19 / 52
2.お嬢様&メイド編
10.戦い続けるということ
しおりを挟む
ロッシーニュ・エルグランは満身創痍だった。否、もはや半死人と言って差し支えないかもしれない。
岩をめくり上げて現れたことからも分かるように、遅れて崩れてきた瓦礫に押し潰されていたようだ。
そしてそれは戦闘に耐えることのできない老齢の身体をマジックポーションの濫用で誤魔化していたにすぎないロッシーニュにとって、十分に致命打たりえた。
たとえマジックポーションで耐久力を補強していようと、それは多少の切り傷を誤魔化せる程度のものでしかなかったということだ。現に目の前のロッシーニュは頭から血を流し、息は荒く、足元はおぼつかない。
それに服の上からでは分かりにくいが、剣の柄に添えられた左腕の関節が1つ増えている。恐らくは身に沁みついた動きをなぞっているのだろうが、その左手に剣を握る力は無く、もはや片手で剣を振っているのと変わらない状況だろう。
そして身体面だけでなく、状況もまたロッシーニュにとって厳しいものがある。
ロッシーニュが先ほどまで私と、そして飛び入りの槍使いの少女――確かミーシャからはセレスさんと呼ばれていたか――と単身で渡り合えていたのは、相性によるものが大きい。
私に対しては慣れない正面からの戦闘を強いらせ、恐らくは元軍属のものであろう正統剣術で着実に追い詰めてきた。
セレスさんに対しては剣筋を見切られていると勘付くや否や、人体の限界に迫る量のマジックポーションを使用することで肉体をさらに強化し、読み合いを放棄した力押しでセレスさんを押していた。
前者の戦術ではセレスさんに対応できなかったものを、戦術の変更により相性差を覆したのだ。実際、それに不利を悟ったセレスは一か八かの捨て身の突撃を選択している。
だがそれは、私が戦闘不能状態になっていたからこその選択。もしも私が健在の内にセレスが私に手を貸す判断を下していれば、その選択だけはあり得なかっただろう。
そもそも過度のマジックポーションの使用は、場合によっては死ぬことすらあり得る危険な行為だ。マジックポーション内に込められた魔法が体内で過剰に駆け巡り、その魔力で全身が内側から傷つけられていくのだ。
それ故にマジックポーションの追加をした後のロッシーニュはその動きに精彩を欠き、隙を多く晒すようになった。私が健在であれば、もう3回は首を落とせていただろう。
しかしそれはマジックポーションを服用しておらず、身体能力に差を付けられたセレスにとってそう簡単に突けるものではなかった。それを確信していたからこそのマジックポーションの使用であり、その隙を突ける私が既に戦闘不能であることを前提としていた行動だったのだ。
しかしミーシャの治癒魔法により私が戦線に復帰したことで、その前提は崩れ去った。
私に合わせた戦いをすればセレスに凌がれ、セレスさんに合わせた戦いをすれば私に隙を突かれる。その上二対一の数的不利もあり、さらに言えばマジックポーションの効果時間ももう程なくして身体への重篤なダメージを残して消え去るだろう。
退路すらも先の崩落で塞がれたロッシーニュを待つものは、もはや死以外に無い。そして今も、セレスさんと斬り結んでは私に隙を突かれ、傷を増やしながら距離を置くという動きを繰り返している。
逆転の目は無いだろう。ここまで有利な状況に持ち込めば、安全マージンを多く取っても結果は変わらない。故に私もセレスも、無茶して攻め込むような真似はしない。
「老い故に引けぬ、と。痛々しいですね……」
それでもなお猛々しく吠え、もはや死に体と言うべきロッシーニュの身体を動かしているものは執念以外にあるまい。
失った妻子を取り戻すという彼の言をそのまま受け取るのであれば、彼の望みは彼自身が生きているうちにしか果たすことはできないのだ。
つまり老齢のロッシーニュにとって、これは最後のチャンスなのだろう。だからこそこうして、絶対的不利な状況に立たされつつも不退の構えを示しているのだ。
それを正面から見据えれば、敵ながら僅かな憐憫の情すら浮かんでくるものだ。かといって絶対的な敵対者である以上、手を緩めるつもりは毛頭ないが。
「痛々しい、ですか。あの気迫、私にはそうは見えません」
そう語るセレスさんは腰を落とし、轟々と唸る螺旋槍を構える。
その表情は深刻さを漂わせるもので、有利にある者のそれではない。むしろ追い詰められたような、切羽詰まった表情をしている。
「お嬢様とミーシャが戻ってくるまで持ちこたえれば、それでほぼ勝利です。そこまで気負う必要はないのでは?」
「それでも、です。あの老人から感じるこの威圧感、デザイアパイソンと相対した時のそれに劣りません」
「いくらなんでも比較対象にデザイアパイソンは言い過ぎでは――――ん、デザイアパイソン?」
そうしてふと、つい最近どこかで聞いたような魔物の名前を耳にして内心首を傾げる。
どういう訳かその言葉が頭に引っかかる。デザイアパイソンに何か重要な、今すぐにでも思い出さなければならない事があるような気がしてならないのだ。
「それに、獣は手負いが一番恐ろしいと言いますし――どうかしましたか?」
「いえ、何か引っかかって――ああっ!?」
そう、確かお嬢様はデザイアパイソンについて、昨日こう言っていたはずだ。「デザイアパイソンの正体は、フォレストボアが封印から漏れ出た魔王の魔力によって変質したものだ」と。
言い換えればそれは、魔王の魔力には魔物をより強力な存在に変質させる力があるということだ。――今、封印を解かれた魔王の腕から奔流となって放たれている魔力に。
その影響は、広義の魔物である人間に対しても例外ではないはず。人間の成り立ちを考えれば、そうならない理由が無い。
そして私たちの挟撃に翻弄されているロッシーニュの動きを改めて見てみれば、攻めかかっているように見えてその実時間を稼いでいるだけのようにも見える。あるいは、常に私たちよりも溢れ出る魔力の源流たる魔王の左腕に近い位置を維持しているようにも。
考えれば考えるほど、見れば見るほど。そうであって欲しくはないという願望とは裏腹に、予感を裏付けるだけの現状が目に入ってくる。
そして極めつけに、かつて碧く染まっていた瞳が、デザイアパイソンの鱗のような朱に染まっている。これが決定打となり、私は1つの確信を持つ。
間違い無い。ロッシーニュの狙いは魔王の魔力を浴びることによる自己変質と、それに連なる身体能力上昇を利用した状況の打開だ。
「まさかそんな――状況を把握してすぐ、そんな勝ち筋に気付くなんて――!」
そしてそれはまさしく、ロッシーニュという男が尋常ではない傑物だということの証明でもあった。
自身の変質を待って状況を耐え凌ぐというのは、言うほど簡単な話ではない。
むしろ、本来であれば不可能な選択なのだ。何故なら変質による身体強化は、ロッシーニュのみならずこの場に居る私やセレスさんにまで及ぶのだから。
もしロッシーニュがこの作戦を断行するのであれば、私たちよりも早く肉体を変質させなければならない。そうでなければ身体能力に差は付かず、ただ数の利を押し付けられるばかりになるからだ。
だからロこそロッシーニュは戦闘が始まってすぐ、圧倒的不利な状態だというのに自分から斬りかかってきたのだ。
私たちが、ロッシーニュよりも魔王の腕から遠い位置から睨み合いを始めるように。ほんの僅かでも、自分の方が変質までの時間が短くなるように。
――ロッシーニュはこの決断を崩落で致命打を負ってすぐ、状況の把握も満足にいかない土煙の中で行ったのだ。
場が仕切り直され、それが自らにとって不利なものだと誰よりも早く悟るや否や、勝利条件からひっくり返してきたのだ。
私はロッシーニュを強敵だと既に認めていた。正面戦闘においては格上であることも。
だがしかし、それでもなお。私はまだ、ロッシーニュ・エルグランという男の底を見誤っていたらしい。
「何か心当たりがあるようですね。時間は敵ですか? 味方ですか?」
「ロッシーニュの狙いはあの魔力による肉体の強化。長引けば長引くほど、こちらが不利になりま――」
「なら突撃します。私は後衛のための時間稼ぎ以外には、捨て身の特攻くらいしかできませんから」
私の言葉に何か不穏なものを察したのか、セレスさんが簡潔な質問と共に構えを変える。それは崩落前、ロッシーニュに突貫した時の姿勢と同じだ。
それを見るロッシーニュの表情に、僅かながらも苦いものが浮かぶ。どうやらロッシーニュにとって、私が復活した状態で崩落前の状況を焼き直されるのはよろしくないものであるらしい。
だがそれも当然。これは私たちが勝利するための一手ではなく、ロッシーニュを敗北させるための一手。これで困って貰わなければ、困るのはこちらだ。
恐らくセレスさんは初見ながらもロッシーニュに並々ならぬ脅威を感じ、それ故に彼の生存すなわち私たちの敗北条件であると判断したのだろう。そして飛び入り故に私たちの勝利条件を知らないセレスさんにとって、優先すべきは敗北の可能性の排除なのだ。
「突撃後の後詰めは任せて良いですか? 私、対人戦の経験はほとんど無いので、単身では無力化できる自信がありません」
「良いですけれど……いや、良いんですか? それでは、セレスさん1人にリスクを押し付ける形になってしまうと思うのですが」
しかしいくらミーシャの関係者だからといっても、さすがにそれはサービス精神が過ぎる。
セレスさんがこの場で突撃すれば、その対処によってできた隙を私が突くことで、ロッシーニュを完全に仕留めることができるだろう。だがセレスさんもまた、ロッシーニュに仕留められる可能性があるのだ。命を失うことも、当然考えられる。
私とセレスさんはまだ出会って数分も経っていない、間にミーシャを挟んだそう深くもない関係だ。そんな私のためにそこまで命を懸けることなど、正気とは思えない。
都合が良いことは嬉しいが、都合が良すぎると裏が気になってしょうがないのはクランテットの住人に特有の心理だろうか。
「今更ですよ。助けるって決めたんですから、最後まで助けきります。
それにさっきから気が昂ぶると言いますか、3日ぶりのミーシャで色々と抑えが効かなくなっていると言いますか……正直に言ってしまえば、暴れたくてしょうがないんです。先ほどから、なんだか昇り調子ですしね」
だがそう言って獣のように獰猛な笑みを浮かべるセレスさんの、僅かながらも朱が差し始めた瞳を視界に入れた時にその疑念が杞憂であると察せた。
魔王の魔力により変質が始まった影響か、それとも尋ね人を見つけた興奮からか、やたらと闘争心が高まっているようだ。助けに来た瞬間はさておき、どうやら今は本当に正気ではないらしい。
「分かりました。私も精一杯、セレスさんのフォローに入ります。――恩人に死なれるのは、寝覚めが悪いですから」
私が何を言ったところで、理性が沸騰しかかっている今の彼女は止まらないだろう。だとすれば私が彼女に報いる術は、彼女を生きてこの修羅場から帰すことしかあるまい。
幸い、勝利条件はもうすぐそこだ。
そう覚悟を決め、私もまたセレスさんの突撃に合わせる準備をする。
「ありがとうございます。でも折角のメイドさんなんですから、私のことはご主人さまって呼んでくれませんか?」
「正気を失っているにも程がありませんか? まあ良いですけれど――ご主人さま」
「滾ってきました。では――行きますよっ!」
明らかに正気ではない、むしろ正気放っているとしたらマズい台詞を吐いて、槍で風を裂き、突進していくセレスさん。その背を追うように、私もまた走る。
万が一にもセレスさんが殺されるよりも早く、ロッシーニュの首を刈り取る。その必殺の意思を携えて。
---------------------------------
ロッシーニュ・エルグランという男は、かつて幸福の形を知っていた。
軍人として戦場を駆ける高揚感。その先にあるものは強敵との死闘。死闘の果てには常に勝利がその手に握られ、そして誰もがそれを勇者の所業だと褒め称えた。
勝利の後に戦友と呑む酒の味も、彼の知る幸福の形の1つだ。出世街道を突き進んでいるという実感と共に煽る酒は格別のものだ。
だが彼を最も満たしていたものは、戦果よりも戦友よりも、何よりも彼が愛した妻の存在だろう。輝かしいながらも荒々しい日々に、安らかな一時を与えてくれる存在が心を通わせた相手だというのは、かけがえのない幸せそのものだと彼は確信していた。
彼は幸福だった。戦場においては無双の限りを尽くし、戦場から帰れば階級を上げていき、家に戻れば愛する妻が居た。
そしてそんな幸福に満ちた日々は、彼の妻が第一子となる娘を産み落とし、彼が栄えある近衛騎士団にその名を連ねるまで続いた。――そこまでしか、続かなかった。
いつ、どこの国でもそうだが、本当に優秀な人間だけが常に上に立っている訳ではない。また、上に立つ人間が常に善良であるという訳でもない。
高みに昇りつめれば、大抵は悪意の深さと知恵の回りが物事を動かすものだと気付くのだ。
だが人生の絶頂期にあり、そしてまだ若かった彼は、その事に気付くことができなかった。妻子の待つ彼の屋敷に、暗殺者の魔の手が忍び寄るその瞬間まで。
一体誰が、どのような理由で差し向けた手合いかは分からない。だが、その日彼の幸福は物言わぬ躯と成り果てた事だけは確かだった。
そしてこれを幸いと言って良いものか、放たれた50を超える暗殺者と彼の妻子が眠る屋敷には火が放たれ、彼は修羅場を生き延びながらも、その死を確信されたことにより追撃の手を逃れたのだ。
ロッシーニュ・エルグランという男は、かつて幸福の形を知っていた。
そして彼は今はその手から零れ落ちた幸福をその手に取り戻すためだけに、ただ一人で戦いを続けてきた。
失われた人間を取り戻す手段を探し続けた。たとえそれが迷信じみたものであったとしても、そこに可能性があるのならなんだってした。
そうして今、彼は奇跡を起こせるだけの力の存在を確信した。――もう探す必要はない。ただ、奪い取れば良いのだと。
「――潮時、か。まあ、急造の策では見抜かれても当然だろうな」
しかし満身創痍の身体を補う策を見抜かれ、態勢の整っていないうちの決戦を強いられた現状に、ロッシーニュは自らの敗北を確信した。
この状況からでは何をしようと自身が魔王の力を手にすることはできないのだと、その確信に至ったのだ。
遠巻きに睨みを利かせている間の会話の中で気付かれたようだが、そうでなかったとしても、後しばらくすれば動きの変化から気付かれたことだろう。つまるところロッシーニュはこの状況に持ち込まれた時点で、変質が戦闘中に完了し、かつ自らの変質に最後まで気付かれないという二重の奇跡に縋る以外の勝ち筋が存在しなかったのだ。
「それでもなお足掻き続けるのが人の性と言うものなのだろうな。殺気立っている所に申し訳ないが、命だけは拾って帰らせて貰うぞ」
あるいは今からでも、命を捨てれば目の前で槍を突き出し向かってくる少女を道連れにはできるかもしれない。
だが、望みを託す相手を持たないロッシーニュにその選択は許されないのだ。敵を倒すことは、ロッシーニュの勝利条件ではない。
そして幸いなことに魔王の腕を封印するという彼女らの勝利条件は、ロッシーニュの死という敗北条件とは一致しない。つまりこの場を切り抜けて逃げる事さえできれば、魔王の封印が最優先目標である彼女らは追って来ることができないのだ。
そう判断したロッシーニュは螺旋槍がその身を貫くまでの一瞬のうちに、渾身の力で罅の入った床を踏みつける。
丁度その床の下には、屋敷にいくつかある抜け道の内の1つが通っており、踏みつけた部分だけ床が薄いことをロッシーニュは知っていた。
そしてそれは魔王の魔力と、未だに効果が残っているマジックポーションによる身体能力の上昇に、先の崩落での損傷も併せて考えれば、十分に砕ける強度だと判断したのだ。
――そしてその目論見は、槍の切っ先が剣に叩き付けられたと同時、石が割れる乾いた音と共に達成された。大穴の底、瓦礫の山の一角に、また1つ小さな穴が開いたのだ。
「え、嘘。あれだけの殺気を出しておきながら、まさか逃げ――」
「死ぬまで戦い続けることと、戦いの中に死ぬことは別の話ということだ。それが幸福を求める戦いであるのなら、なおさらだ」
完全に虚を突かれて体勢を崩す槍使いの少女を尻目に、崩れゆく床を踏み荒らして地下へと潜り込むロッシーニュ。誰もが応戦するものとばかり思っていたこの場において、それを追うことのできる者は誰一人居なかった。
---------------------------------
「――逃げられちゃいましたね」
「はい……ですが、今はこれでも良いのかもしれません」
魔王の腕が放つ光に照らされながら、一瞬の静けさを取り戻した部屋の中でロッシーニュが消えた先を呆然と見やる。
結局、ロッシーニュと決着をつけることはできなかった。それをリスクの回避に成功したと考えるべきなのか、それとも明確な敵対勢力を仕留めそこなったと考えるべきなのかは、定かではない。
ただどちらにせよ、今この場を制圧しているのは私とセレスさんだ。それを認識した時、私の口から安堵のため息が漏れだす。
一度は死を覚悟したものの、こうして生き延びることができた。
殺し、殺されの日々に生きる日常だったからこそ、こうして感じる生の実感の重みを知る。お嬢様のためならいつでも死ねると思っていたが、意外と自分は生き汚いらしい。
「とにかく今は、お嬢様とミーシャが戻ってくるまで魔王の腕を確保することに専念しましょう。先の崩落で増援が足止めを喰らっているとはいえ、気を抜いて良い状況ではありません」
岩に塞がれた扉の先から聞こえる喧騒から察するに、狂信者共の大半は足止めを喰らっているらしい。地下階の道を通って魔王の腕を確保する腹積もりだったようだが、見事に当てが外れたようだ。
それはつまりお嬢様とミーシャに向かう手勢が少ないということの裏返しでもあり、それに見たところ、ロッシーニュ以外は数こそ多いものの質があまりよろしくないとくれば、もう心配することはほとんど無いだろう。
大勢は決した。あとは、2人を待つばかりだ。
「え、あの光っているのって、そんなにけったいな代物だったんですか? どうりでとんでもない魔力を感じるはずです」
「――本当に何も知らずに飛び出して来たんですね。ミーシャの知り合いというのも納得できる気がします。
ですが助かりました。おかげで、なんとか命を拾うことができました」
そう言い、深く頭を下げる。
セレスさんの助けが無ければ、間違いなく私は殺されていた。それどころか無傷のまま放たれたロッシーニュに追い詰められ、お嬢様とミーシャすらも命の危険に晒されていたかもしれない。
それを思えば、セレスさんにはどれだけ感謝しても足りないくらいだ。
「ただ、助けてもらっておいてなんですが、満足できるだけの報酬を用意できるかは――」
「助けたいから助けただけです。お礼は気持ちで結構ですよ」
だというのに十分な謝礼を用意できないであろうことが、ひどく心苦しい。
ジューディス家の屋敷に蓄えられた貯蓄は、屋敷を制圧されてしまった以上は置き去りにする他無い。魔王の腕を確保した以上、欲張って危険を冒すことができないのだ。
今後あらゆる資金は町はずれの隠し倉庫から捻出することになるだろう。だがそこにある貯蓄はあくまで緊急用のもので、そう多いものではない。
そこから隠れ家を提供したダンウェルへの謝礼、マジックポーション等の代金、馬車などの移動手段や食料にかかる逃走費用を捻出するとなれば、明らかに金が足りていないのだ。そこにミーシャとセレスさんへ渡す報酬まで考えれば――危険を冒して助けてもらっておきながら、まずはそこから値切っていくほか無いのだ。
「それでは私の気が収まらないんです。ですが私の一存で動かせる金がある訳でもなく――」
「じゃあ、気持ちに上乗せして体も頂いて良いですか? ――もう本当に、抑えが効かないんです」
「はい?」
そう言うと同時、セレスさんは私を壁に押し付け、息がかかるほどの距離まで顔を近付けてくる。
爛々と朱く輝くその瞳は、それはもう完全に正気を失った者のそれだ。どうやら、セレスさんは私よりも強く魔王の影響を受けているらしい。
「ぇ……え?」
「そう言えばまだちゃんと自己紹介をしていませんでしたね。私はミーシャと一緒に冒険者をやっています、セレス・ベルックムーンといいます」
「え、えっと、改めまして、マリスリース・ノーテルです。親しい方からは、マリーと……」
「ああ、だからさっきミーシャにマリーと呼ばれていたんですね。私も、そう呼んでも良いですか?」
「は、はい……」
「ふふ、ありがとうございます。マリーさんはとっても可愛いですね……食べちゃいたいくらい」
そう言いながら、有無を言わさぬ無言の圧力と共に、ゆっくりと顔を近付けてくるセレスさん。あらゆる意味で未知の状況に、心臓が高鳴り息が荒くなる。
先の口ぶりから考えるにデザイアパイソンと対面したこともあるようだし、もしかすると日頃からかつて魔王の腕が安置されていた赤蛇の森に足を運んでいて、少しずつ魔王の魔力をその身に受けていたのかもしれない。それが、本格的な接触により一気に影響が強まった事は十分に考えられる。
だとしたら、セレスさんはこれ以上この場に留まらないほうが良いのかもしれない。
今もこうして、見てわかるほどの早さで危険人物へと変化していっているのだ。ミーシャの保護者とも言っていたし、これ以上の無茶はさせるべきではないだろう。
「た、食べっ?! ちょ、駄目です! そういうのは多分、もうすぐ戻ってくるミーシャの役目ですから!」
「だからもう、抑えが効かないって言っているじゃないですか。
それに恥ずかしがらなくても大丈夫ですよ。ちゃんと、メイド服は着せたままにしますから」
「そういう問題ではありません! というか一応まだここは戦場です! え、ちょっと待って、そこは……」
だがそれ以上に、今は私の色んなものが危ない。事態が逼迫しているのは間違いなく私の方だ。
もがく私を優しく、しかし絶対に逃がさないと言わんばかりに力強く押さえ付け、絡みつくように服の隙間から手を入れてくるセレスさん。
私が貞操を失うまであと数秒といったところだ。いや、実はもう半分くらい失っているかもしれない。
――そんな折、屋敷からお嬢様と共に飛んできてセレスさんに抱き付くミーシャに救いの女神の姿を見た。
ポカポカとセレスさんの胸を叩くミーシャの姿に微笑ましいものを感じると共に、舌なめずりをするセレスさんに捕食される未来が目に浮かぶ。
「セレスちゃんの浮気者ーーっ! 本妻なのに! 本妻なのに!」
「ミーシャが逃げちゃうのがいけないんです。……でも、捕まえましたよ」
「ほぇ? ……んぅ?! ん……んんっ!!」
そして予想通り間を置かずに行われた公開ディープキスにより、ミーシャはしばらくセレスさんの腕の中でびくびくともがいた後、切ない断末魔と共にくたりと手足を投げ出してしまった。
尊い犠牲、とはまさに今のミーシャのことを言うのだろう。私にできることは、ただ友として黙祷を捧げる事ばかりだ。
「マリー、ちょっと見過ぎよ。もしかしてああいうのも好きなの?」
「も、って何ですか?! ……そ、それより! 魔王の封印についてはどうなりましたか?」
「ちゃんとお父様から聞き出せたわ。ほら、これ」
宙に浮かぶ魔王の腕を降り際に回収しながら、私の目の前に降り立つお嬢様。そんなお嬢様から手渡されたものは、屋敷の各所に飾られていた片手剣だった。
「これ、封印用の剣らしいの。というわけで、これで魔王の手首と、私の手首を斬り落として頂戴」
「なっ……お嬢様、何を言って?!」
「ああ、私を斬るのに抵抗があるの? それなら心配しなくても良いわ。同じように封印をしていたお父様だって、両手がちゃんと揃っていたでしょう? 多分そういうことなのよ」
そういうことだと言われても、どういうことなのかさっぱり分からない。ただお嬢様の表情には余裕の色が伺え、視線を合わせて私を急かしてくる。
しかし私にお嬢様を斬ることなどできる訳もなく。かといって魔王の封印をしない訳にはいかず。論理的に考えれば結論は出ているというのに、それをすることが怖くて一歩を踏み出せずにいる。
「どうかしたのですかマリーさん……と、お嬢様? アレを封印するとか言っていませんでしたっけ?」
そんな葛藤の中に身動きを取れずに唸っていると、ミーシャを捕食してある程度落ち着いたらしいセレスさんが話に割り込んでくる。その腕に抱かれるミーシャは当然のように尻を撫で回され、胸は揉みしだかれ、口を半開きに言葉にならない呻き声をあげている。
セレスさんがこの手のことに手慣れているのか、それともミーシャがこの手のことに弱いのか。そのどちらかは定かではないが、ミーシャが間に入ってくれていなければ自分があのような姿を晒していたかもしれないと思うと背筋に寒いものが走る。
「イリュメリアよ。ああ、アレを封印するのに私の手を斬り落とす必要があるのだけれども、マリーが委縮しちゃって」
「ああ、それで場が滞っているのですね。――封印しないのなら、私が貰っちゃっても良いですか? これから冒険者稼業を続けていくにあたって、あれだけの魔力を扱えたら便利そうなので。
それにあれだけの魔力を扱うことができれば、多少暴れられても力尽くで押し倒せるかも――ああ、全く関係ないですけれど、イリュメリアさんもとっても素敵な女の子ですね」
「マリー、今すぐ私の手を斬りなさい。私の貞操を守りたいのなら」
「御意に!」
セレスさんがまた獲物を見るような目になった瞬間、お嬢様の表情から余裕が消え失せ、無表情になる。
そこに底知れない恐怖を感じた私は、もう葛藤も何もかもを振り切り、お嬢様の腕に刃を振り下ろした。
――その後は特に問題も無く、魔王の封印に成功した。どういう原理かは分からないが魔王の手とお嬢様の手を挿げ替えた途端に、魔王の腕は発光を止め、脈打つ腕はゆっくりと萎れていった。
もう、あの恐ろしい魔力の波も感じない。屋敷の中の異様な空気は洗い流されたかのように消え去っていた。
厄介なことがあったとすれば、ミーシャが使い物にならなくなっていたせいで屋敷からの脱出が徒歩だったということくらいだろうか。それを踏まえてもロッシーニュ以外は信仰だけが頼りの訓練すらしていない烏合の衆だったらしく、囲まれてもいない現状で逃げ切れない理由が無かった。
不安要素は残るものの、今宵の一大事は私たちの勝利で幕を下ろした。それを認識したと同時、安堵と共に私の意識はセーフハウス内のベッドに沈んでいった。
岩をめくり上げて現れたことからも分かるように、遅れて崩れてきた瓦礫に押し潰されていたようだ。
そしてそれは戦闘に耐えることのできない老齢の身体をマジックポーションの濫用で誤魔化していたにすぎないロッシーニュにとって、十分に致命打たりえた。
たとえマジックポーションで耐久力を補強していようと、それは多少の切り傷を誤魔化せる程度のものでしかなかったということだ。現に目の前のロッシーニュは頭から血を流し、息は荒く、足元はおぼつかない。
それに服の上からでは分かりにくいが、剣の柄に添えられた左腕の関節が1つ増えている。恐らくは身に沁みついた動きをなぞっているのだろうが、その左手に剣を握る力は無く、もはや片手で剣を振っているのと変わらない状況だろう。
そして身体面だけでなく、状況もまたロッシーニュにとって厳しいものがある。
ロッシーニュが先ほどまで私と、そして飛び入りの槍使いの少女――確かミーシャからはセレスさんと呼ばれていたか――と単身で渡り合えていたのは、相性によるものが大きい。
私に対しては慣れない正面からの戦闘を強いらせ、恐らくは元軍属のものであろう正統剣術で着実に追い詰めてきた。
セレスさんに対しては剣筋を見切られていると勘付くや否や、人体の限界に迫る量のマジックポーションを使用することで肉体をさらに強化し、読み合いを放棄した力押しでセレスさんを押していた。
前者の戦術ではセレスさんに対応できなかったものを、戦術の変更により相性差を覆したのだ。実際、それに不利を悟ったセレスは一か八かの捨て身の突撃を選択している。
だがそれは、私が戦闘不能状態になっていたからこその選択。もしも私が健在の内にセレスが私に手を貸す判断を下していれば、その選択だけはあり得なかっただろう。
そもそも過度のマジックポーションの使用は、場合によっては死ぬことすらあり得る危険な行為だ。マジックポーション内に込められた魔法が体内で過剰に駆け巡り、その魔力で全身が内側から傷つけられていくのだ。
それ故にマジックポーションの追加をした後のロッシーニュはその動きに精彩を欠き、隙を多く晒すようになった。私が健在であれば、もう3回は首を落とせていただろう。
しかしそれはマジックポーションを服用しておらず、身体能力に差を付けられたセレスにとってそう簡単に突けるものではなかった。それを確信していたからこそのマジックポーションの使用であり、その隙を突ける私が既に戦闘不能であることを前提としていた行動だったのだ。
しかしミーシャの治癒魔法により私が戦線に復帰したことで、その前提は崩れ去った。
私に合わせた戦いをすればセレスに凌がれ、セレスさんに合わせた戦いをすれば私に隙を突かれる。その上二対一の数的不利もあり、さらに言えばマジックポーションの効果時間ももう程なくして身体への重篤なダメージを残して消え去るだろう。
退路すらも先の崩落で塞がれたロッシーニュを待つものは、もはや死以外に無い。そして今も、セレスさんと斬り結んでは私に隙を突かれ、傷を増やしながら距離を置くという動きを繰り返している。
逆転の目は無いだろう。ここまで有利な状況に持ち込めば、安全マージンを多く取っても結果は変わらない。故に私もセレスも、無茶して攻め込むような真似はしない。
「老い故に引けぬ、と。痛々しいですね……」
それでもなお猛々しく吠え、もはや死に体と言うべきロッシーニュの身体を動かしているものは執念以外にあるまい。
失った妻子を取り戻すという彼の言をそのまま受け取るのであれば、彼の望みは彼自身が生きているうちにしか果たすことはできないのだ。
つまり老齢のロッシーニュにとって、これは最後のチャンスなのだろう。だからこそこうして、絶対的不利な状況に立たされつつも不退の構えを示しているのだ。
それを正面から見据えれば、敵ながら僅かな憐憫の情すら浮かんでくるものだ。かといって絶対的な敵対者である以上、手を緩めるつもりは毛頭ないが。
「痛々しい、ですか。あの気迫、私にはそうは見えません」
そう語るセレスさんは腰を落とし、轟々と唸る螺旋槍を構える。
その表情は深刻さを漂わせるもので、有利にある者のそれではない。むしろ追い詰められたような、切羽詰まった表情をしている。
「お嬢様とミーシャが戻ってくるまで持ちこたえれば、それでほぼ勝利です。そこまで気負う必要はないのでは?」
「それでも、です。あの老人から感じるこの威圧感、デザイアパイソンと相対した時のそれに劣りません」
「いくらなんでも比較対象にデザイアパイソンは言い過ぎでは――――ん、デザイアパイソン?」
そうしてふと、つい最近どこかで聞いたような魔物の名前を耳にして内心首を傾げる。
どういう訳かその言葉が頭に引っかかる。デザイアパイソンに何か重要な、今すぐにでも思い出さなければならない事があるような気がしてならないのだ。
「それに、獣は手負いが一番恐ろしいと言いますし――どうかしましたか?」
「いえ、何か引っかかって――ああっ!?」
そう、確かお嬢様はデザイアパイソンについて、昨日こう言っていたはずだ。「デザイアパイソンの正体は、フォレストボアが封印から漏れ出た魔王の魔力によって変質したものだ」と。
言い換えればそれは、魔王の魔力には魔物をより強力な存在に変質させる力があるということだ。――今、封印を解かれた魔王の腕から奔流となって放たれている魔力に。
その影響は、広義の魔物である人間に対しても例外ではないはず。人間の成り立ちを考えれば、そうならない理由が無い。
そして私たちの挟撃に翻弄されているロッシーニュの動きを改めて見てみれば、攻めかかっているように見えてその実時間を稼いでいるだけのようにも見える。あるいは、常に私たちよりも溢れ出る魔力の源流たる魔王の左腕に近い位置を維持しているようにも。
考えれば考えるほど、見れば見るほど。そうであって欲しくはないという願望とは裏腹に、予感を裏付けるだけの現状が目に入ってくる。
そして極めつけに、かつて碧く染まっていた瞳が、デザイアパイソンの鱗のような朱に染まっている。これが決定打となり、私は1つの確信を持つ。
間違い無い。ロッシーニュの狙いは魔王の魔力を浴びることによる自己変質と、それに連なる身体能力上昇を利用した状況の打開だ。
「まさかそんな――状況を把握してすぐ、そんな勝ち筋に気付くなんて――!」
そしてそれはまさしく、ロッシーニュという男が尋常ではない傑物だということの証明でもあった。
自身の変質を待って状況を耐え凌ぐというのは、言うほど簡単な話ではない。
むしろ、本来であれば不可能な選択なのだ。何故なら変質による身体強化は、ロッシーニュのみならずこの場に居る私やセレスさんにまで及ぶのだから。
もしロッシーニュがこの作戦を断行するのであれば、私たちよりも早く肉体を変質させなければならない。そうでなければ身体能力に差は付かず、ただ数の利を押し付けられるばかりになるからだ。
だからロこそロッシーニュは戦闘が始まってすぐ、圧倒的不利な状態だというのに自分から斬りかかってきたのだ。
私たちが、ロッシーニュよりも魔王の腕から遠い位置から睨み合いを始めるように。ほんの僅かでも、自分の方が変質までの時間が短くなるように。
――ロッシーニュはこの決断を崩落で致命打を負ってすぐ、状況の把握も満足にいかない土煙の中で行ったのだ。
場が仕切り直され、それが自らにとって不利なものだと誰よりも早く悟るや否や、勝利条件からひっくり返してきたのだ。
私はロッシーニュを強敵だと既に認めていた。正面戦闘においては格上であることも。
だがしかし、それでもなお。私はまだ、ロッシーニュ・エルグランという男の底を見誤っていたらしい。
「何か心当たりがあるようですね。時間は敵ですか? 味方ですか?」
「ロッシーニュの狙いはあの魔力による肉体の強化。長引けば長引くほど、こちらが不利になりま――」
「なら突撃します。私は後衛のための時間稼ぎ以外には、捨て身の特攻くらいしかできませんから」
私の言葉に何か不穏なものを察したのか、セレスさんが簡潔な質問と共に構えを変える。それは崩落前、ロッシーニュに突貫した時の姿勢と同じだ。
それを見るロッシーニュの表情に、僅かながらも苦いものが浮かぶ。どうやらロッシーニュにとって、私が復活した状態で崩落前の状況を焼き直されるのはよろしくないものであるらしい。
だがそれも当然。これは私たちが勝利するための一手ではなく、ロッシーニュを敗北させるための一手。これで困って貰わなければ、困るのはこちらだ。
恐らくセレスさんは初見ながらもロッシーニュに並々ならぬ脅威を感じ、それ故に彼の生存すなわち私たちの敗北条件であると判断したのだろう。そして飛び入り故に私たちの勝利条件を知らないセレスさんにとって、優先すべきは敗北の可能性の排除なのだ。
「突撃後の後詰めは任せて良いですか? 私、対人戦の経験はほとんど無いので、単身では無力化できる自信がありません」
「良いですけれど……いや、良いんですか? それでは、セレスさん1人にリスクを押し付ける形になってしまうと思うのですが」
しかしいくらミーシャの関係者だからといっても、さすがにそれはサービス精神が過ぎる。
セレスさんがこの場で突撃すれば、その対処によってできた隙を私が突くことで、ロッシーニュを完全に仕留めることができるだろう。だがセレスさんもまた、ロッシーニュに仕留められる可能性があるのだ。命を失うことも、当然考えられる。
私とセレスさんはまだ出会って数分も経っていない、間にミーシャを挟んだそう深くもない関係だ。そんな私のためにそこまで命を懸けることなど、正気とは思えない。
都合が良いことは嬉しいが、都合が良すぎると裏が気になってしょうがないのはクランテットの住人に特有の心理だろうか。
「今更ですよ。助けるって決めたんですから、最後まで助けきります。
それにさっきから気が昂ぶると言いますか、3日ぶりのミーシャで色々と抑えが効かなくなっていると言いますか……正直に言ってしまえば、暴れたくてしょうがないんです。先ほどから、なんだか昇り調子ですしね」
だがそう言って獣のように獰猛な笑みを浮かべるセレスさんの、僅かながらも朱が差し始めた瞳を視界に入れた時にその疑念が杞憂であると察せた。
魔王の魔力により変質が始まった影響か、それとも尋ね人を見つけた興奮からか、やたらと闘争心が高まっているようだ。助けに来た瞬間はさておき、どうやら今は本当に正気ではないらしい。
「分かりました。私も精一杯、セレスさんのフォローに入ります。――恩人に死なれるのは、寝覚めが悪いですから」
私が何を言ったところで、理性が沸騰しかかっている今の彼女は止まらないだろう。だとすれば私が彼女に報いる術は、彼女を生きてこの修羅場から帰すことしかあるまい。
幸い、勝利条件はもうすぐそこだ。
そう覚悟を決め、私もまたセレスさんの突撃に合わせる準備をする。
「ありがとうございます。でも折角のメイドさんなんですから、私のことはご主人さまって呼んでくれませんか?」
「正気を失っているにも程がありませんか? まあ良いですけれど――ご主人さま」
「滾ってきました。では――行きますよっ!」
明らかに正気ではない、むしろ正気放っているとしたらマズい台詞を吐いて、槍で風を裂き、突進していくセレスさん。その背を追うように、私もまた走る。
万が一にもセレスさんが殺されるよりも早く、ロッシーニュの首を刈り取る。その必殺の意思を携えて。
---------------------------------
ロッシーニュ・エルグランという男は、かつて幸福の形を知っていた。
軍人として戦場を駆ける高揚感。その先にあるものは強敵との死闘。死闘の果てには常に勝利がその手に握られ、そして誰もがそれを勇者の所業だと褒め称えた。
勝利の後に戦友と呑む酒の味も、彼の知る幸福の形の1つだ。出世街道を突き進んでいるという実感と共に煽る酒は格別のものだ。
だが彼を最も満たしていたものは、戦果よりも戦友よりも、何よりも彼が愛した妻の存在だろう。輝かしいながらも荒々しい日々に、安らかな一時を与えてくれる存在が心を通わせた相手だというのは、かけがえのない幸せそのものだと彼は確信していた。
彼は幸福だった。戦場においては無双の限りを尽くし、戦場から帰れば階級を上げていき、家に戻れば愛する妻が居た。
そしてそんな幸福に満ちた日々は、彼の妻が第一子となる娘を産み落とし、彼が栄えある近衛騎士団にその名を連ねるまで続いた。――そこまでしか、続かなかった。
いつ、どこの国でもそうだが、本当に優秀な人間だけが常に上に立っている訳ではない。また、上に立つ人間が常に善良であるという訳でもない。
高みに昇りつめれば、大抵は悪意の深さと知恵の回りが物事を動かすものだと気付くのだ。
だが人生の絶頂期にあり、そしてまだ若かった彼は、その事に気付くことができなかった。妻子の待つ彼の屋敷に、暗殺者の魔の手が忍び寄るその瞬間まで。
一体誰が、どのような理由で差し向けた手合いかは分からない。だが、その日彼の幸福は物言わぬ躯と成り果てた事だけは確かだった。
そしてこれを幸いと言って良いものか、放たれた50を超える暗殺者と彼の妻子が眠る屋敷には火が放たれ、彼は修羅場を生き延びながらも、その死を確信されたことにより追撃の手を逃れたのだ。
ロッシーニュ・エルグランという男は、かつて幸福の形を知っていた。
そして彼は今はその手から零れ落ちた幸福をその手に取り戻すためだけに、ただ一人で戦いを続けてきた。
失われた人間を取り戻す手段を探し続けた。たとえそれが迷信じみたものであったとしても、そこに可能性があるのならなんだってした。
そうして今、彼は奇跡を起こせるだけの力の存在を確信した。――もう探す必要はない。ただ、奪い取れば良いのだと。
「――潮時、か。まあ、急造の策では見抜かれても当然だろうな」
しかし満身創痍の身体を補う策を見抜かれ、態勢の整っていないうちの決戦を強いられた現状に、ロッシーニュは自らの敗北を確信した。
この状況からでは何をしようと自身が魔王の力を手にすることはできないのだと、その確信に至ったのだ。
遠巻きに睨みを利かせている間の会話の中で気付かれたようだが、そうでなかったとしても、後しばらくすれば動きの変化から気付かれたことだろう。つまるところロッシーニュはこの状況に持ち込まれた時点で、変質が戦闘中に完了し、かつ自らの変質に最後まで気付かれないという二重の奇跡に縋る以外の勝ち筋が存在しなかったのだ。
「それでもなお足掻き続けるのが人の性と言うものなのだろうな。殺気立っている所に申し訳ないが、命だけは拾って帰らせて貰うぞ」
あるいは今からでも、命を捨てれば目の前で槍を突き出し向かってくる少女を道連れにはできるかもしれない。
だが、望みを託す相手を持たないロッシーニュにその選択は許されないのだ。敵を倒すことは、ロッシーニュの勝利条件ではない。
そして幸いなことに魔王の腕を封印するという彼女らの勝利条件は、ロッシーニュの死という敗北条件とは一致しない。つまりこの場を切り抜けて逃げる事さえできれば、魔王の封印が最優先目標である彼女らは追って来ることができないのだ。
そう判断したロッシーニュは螺旋槍がその身を貫くまでの一瞬のうちに、渾身の力で罅の入った床を踏みつける。
丁度その床の下には、屋敷にいくつかある抜け道の内の1つが通っており、踏みつけた部分だけ床が薄いことをロッシーニュは知っていた。
そしてそれは魔王の魔力と、未だに効果が残っているマジックポーションによる身体能力の上昇に、先の崩落での損傷も併せて考えれば、十分に砕ける強度だと判断したのだ。
――そしてその目論見は、槍の切っ先が剣に叩き付けられたと同時、石が割れる乾いた音と共に達成された。大穴の底、瓦礫の山の一角に、また1つ小さな穴が開いたのだ。
「え、嘘。あれだけの殺気を出しておきながら、まさか逃げ――」
「死ぬまで戦い続けることと、戦いの中に死ぬことは別の話ということだ。それが幸福を求める戦いであるのなら、なおさらだ」
完全に虚を突かれて体勢を崩す槍使いの少女を尻目に、崩れゆく床を踏み荒らして地下へと潜り込むロッシーニュ。誰もが応戦するものとばかり思っていたこの場において、それを追うことのできる者は誰一人居なかった。
---------------------------------
「――逃げられちゃいましたね」
「はい……ですが、今はこれでも良いのかもしれません」
魔王の腕が放つ光に照らされながら、一瞬の静けさを取り戻した部屋の中でロッシーニュが消えた先を呆然と見やる。
結局、ロッシーニュと決着をつけることはできなかった。それをリスクの回避に成功したと考えるべきなのか、それとも明確な敵対勢力を仕留めそこなったと考えるべきなのかは、定かではない。
ただどちらにせよ、今この場を制圧しているのは私とセレスさんだ。それを認識した時、私の口から安堵のため息が漏れだす。
一度は死を覚悟したものの、こうして生き延びることができた。
殺し、殺されの日々に生きる日常だったからこそ、こうして感じる生の実感の重みを知る。お嬢様のためならいつでも死ねると思っていたが、意外と自分は生き汚いらしい。
「とにかく今は、お嬢様とミーシャが戻ってくるまで魔王の腕を確保することに専念しましょう。先の崩落で増援が足止めを喰らっているとはいえ、気を抜いて良い状況ではありません」
岩に塞がれた扉の先から聞こえる喧騒から察するに、狂信者共の大半は足止めを喰らっているらしい。地下階の道を通って魔王の腕を確保する腹積もりだったようだが、見事に当てが外れたようだ。
それはつまりお嬢様とミーシャに向かう手勢が少ないということの裏返しでもあり、それに見たところ、ロッシーニュ以外は数こそ多いものの質があまりよろしくないとくれば、もう心配することはほとんど無いだろう。
大勢は決した。あとは、2人を待つばかりだ。
「え、あの光っているのって、そんなにけったいな代物だったんですか? どうりでとんでもない魔力を感じるはずです」
「――本当に何も知らずに飛び出して来たんですね。ミーシャの知り合いというのも納得できる気がします。
ですが助かりました。おかげで、なんとか命を拾うことができました」
そう言い、深く頭を下げる。
セレスさんの助けが無ければ、間違いなく私は殺されていた。それどころか無傷のまま放たれたロッシーニュに追い詰められ、お嬢様とミーシャすらも命の危険に晒されていたかもしれない。
それを思えば、セレスさんにはどれだけ感謝しても足りないくらいだ。
「ただ、助けてもらっておいてなんですが、満足できるだけの報酬を用意できるかは――」
「助けたいから助けただけです。お礼は気持ちで結構ですよ」
だというのに十分な謝礼を用意できないであろうことが、ひどく心苦しい。
ジューディス家の屋敷に蓄えられた貯蓄は、屋敷を制圧されてしまった以上は置き去りにする他無い。魔王の腕を確保した以上、欲張って危険を冒すことができないのだ。
今後あらゆる資金は町はずれの隠し倉庫から捻出することになるだろう。だがそこにある貯蓄はあくまで緊急用のもので、そう多いものではない。
そこから隠れ家を提供したダンウェルへの謝礼、マジックポーション等の代金、馬車などの移動手段や食料にかかる逃走費用を捻出するとなれば、明らかに金が足りていないのだ。そこにミーシャとセレスさんへ渡す報酬まで考えれば――危険を冒して助けてもらっておきながら、まずはそこから値切っていくほか無いのだ。
「それでは私の気が収まらないんです。ですが私の一存で動かせる金がある訳でもなく――」
「じゃあ、気持ちに上乗せして体も頂いて良いですか? ――もう本当に、抑えが効かないんです」
「はい?」
そう言うと同時、セレスさんは私を壁に押し付け、息がかかるほどの距離まで顔を近付けてくる。
爛々と朱く輝くその瞳は、それはもう完全に正気を失った者のそれだ。どうやら、セレスさんは私よりも強く魔王の影響を受けているらしい。
「ぇ……え?」
「そう言えばまだちゃんと自己紹介をしていませんでしたね。私はミーシャと一緒に冒険者をやっています、セレス・ベルックムーンといいます」
「え、えっと、改めまして、マリスリース・ノーテルです。親しい方からは、マリーと……」
「ああ、だからさっきミーシャにマリーと呼ばれていたんですね。私も、そう呼んでも良いですか?」
「は、はい……」
「ふふ、ありがとうございます。マリーさんはとっても可愛いですね……食べちゃいたいくらい」
そう言いながら、有無を言わさぬ無言の圧力と共に、ゆっくりと顔を近付けてくるセレスさん。あらゆる意味で未知の状況に、心臓が高鳴り息が荒くなる。
先の口ぶりから考えるにデザイアパイソンと対面したこともあるようだし、もしかすると日頃からかつて魔王の腕が安置されていた赤蛇の森に足を運んでいて、少しずつ魔王の魔力をその身に受けていたのかもしれない。それが、本格的な接触により一気に影響が強まった事は十分に考えられる。
だとしたら、セレスさんはこれ以上この場に留まらないほうが良いのかもしれない。
今もこうして、見てわかるほどの早さで危険人物へと変化していっているのだ。ミーシャの保護者とも言っていたし、これ以上の無茶はさせるべきではないだろう。
「た、食べっ?! ちょ、駄目です! そういうのは多分、もうすぐ戻ってくるミーシャの役目ですから!」
「だからもう、抑えが効かないって言っているじゃないですか。
それに恥ずかしがらなくても大丈夫ですよ。ちゃんと、メイド服は着せたままにしますから」
「そういう問題ではありません! というか一応まだここは戦場です! え、ちょっと待って、そこは……」
だがそれ以上に、今は私の色んなものが危ない。事態が逼迫しているのは間違いなく私の方だ。
もがく私を優しく、しかし絶対に逃がさないと言わんばかりに力強く押さえ付け、絡みつくように服の隙間から手を入れてくるセレスさん。
私が貞操を失うまであと数秒といったところだ。いや、実はもう半分くらい失っているかもしれない。
――そんな折、屋敷からお嬢様と共に飛んできてセレスさんに抱き付くミーシャに救いの女神の姿を見た。
ポカポカとセレスさんの胸を叩くミーシャの姿に微笑ましいものを感じると共に、舌なめずりをするセレスさんに捕食される未来が目に浮かぶ。
「セレスちゃんの浮気者ーーっ! 本妻なのに! 本妻なのに!」
「ミーシャが逃げちゃうのがいけないんです。……でも、捕まえましたよ」
「ほぇ? ……んぅ?! ん……んんっ!!」
そして予想通り間を置かずに行われた公開ディープキスにより、ミーシャはしばらくセレスさんの腕の中でびくびくともがいた後、切ない断末魔と共にくたりと手足を投げ出してしまった。
尊い犠牲、とはまさに今のミーシャのことを言うのだろう。私にできることは、ただ友として黙祷を捧げる事ばかりだ。
「マリー、ちょっと見過ぎよ。もしかしてああいうのも好きなの?」
「も、って何ですか?! ……そ、それより! 魔王の封印についてはどうなりましたか?」
「ちゃんとお父様から聞き出せたわ。ほら、これ」
宙に浮かぶ魔王の腕を降り際に回収しながら、私の目の前に降り立つお嬢様。そんなお嬢様から手渡されたものは、屋敷の各所に飾られていた片手剣だった。
「これ、封印用の剣らしいの。というわけで、これで魔王の手首と、私の手首を斬り落として頂戴」
「なっ……お嬢様、何を言って?!」
「ああ、私を斬るのに抵抗があるの? それなら心配しなくても良いわ。同じように封印をしていたお父様だって、両手がちゃんと揃っていたでしょう? 多分そういうことなのよ」
そういうことだと言われても、どういうことなのかさっぱり分からない。ただお嬢様の表情には余裕の色が伺え、視線を合わせて私を急かしてくる。
しかし私にお嬢様を斬ることなどできる訳もなく。かといって魔王の封印をしない訳にはいかず。論理的に考えれば結論は出ているというのに、それをすることが怖くて一歩を踏み出せずにいる。
「どうかしたのですかマリーさん……と、お嬢様? アレを封印するとか言っていませんでしたっけ?」
そんな葛藤の中に身動きを取れずに唸っていると、ミーシャを捕食してある程度落ち着いたらしいセレスさんが話に割り込んでくる。その腕に抱かれるミーシャは当然のように尻を撫で回され、胸は揉みしだかれ、口を半開きに言葉にならない呻き声をあげている。
セレスさんがこの手のことに手慣れているのか、それともミーシャがこの手のことに弱いのか。そのどちらかは定かではないが、ミーシャが間に入ってくれていなければ自分があのような姿を晒していたかもしれないと思うと背筋に寒いものが走る。
「イリュメリアよ。ああ、アレを封印するのに私の手を斬り落とす必要があるのだけれども、マリーが委縮しちゃって」
「ああ、それで場が滞っているのですね。――封印しないのなら、私が貰っちゃっても良いですか? これから冒険者稼業を続けていくにあたって、あれだけの魔力を扱えたら便利そうなので。
それにあれだけの魔力を扱うことができれば、多少暴れられても力尽くで押し倒せるかも――ああ、全く関係ないですけれど、イリュメリアさんもとっても素敵な女の子ですね」
「マリー、今すぐ私の手を斬りなさい。私の貞操を守りたいのなら」
「御意に!」
セレスさんがまた獲物を見るような目になった瞬間、お嬢様の表情から余裕が消え失せ、無表情になる。
そこに底知れない恐怖を感じた私は、もう葛藤も何もかもを振り切り、お嬢様の腕に刃を振り下ろした。
――その後は特に問題も無く、魔王の封印に成功した。どういう原理かは分からないが魔王の手とお嬢様の手を挿げ替えた途端に、魔王の腕は発光を止め、脈打つ腕はゆっくりと萎れていった。
もう、あの恐ろしい魔力の波も感じない。屋敷の中の異様な空気は洗い流されたかのように消え去っていた。
厄介なことがあったとすれば、ミーシャが使い物にならなくなっていたせいで屋敷からの脱出が徒歩だったということくらいだろうか。それを踏まえてもロッシーニュ以外は信仰だけが頼りの訓練すらしていない烏合の衆だったらしく、囲まれてもいない現状で逃げ切れない理由が無かった。
不安要素は残るものの、今宵の一大事は私たちの勝利で幕を下ろした。それを認識したと同時、安堵と共に私の意識はセーフハウス内のベッドに沈んでいった。
0
お気に入りに追加
181
あなたにおすすめの小説
百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI

とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる