに弱そうなおねーちゃんだったら、今のわたしでも簡単に契約できるかなって、そう思ったのに……弱くても、ペットになってくれるだけで嬉しいのに……」
「にゃんで!? 私弱くなんかないよ?! 超究極で超最強だよ! 見ればなんとなく分かるでしょ!? 強者のオーラ、出てるでしょ?」


想定外の返答に必死で抗議するも、落ち込み気味のミスティちゃんはそっと目を伏せて残念そうに首を横に振るだけ。まさかと思ってセレスちゃんに視線を向けると、見ているだけで癒されるような笑顔を浮かべて「そういう年頃ですからね、分かってます」と一言。セレスちゃん、それ絶対分かってないやつだから!

ほっぺたを膨らませながら、癒しのおっぱいを求めてイリーちゃんに抱き着く。

クランテットで私の無双を直に見たイリーちゃんなら、私の最強っぷりも分かっているはず。その証拠にほら、ふかふかのおっぱいに顔を埋めさせてくれながら、頭をなでなでしてくれる。

これこれ、こういうのなんだよ。この最強無双ハーレム主にありがちなチヤホヤ感は、イリーちゃんがそういうお約束を分かっている証拠だ。


「一応聞いておくけれど、ミスティちゃんはなんでそんなにペットが飼いたいのかしら? 何もしなくてもミーシャちゃんがこうしてしがみついてくるし、寂しくはならないと思うのだけれど」
「――ううん、それじゃあダメなの。システィが最期に言っていたの。「わたしのことは忘れて、ペットと一緒に幸せに暮らして」って」
「そう……それじゃあ、ちゃんとしたペットを探さないといけないわね。運命の出会いも大事だけれども、守護獣との契約はよく考えた方が良いわよ?」


その上ミスティちゃんとのスキンシップも忘れない。イリーちゃんの柔らかな笑みを目の当たりにしたミスティちゃんも、少しずつ機嫌を直してくれているみたいだ。

こういう細かな気配りができるあたり、イリーちゃんは実にハーレムメンバーの鑑だ。元お嬢様なだけあってお母さん力が高い。みんな見習えー。


「まず、守護獣に必要な最低限の条件は3つ。エルフに匹敵する寿命を持つこと、ミスティちゃんと仲良くなれること、そして実力が十分であること。
まあ守護獣っていうのはそもそも名前の通り、弱々しい幼少期も無謀な思春期も寿命相応に長いエルフを外敵から守るために、生涯に渡って契約する魔物だから、これは絶対条件ね。
それにミスティちゃんだけじゃなくて、私たちとも話が通じるような性格じゃないといけないわね。たまにいるのよ、何度注意してもぽけーっとしていてうっかり屋さんで勘違いが多い上に目を離せば1人でどっかいっちゃう人攫いに合いそうなチョロい子とか」
「おねーちゃんみたいなのじゃダメってこと?」
「ええ、そういうことよ」


というかなんでミスティちゃんてば、「何度注意してもぽけーっとしていてうっかり屋さんで勘違いが多い上に目を離せば1人でどっかいっちゃう人攫いに合いそうなチョロい子」って言われて私を思い浮かべるのさ。

そしてなんでイリーちゃんも肯定しちゃうのさ。イリーちゃんは私の最強ハーレム主っぷりを知る側だというのに――ああでも、おっぱいに挟まれているとほっこりして怒れなくなっちゃう。くそぅ、私を惑わせる邪悪なるおっぱいめ。揉んでやる。本当に揉んでやる。揉んじゃうぞ。


「それを踏まえて、私たちはミスティちゃんの守護獣として丁度良い相手に心当たりがあるの。おそらくエルフに匹敵する寿命を持っていて、ほぼ間違いなくミスティちゃんなら篭絡できて、実力が十分にあって、とってもチョロい女の子の、ね」
「え、誰?! まさか更なる新ヒロイン?! ハーレム特盛ヒロインマシマシの酒池肉林なの?!」


そんな不満をぶつけてやろうかと手をワキワキさせ始めたころ、ふとイリーちゃんが聞き捨てならないことを言う。

まさかの新ヒロインの予感。でもペットに最適ってどういう意味なんだろう。まあ何はともあれ、ペットにするのは良くないと思うけれど、出会いって意味では大歓迎。アレンテッツェは出会いの街だったのかと秘かに感動する。


「いや、ミーシャちゃんも知っている子よ」
「え、じゃあティエラちゃん? ……じゃないよね。だとしたら……ま、まさかあの忌まわしき受付ジョー……?」
「素晴らしい発想の飛躍ありがとう。全然違うわ」


しかし知り合いであるという情報から脳裏に浮かんだまさかの可能性に身を縮めれば、イリーちゃんは面白おかしそうにほっぺたを突いてくる。

なんだよぅ。だって、あの受付ジョーが私のハーレムに殴りこんでくるのって、なんだか怖いじゃん。違うらしいから安心したけれど、じゃあいったい誰なんだろう?

女の子って言っていたから男の子のエルルゥ君や、実はどっちなのかよくわかっていないスラみぃじゃないし、そもそもペットにするって言うくらいだから魔物な訳で、その上女の子って――あっ、もしかして――


「ジュゼちゃんに、ミスティちゃんの守護獣になってもらいましょう。当面の目標はジュゼちゃんの捕獲と説得、あとは植林ね」
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