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5.妹編
2.超究極最強魔導士、脳筋になる
しおりを挟む「はぁ……どうすれば良いんだろう、私……」
「にゃー」
まだ日も昇りきっていない海辺を眺めながら、手慰みにランドキャットをもみもみしながら愚痴をこぼす。
昨日の夜は今までに無いくらい激しくて、日が落ちてすぐに気を失ってしまったせいだろう。今朝は日が昇るよりもずっと早く、みんながひとり残らず寝静まっている頃に目が覚めてしまったのだ。
普段よりも早く起きた私は、体中ベトベトなのはさておきよく眠れたらしい。完全に目が覚めてしまった私は、珍しく二度寝する気分にもならず、気分転換も兼ねて、ベッドを抜け出してお散歩することにしてみたのだ。
薄暗い海辺は冷たい風が心地よく、海辺の割には磯臭さもほとんど無く、お散歩するには絶好のロケーション。しかし、私の気分は晴れない。
「性奴隷、かぁ……恨むぞ1ヶ月前の私……」
「にゃー」
――私がセレスちゃんからの婚約首輪を受け取り、みんなの性奴隷となってしまってから、もう1ヶ月が経つ。
ドラゴンみたいなすっごいのを倒せば、その報酬で解放奴隷になれる。ドラゴンスレイヤーとしての名誉が甲斐性となり、みんなを養うハーレム主に返り咲ける。
そう信じて耐えた、1ヶ月だ。しかし、超究極最強魔導士にとって、1ヶ月という期間はあまりに長い。
1ヶ月あれば、新たなヒロインが攻略できていておかしくない。1ヶ月あれば、鼠車を魔改造して立派な移動御殿にしていることもあるだろう。1ヶ月あれば、細部の塗装まで拘ったフルスクラッチの新規ゴーレムだって作れてしまう。
しかし、今。その1ヶ月を奴隷脱却のために費やしていながらも、その足がかりすら掴めずにいる。
借金は減るどころか利子やらなにやらでどんどん増えていくし、みんなを誘惑して言うことを聞かせることもできていない。
それどころかこの1ヶ月で、今までとは比べものにならないほど身体を「開発」されてしまい、完全無欠であったはずの私の身体は弱点だらけになってしまった。セレスちゃんに首輪をグイってされるだけで言うこと聞いちゃう身体にされて、これでどうやってセレスちゃんをひーひー喘がせろと言うのか。
「相手がセレスちゃんだけでも負けちゃいそうなのに……みんな、全然容赦してくれないしなぁ……」
「にゃー」
さらに当然の話だが敵は1人じゃない。
マリーちゃんには服従の証として貞操帯を装着させられ、ミスティちゃんには魔法の練習として淫紋を刻まれ、そしてイリーちゃんはそんな私を見て黒幕っぽく微笑み、パジャマパーティーを開けば私だけパジャマ抜きにされる。
八方塞がりとはまさにこのこと。唯一私を虐めない系ヒロインであるジュゼちゃんも、私と一緒にミスティちゃんに淫紋を刻まれているという絶望的な状況。
この窮地にあって、私がハーレム主として君臨するためには、もはや一刻の猶予も残されてはいない。今すぐにでも、逆転の一手を打たなければ。
「やっぱり……やっぱり、このままじゃダメだ! このままじゃ名実共にみんなのお嫁さんになっちゃう!」
「にゃー」
――闘争が必要だ。
威厳を取り戻し、大事にされるお嫁さん奴隷ポジションから脱却するためには、まさしく力だけがものを言う闘争こそが必要となる。
というかもう、それしかない。
ここまで身も心もお嫁さんに染め上げられてしまい、みんなにいっぱい甘えたくてしょうがない現状、恋愛的なテクニックで勝負を仕掛けるなど愚の骨頂。そんなことをしたら絶対に、誘惑している途中で大好きな気持ちが膨れ上がって、甘えながらおねだりしちゃう。そしてそのまま襲われちゃう。
だからこそ今は、恋愛的な視点から1歩離れた場所で戦う他あるまい。
そう、超究極最強魔導士最大の魅力ポイント、力そしてパワーを見せつけることで、私がみんなに感じている魅力とと同レベルまで私の魅力を引き上げるのだ。
「ここらで1発、強敵を前に超絶パワーで圧倒する私の姿を見せなきゃ! ……でも、そんなチャンスなんて……」
「にゃー」
しかし、その闘争こそが今の私から最も遠ざけられているもの。
冒険者として名を馳せるために難しい依頼をバンバンこなそうって毎朝のミーティングで主張しても、安全第一のセレスちゃんはそれを拒否する。大丈夫だって言っても、聞く耳を持たない。
そりゃあ、パーティーとしては貯金もたくさんあって、イリーちゃんがたくさんお金を稼いでいるからその貯金も減らないともなれば。強い魔物を倒しに何日もお留守番組と離れるなんてことはせず、近場の簡単な依頼をこなしつつ夜にはみんなでイチャイチャしていたい。
それが分かっているから、そして実際にみんなと一緒にいれて嬉しいから、私もドラゴン探しの旅を強く主張できないのだ。
「どうすれば……どうすればいいのさー!」
「にゃー!」
「セレスちゃんのずるっ子ー! ヒロインならヒロインらしく、もっと私に隙だらけなところを見せろー!」
「にゃー!」
そんな気持ちを言葉に乗せて、海に向かってただ吠える。揉んでいたランドキャットも、釣られて大きくにゃーと鳴く。
叫んだところで解放奴隷になれる訳でもないし、誰かが応えてくれる訳でもない。ただ、叫びたいから叫ぶだけ。
そうして、どうすれば良いのか結論が出ないまま、お日さまが水平線から顔を出してくる。もうヒミツのお散歩はお終い。
今日も奴隷仕事の始まりだ。溜息と共に、海辺を去らんと背を向ける。
――だがしかし。私が振り返った、その先には――
「迷える脳筋の嘆きが聞こえる――」
――低い声。禿頭、白い歯、黒い肌。血管浮き出たバキバキ筋肉。
そう、筋肉がいた。宿に戻ろうと振り返った私の、すぐ目の前に。ピチピチのブーメランパンツのみを身に纏った、セクハラ全開の格好で。
そして筋肉は、そのきらめく白い歯を見せつける笑顔で私に語りかけてくる。
「然らば「始まりの筋肉戦士」たるこの俺、ジョー・マックスウェルが導かねばなるまい。そうだろう?」
受付ジョーだった。受付ジョーが、ただのジョーになって目の前に現れたのだ。
「ぴゃぅっ?! どどど、どこから湧いた受付ジョー! 乙女のアンニュイなひとときを踏みにじって、何が目的だぁ!」
「何が目的か、と問われれば――迷える脳筋少女を見かけたから声をかけてみた。それではいけないかね?」
「いけないよ! 存在がセクハラだよ!」
「セクハラではない。不作法にセクシーなだけだ」
そんな戯れ言をほざきながらポージングをする元受付ジョーを前にして、私は即座に警戒を強める。
杖を構え、腰を低くして、いつでも渾身のファイアーボールを叩き込めるようにするのだ。セクハラ全開の筋肉相手に慈悲などいらぬ。
しかし対する悪しき筋肉の首魁は私の威圧をものともせず、うんうんと頷いたかと思えば私の頭を撫でようとしてきた。やめい。
「細かいことは分からないし、気にしないが、とにかく君は自らの力を示したい。そうだな?」
「うっ……まぁ、そうだけど……」
「さらに言えば、一攫千金を狙い奴隷身分からの解放を狙ってもいる。そうだな?」
「そ、それは奴隷なら当然だし……」
そうして撫でようとする手を払えば、元受付ジョー、現変質者は、分かりきったことを何度も聞いてくる。
超究極最強魔導士が力を見せてやりたいのは当然だし、奴隷が一攫千金からの成り上がりを目指すのだって当然のこと。
そんな当然のことを聞いて「なるほど、な」なんて良いながらキメ顔をしてくる筋肉なんて信用できない。というかパンツ一丁の時点で信用なんてできない。憲兵さんに突き出した方が良いのかも。
「そんな君に良い話があるのだが――どうかね?」
「良い話がある、って詐欺師の常套句じゃん! 私は悪しき筋肉の言葉なんて聞かないぞ!」
「言われてみればその通りだ。が、まずは大会パンフレットだけでも受け取ってくれ」
そうして元受付ジョーはうんうん頷きながら、どこからともなく一冊の冊子を取り出して私に押し付けてくる。
相手は筋肉と言うことで受け取るつもりはなかったのだけれども、それでも胸元に押し付けられた冊子から手を離されてしまっては受け止めざるを得ず。
仕方なしに手に取った冊子の表紙を軽く流し見して――そして、目を疑った。
「……闘技大会開催のお知らせ。第43回アレンテッツェ筋肉杯、参加条件なし、優勝賞金……100万クロム!?」
「そう、年1番の筋肉戦士を決めるアレンテッツェの名物行事、筋肉杯だ! これで優勝すれば大抵の悩みは解決するだろう!」
まさかそんな。私の求めていた力を示す機会が、解放奴隷になるための金策が。
その両方を1度に満たせるチャンスが、こんなタイミングで現れるなんて。よりにもよって、悪しき筋肉の首魁たる受付ジョーの手によって。
「な、何を企む受付ジョー! そうやって私を罠に嵌めるつもりなのは分かっているんだからね! 騙されないよ!」
「む……警戒されてしまったか。街の外から来た者から新規参加者を募ろうとすると、いつもこうなる……何故だ?」
あまりにも都合が良すぎる話は疑うべきだって、本には書いてあった。
話を持ちかけてきたのがヒロインならまだしも、こんな筋肉モリモリの変態変質者ならなおさらだ。きっと悪いことを考えているに違いない。
私が読んできた本では大会っていうのは大抵、悪党が何かを企むときの隠れ蓑にされているものだ。悪の魔法実験然り、観戦に来た偉い人を攫ったり。
今回だってそう。大会に出ようとした私に無実の罪を擦り付けて、有無を言わさず超究極筋肉娘にされてしまうのかも。そんなこと、許せるはずがない。
「何を企んでいる悪の筋肉の化身! おっぱいをぜい肉と断ずるような筋肉どもに、私は屈しないぞ!」
「企んでいると言われてもだな……ともかく、この話にそれらしい裏など無い。この大会もそれなりに歴史のある大会でな。気になることがあるなら街の人間に聞いてみると良い」
「そ、そうなの? 優勝してもお金は払われなかったりとか、優勝する人は最初から決まっていたりとか、そういう奴じゃないの?」
「ああ、なにせ元々は俺への挑戦者を決めるための大会だったからな。妙な金の動きは筋肉に邪念をもたらすが故、大会の運営資金は賞金も含め、全て俺のポケットマネーから出している。要するに、俺が不正を許していないから不正は見逃されないし、俺が賞金を払うと断言しているから間違いなく賞金は払われるのだ」
「その口ぶり……もしかして受付ジョーって、ものすごいお金持ち?」
「有り体に言えばその通りだ。伊達に長らく英雄呼ばわりされている訳ではない。――だが金よりも筋の方が重要だ。そうだろう?」
しかしなんというか、受付ジョーの言葉には相手を騙そうとする気配が無いのだ。
理解できない理論がたまに飛び出てくるのはさておき、なんとなく誠実そうな気配がする。筋肉なのに。
「ともかく、だ。脳筋たるもの、細かいことを考えてはいけない。力こそパワー。勝てば勝利。1位になれば優勝だ」
そしてあろう事か、女の敵らしからぬ世界の真理を説いてくる次第。
そうだね、力こそパワーだよね。
そして力こそ正義であるならば、超究極最強魔導士たる私は大正義なのだ。今こそ正義を世に示すとき。
「とは言ったがまぁ、観客を盛り上がらせるために、それなりにルールを練り上げた闘技大会だ。他所じゃあ見慣れないルールも割とあるが故、パンフレットをよく読み込んで、振るって参加すると良い」
そうして筋肉ジョーはそう言い残し、朝焼けの紅に染まるアレンテッツェへと歩き去って行く。チャンスだけを私に残して。
パンフレットの拍子を、改めて眺める。やはり、優勝賞金は100万クロム。見間違いでは無い。
そして超究極最強魔導士たる私なら、どんなルールでも優勝できることは間違いない。力比べだって言うなら、話はシンプルなはずだから。
であるならば、やはりこれは奴隷から解放される千載一遇のチャンスだ。その切っ掛けが筋肉というのは胸に突っかかるものがあるが、そんなことを気にしてはいられない。
「――あれ? 第63回で、元々は受付ジョーへの挑戦者を決める大会……? ――まぁ、いっか」
そして唐突に脳裏に浮かんだ受付ジョーの年齢に対する疑問も気にすることなく、私もまた、海辺から去るのだった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「――と、いうわけで! 私はこの大会に出て優勝してくる! 優勝したら奴隷解放だからね!」
朝の食卓を囲む最中、私は机にパンフレットを叩き付けながらそう宣言する。
悪しき筋肉の甘言に乗ると決めた以上、やるなら思い切って覚悟を決めるべき。もはや私も後戻りできないよう、みんなの前で大会参加を明言し、私が大活躍する大会の日程を教えるのだ。
これで「対戦相手がセクハラ筋肉だからやっぱり嫌だ」なんて言ったら超究極最強魔導士の面子が立たない。いわゆる背水の陣なのだ。
「ダメです。ミーシャが怪我したらどうするんですか」
しかし悪しき筋肉が発端という胡散臭さもあってか、セレスちゃんに一蹴されてしまう。
きっとセレスちゃんは私が悪しき筋肉の罠にかかって、超究極筋肉戦士になることを恐れているのだろう。それで私が大会に出るのを嫌がっているという訳だ。そして、奴隷である私はセレスちゃんの嫌がることはできない。
私だって、セレスちゃんがこんな妖しげな大会に出ようって言い出したら止めるだろう。つまり、ここまでは既定路線。ここからは、超究極最強交渉術の見せ所なのだ。
「ね、ね、そんなこと言わずに! 私最強だから、怪我なんてしないよ?」
「そんなこと言っても、相手を怪我させるために手を尽くすのが闘技大会というものじゃないですか。私、ミーシャが怪我をするのも、ミーシャが怪我をさせるのも嫌ですよ」
「大会で優勝したら、賞金でクリームいっぱいの手作りケーキとか作っちゃうから! ね、お願い!」
「とっても魅力的な提案ですが、ミーシャの方が大事ですからケーキは我慢しますね」
「ぁぅ……不覚にもときめいた……」
しかし正妻にしてラスボスであるセレスちゃんのガードはあまりに堅く、ケーキによる甘い誘惑すらもはね除けられてしまう。
私の方が大事って、さらっと言われると刺激が強い言葉だ。そして本妻の貫禄溢れる言葉にクラクラきちゃった私は、その一瞬の隙に抱っこされてセレスちゃんの膝の上に座らせられてしまう。先制攻撃は失敗といったところか。
「そもそも、ミーシャはいつ妊娠してもおかしくない生活をしているんですから、討伐系の依頼ではお留守番していてほしいです。大切な身体ですから、ね?」
「……大切にするの禁止。無双できなくなっちゃうのに、嬉しくなっちゃうよ……」
「今のミーシャは奴隷なんですから、観念して大切にされてください」
そして無情にもそんなことを言い放つセレスちゃんの膝の上で撫で繰り回されながら、包み込むように抱き締められる。
逃がさないぞと言わんばかりに締めつけてくるセレスちゃんの腕の中はちょっぴり窮屈で、なのにそれが嬉しくてたまらない。
私がセレスちゃんの婚約奴隷だからって、私がお嫁さんになる事が確定しているかのような、根も葉もない嘘を事実であるかのように語るのはやめてほしいのに。これでは身動きが取れない上に、抵抗も反論もできなくなってしまう。
流石はラスボス、なんという強烈な反撃か。しかし私は負けない。嫁になるのはセレスちゃんだ。私ではない!
「ぁぅっ……ぁふぅ……」
「案の定ミーシャが何も言えなくなったところで、仕事の話をしましょうか」
「びっくりするほどお手軽に制されてて、いっそ芸術的ですね」
しかしセレスちゃんの反則級の撫でテクには抗うことができず、うっとりして抱き締められるがままになってしまう。
私は悪くない。悪いのは私をめろめろにしちゃうセレスちゃんであって、私は決して悪くはないのだ。
「さて、数日前にアレンテッツェに繋がる街道の整備計画に予算が下りたとのことで、街道沿いでの魔物の討伐依頼が、簡単なものでも報酬が上乗せされているようです。なので今日は街道沿いでのゴブリン討伐依頼を受注してこようと思いますが、どうでしょう?」
「良いと思います。無茶をする理由も無いですし、これからしばらくはゴブリン討伐で良いかと。……ジュゼさんはどうしますか? ミーシャを留守番にするなら、空いた後衛の枠にジュゼさんが入ってくれると安心なんですが――どうですか?」
「あー……言いにくいけど、不可能やな。今のウチってミスティはんが本体みたいなところあるから、あんまり遠くに行くと力が抜けて身動きできんくなってまうんよ」
「そうですか……ミスティちゃんを討伐依頼に引っ張り出す訳にもいきませんし、没案ですね」
その上セレスちゃんだけじゃなく、みんなも最近はずっとこんな調子。
ギルドに行っても受ける依頼は近場での採集依頼ばかり。討伐依頼を受ける時にも、ゴブリンより強い魔物を倒しに行こうとしない。
私たちがジュゼちゃんを助けに行っている間に、イリーちゃんがお金を稼いでいてくれたおかげで、お金に困らなくなった現状。「これからしばらくの間、目立たないようにしようかと」「無駄な贅沢はせずに、安全第一で」「身体を壊して無収入になることだけは避けましょう」。最近のセレスちゃんはいつもこう言う。
なんというか、守りに入っている感じなのだ。魔王パワーで毎日どんどん強くなっているはずなのに、全くと言って良いほど冒険者として成り上がろうとしていない。
勿論、その理由も分からないでもない。ジュゼちゃんの件でしばらくの間は影を薄くしておきたいってぼやいていたし、それに普段はFランク冒険者だけど本当はめちゃ強い影の実力者になりたいっていう気持ちも分かる。
だからと言って、私の活躍の場がどんどん減らされていることについては受け入れられるはずもなく。ここぞとばかりに声を張り上げ、断固としてこの話の流れを変えていく。
「でも異議あり! それじゃあ、私が無双できないじゃん! 大会に出させて貰えないなら、せめて強敵を所望する!」
「そう言われても……誰かが活躍しなければ死んでしまうかもしれない状況なんて、ろくでもないものと相場は決まっていますし」
「そこは、ほら、こう……なんやかんやするから! 頑張るから! お願い!」
「……ミーシャを冒険の場から引きはがせたことに今、心の底から安堵しています。とにかく今日はお留守番です。イリーさん、ミスティちゃん、ミーシャを頼みましたよ」
しかし悲しきかな。私を依頼に連れて行かないというセレスちゃんの意思は固く、私のお願いに聞く耳を持たない。
留守を任されたイリーちゃんとミスティちゃんもうんうん頷き、多数決でも勝てそうにない雰囲気。何故私はここまで追い詰められているのか。これがわからない。
「はにゃっ?! な、なんで縛るの?」
「放置しておくと勝手にどこか行ってしまいそうなので……ミスティちゃんにリードを着けてもらった後なら、ほどいても良いですからね?」
「ん。しばらく着けないでおくの」
その上セレスちゃんは私を簀巻きにして身柄を拘束し、ポイッとミスティちゃんの前に放り投げる始末。
やめてミスティちゃん。イモムシのようにのたうち回るみぢめな私を指先でツンツンしないで。頭をなでなでしないで。
そうして身動きの取れない私は頭を軽く撫でられて、そのまま宿を出て行くセレスちゃんらの背を見送るばかり。無力な我が身を恨めしく思う。
「うぅ……いってらっしゃい……」
「この様でも挨拶を忘れないなんて、ミーシャちゃんは健気ねぇ」
「そんなハーレム主っぽくない褒め方しないでぇ……」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「しかし、しかしだよ。たかがこの程度で無双チャンスを諦めるほど、私のハーレム魂はヤワじゃない!」
セレスちゃんとマリーちゃんが依頼に出てしばらく。私を縛る縄もいい加減ほどかれ、ミスティちゃんにリードの先を握られている今。されど私はまだ、大会に出ることを諦めてはいなかった。
折角掴み取った千載一遇のチャンス、多少手元から離れそうになったからといって、手から溢れ落ちるがままにするなど超究極最強魔導士の名折れ。むしろ最愛の嫁にして最大の敵でもあるセレスちゃんが居なくなり、説得する相手の減った今からが本番なのだ。
「今日もミーシャちゃんはやたら元気ねぇ。もう縛られる程度じゃあ懲りなくなっちゃったのかしら?」
「ん。きっと奴隷えっちに慣れちゃったから、いつものご褒美がご褒美にならなくなっちゃったの。もう、もっとたくさんいじめないと、うっとり気持ち良くなれないと思うの」
「縛るよりも、もっとひどいことした方が良いのかしら? でもミーシャちゃんをいじめるのって、気を抜くとやり過ぎちゃいそうで怖いのよね……ねぇ、ミーシャちゃんはどうされたら嬉しい?」
しかしラスボスたるセレスちゃんがこの場を去ったとて、この場に残っているのも強敵ばかり。そしてその筆頭たるイリーちゃんが妖艶な笑みを浮かべながら、すべすべの細い指で私のほっぺをぷにぷにつついてくる。
細かな仕草の色っぽさは、きっとお嬢様属性由来の成分。セレスちゃんに抱き締められて押し潰されるのとはまた違う、脳の奥まで染み渡るこの声音に、私はいつもクラクラきちゃう。
そんな色香に惑わされたせいで、ひどいこと言われているって分かっているのに私は反論もできず、ぷにぷにしてくる指を払うこともできない。これだから魔性っの女ってやつは。
「え? えっと……みんなに撫でられて、嬉しくない場所なんて無いよ……?」
「あらあら、もうそこまで堕ちちゃっていたのね。じゃあ、もう調教で手心を加える必要も無いわね。前々から思っていたんだけれども、尊厳とか反抗心を粉々に打ち砕かれて従順になったミーシャちゃんって、すごく可愛らしいと思うのよ」
「ん。はだかでおさんぽ、する? わたし、ミーシャおねーちゃんでお馬さんごっこしたいの」
「そんな恐ろしすぎること、サラッと言わないでよ! そもそも私は大会で優勝して奴隷じゃなくなるんだから、そんなことは考えなくても良いのー!」
しかしいくらイリーちゃんが魔性の女と言えど、聞き逃せない言葉くらいある。これからのえっちがもっとひどいことになるなんて言われたら、いくら何でも危機感を覚えるものだ。
その危機感故にイリーちゃんの誘惑を振り切り、初心に立ち返る。
大会に出て優勝すれば大体なんとかなる。逆に言えば、大会に出ることができなければ進退窮まる。
しかしセレスちゃんは私のことをお嫁さんにする気満々で、私がハーレム主に返り咲くための大会出場は許さないだろう。
だからこそ、私はセレスちゃんが依頼で外に出かけている今のうちに、残ったみんなを説得しなければならないのだ。そしてそのための策は、既に私の中で完成している!
「という訳でジュゼちゃん! 一緒にミスティちゃんとイリーちゃんを説得しよう!」
「そこで話を持ってくる相手がウチ、しかもミスティはんの目の前でって……なんというか、根回しヘタクソすぎひん?」
「謂われの無い非難が私を襲う?!」
「だって今のウチ、基本的にミスティはんの付属物みたいなモンやで? ウチが何考えても最終的にはミスティはんの意志に従う訳やし、説得するならミスティはんやろ」
「そのミスティちゃんを説得するのにジュゼちゃんの力がいるんだよ! 私の愛情センサーが、ジュゼちゃんのお願いならミスティちゃんを落とせるって囁いてるんだ!」
「んなこと言われても……」
しかし、その策の核となるジュゼちゃんに話を持ちかけるも素っ気ない反応。
おかしい。私の予想では、ジュゼちゃんに大会の話を持ちかければ諸手を挙げて参加してくれるはずだったのに。
――もしかすると、ジュゼちゃんは大会に出るメリットをイマイチ理解できていないのかもしれない。
そう考えると納得がいく。そもそも私とジュゼちゃんでは、ハーレム主とハーレムメンバーという最終目的の違いがあるのだから、私と同じ発想に至れなかったのかも。
であるならば、やることは1つ。ジュゼちゃんを説得するのだ。
「考えてみてよジュゼちゃん。ジュゼちゃんだって、ミスティちゃんに格好良いところ見せたいでしょ? 頼れるお姉ちゃんだって、褒めてほしいでしょ?」
「ん? いや、まぁ……そりゃ、格好付けたい気持ちがあるのは確かやけれども……」
「ミスティちゃんに「ジュゼおねーちゃんは強いね」とか「ジュゼおねーちゃんが守ってくれるから安心」とか言われたら、嬉しいよね?」
「……せや、な。そんなこと言われてもうたら、めちゃ嬉しい、かも、なぁ……」
「それにミスティちゃんだって、ジュゼちゃんが凄い魔導士だって知ったら喜ぶよ! 誇り高いよ!」
「……なるほど。言われてみたら、その通りなのかもしれへん、なぁ……」
「ほらほら、素直になっちゃえよベイベー! なんなら、2人で大会に出てタッグマッチとか良いかも!」
そうして私の言葉を聞いたジュゼちゃんは、腕を組みうんうんと唸りながら何かを考え始める。きっと、自分が大会に出たらどうなるのか脳内シミュレート中なのだ。
それに倣って、改めて私も想像してみる。ジュゼちゃんと私がコンビで大会に出たら、どうなるか――
――鳴り響く怒号。土埃舞う石畳のリング。
中央のリングには邪悪なる筋肉的巨漢がタッグでそびえ立ち、罪無き大会参加者を足蹴に高々と笑い声を上げる。
悪しき力に魅入られた筋肉の集団によって、平和であったはずの大会は徹底的なまでに蹂躙されてしまうという悲劇。ある参加者は絶望にむせび泣き、またある参加者は義憤に燃える。しかしてその牙は悪しき筋肉には届かず、理不尽な暴力によってたたき伏せられ地に伏せるばかり。
街に居た名だたる強豪たちは、ひとり残らず筋肉に倒されてしまった。誰も、筋肉たちの悪行を止めることはできない。
もうこの大会は色っぽさの欠片も無いカチカチの筋肉集団によって支配されてしまうのだ。会場に静かな諦観が満ちる中、無慈悲にも次なる試合は始まってしまう。
不安と憐憫の入り交じる視線を集めながら、邪悪なる筋肉どもに対峙するは清らかなる美少女が2人。そう、他ならぬ私、そしてジュゼちゃんだ。
しかし私たちを出迎えるのは歓声ではなく、「早く逃げろ」「今すぐ棄権するんだ」という悲痛な叫び。いかに刺激を求める観客とて、もはや可愛い女の子が筋肉にいじめられるのは見たくない。
それでも引かない美少女2人がリングに立つと、無情にも試合開始のゴングが鳴り響く。
絶望感が会場を包み込み、これから起こる悲劇を予想した者は目を覆ったであろうその瞬間、観客は想像だにしなかった光景を目の当たりにする。
必殺のミーシャパンチをくらった筋肉が吹き飛ぶ。ジュゼちゃんのツタびんたを受けた傲慢なる筋肉が薙ぎ払われる。
瞬く間に悪しき筋肉の暴虐を止めた私たちは一躍注目の的。そのまま決勝戦では悪しき筋肉の親玉をも倒し、大会にも優勝しちゃって有名人に。
私は優勝賞金で奴隷から解放されちゃうし、ジュゼちゃんはミスティちゃんの頼れるお姉さんとしてらぶらぶになっちゃう。
さらに私の格好良い姿を見たハーレムのみんなは、今まで私をいっぱいいじめて事を反省しながらこう思うのだ。素敵……抱いて! と――
「えへへ……夢が広がるよぉ……」
「……ミスティはんから尊敬の眼差し……ええなぁ……」
「……なんでジュゼおねーちゃん、こんなのに説得されかかってるの? なんだか、なさけない気持ちになってきた……」
「ん? ミスティちゃん、なにか言った?」
「……なんでもないの。気にしないで?」
とにかく重要なのは、大会に出ることが私もジュゼちゃんも幸せになれる最高のプランだって言うこと。そもそもタッグマッチがあったか確認していなかったけれど、きっとあるはずだから問題無い。
ジュゼちゃんもそれに気付いたのであろう。ジュゼちゃんはハッと顔を上げると共に、何かを期待するかのようにミスティちゃんをじっと見つめる。
「――よし! ミスティはん見ててな! ウチ、やったるで!」
「やった! ジュゼちゃん参戦だ!」
結果、説得は大成功。私とジュゼちゃんは力強く手を握りあい、えいえいおーと声を出す。
今ここにジュゼちゃんとわたしの大魔導士連盟は成立したのだ。勿論、これは全て私の目論見通り。
今でこそアルラウネで私の嫁だが、やはりジュゼちゃんも性根は冒険者。いっぱい無双していっぱい褒められたい、腕自慢の魔導士なのだ。
そんな気持ちを揺さぶることなど、恋愛のプロたる私にかかれば容易いこと。ああ、可愛いな女の子の心を弄ぶ私の魔性が怖い。
「……イリーおねーちゃん、どう思う?」
「……ほ、ほら、馬鹿な子ほど可愛いって昔から良く言うでしょう? そしてジュゼちゃんは可愛い。それで良いんじゃないかしら?」
「そう、なの……わたしはね、しっかりしなきゃって思ったの。ジュゼおねーちゃんのお世話は、わたしが一生しなきゃだから……」
「あー……お勉強、頑張りましょう?」
「ん……」
しかしどういう訳かイリーちゃんの腰回りにしがみ付きながらこちらを見やるミスティちゃんの瞳は、悲哀とも諦観とも取れるような感情に染まっているように見える。
どうしてそんな目で見るのだろうか、私にはさっぱりわからない。きっと何か複雑な乙女心があるに違いない。
けれどもけれどもここまで来れば問題は無い。
好きな子にお願いされたら断れないのは、私が身を以て知っている。壁に抑えつけられて耳元で囁かれたりしたら、何を言われても頷いちゃうのも我が身を持って知っている。
つまりここで私がミスティちゃんの手をぎゅって握り、ジュゼちゃんがお願いをすれば、ミスティちゃんは頷く以外できないってこと。なんという完璧なプランだ。
「おててをぎゅってして――今だジュゼちゃん! ミスティちゃんに甘くとろける囁きボイスをくれてやれ!」
「お、おう? ……ミスティはん。大会、出てもええ?」
「ん。ぜったいダメ」
しかしミスティちゃんは私とジュゼちゃんのお願いをさらりと断ってしまう。
なんということだ、完璧なプランが崩壊してしまった。
「い、いやいや! そこは頷いとこうよ! ジュゼちゃんのお願いだよ?! ミスティちゃんの嫁のお願いだよ?!」
「ジュゼおねーちゃんはお嫁さんじゃなくてペットなの」
「それでもジュゼちゃんのこと好きなんでしょ? どうして……」
「だって、ご主人さまが良いって言わないと、闘技場になんて行けないの」
「だからこそミスティちゃんを――あっ」
唖然とする私に対して、ミスティちゃんが呆れたように言うその言葉を聞いて、やっと私は気付く。
ミスティちゃんはジュゼちゃんのご主人さまなのだけれども、同時にみんなの性奴隷でもあったのだ。ミスティちゃんは私をいじめる側の存在だったから、ご主人さまだと無意識に誤認していた。
つまり、ジュゼちゃんを籠絡してミスティちゃんを説得したとしても、さらにそこからご主人さまのイリーちゃんを説得しなきゃいけないということ。勝負はここからなのだ。
――とはいえミスティちゃんを説得するのと比べて、遭難緯度が高くなるわけでもない。
なにせイリーちゃんを説得するのは私、ジュゼちゃん、そしてミスティちゃん。いかにイリーちゃんが弁舌が立つといえども、3人に勝てるわけがないのだ。
「よし、3人でイリーちゃんにおねだりしよう! 美少女3人に囲まれれば、いかにマリーちゃんとてハーレム感にクラクラきちゃうはずだ!」
「ん。2人でがんばって。わたしは、おねーちゃんたちにどんなおしおきをするか、考えなきゃだから」
「そんな冷たいこと言わないでよぅ……それに、本当はミスティちゃんだって闘技場に行きたいでしょう?」
「ん、なんで?」
「なんで、って……闘技場に行けば、ティエラちゃんに会えるよ?」
「……え……会える、の?」
そして対イリーちゃん包囲網に参加してくれないかと追い説得をしたところ、この反応だ。
これが初代お姉ちゃんの権威というものなのだろうか。最初こそ私たちの味方になってくれるか微妙な反応だったけれども、ティエラちゃんの名前を出した今ではもう、申し訳なさそうにチラチラとイリーちゃんの顔を伺っている。落ちたな。
普段どんなにご主人さまっぽく私をペット調教していようと、所詮は妹系ヒロイン。妹の好きなものを知り尽くしたお姉ちゃん系ハーレム主の手にかかれば、お願いを聞いてもらうなんて容易いことなのだ。
「……ミーシャおねーちゃん、卑怯なの。わたし、ミーシャおねーちゃんをそんなずるいこと言う子に育てた憶えはないの」
「育てられた憶えは無いよ!? しかし……ふっふっふ……! 今のミスティちゃんはもう、ティエラちゃんに会いたくてしょうがないんでしょ! うりうり、正直になっちゃいなよ!」
「……ミーシャおねーちゃんに言い負かされるの、屈辱的だけれど……ティエラおねーちゃんに、会いたい……」
そう言うとミスティちゃんはくるりとイリーちゃんの方に向き直り、無言でじっと見つめ続ける。
ミーシャおねーちゃんごときとは一体と首を捻りつつも深くは気に留めず、私とジュゼちゃんもその流れに乗って、じっとイリーちゃんを見つめる。大事なのは勢いだ。
物言わず視線を向ける6つの瞳。その威圧感に耐えることなどできるはずもなく、イリーちゃんは溜息と共に言い放つ。
「ミスティちゃんの前の保護者ねぇ……大会の方は論外として、その子のことは私も気になってはいたのよ」
「あれ、そうなの?」
「だってミスティちゃんの話を聞く限り、その子が解放奴隷になったら、ミスティちゃんを引き取ってどこかに行くつもりなんでしょう? 私としては育てている途中の弟子を手放すつもりも無いし、1度話をしておきたくて」
「そこは大丈夫! ティエラちゃんだって、私のハーレムメンバーになるんだから!」
言葉を交わすまでも無く言い負かされたイリーちゃんは、案外に満更でもない反応だった。これは意外にも、イリーちゃんから説得しても問題無かったかもしれない。
ともかく、最大の強敵と思われたイリーちゃんすら難なく陥落させることに成功した。超究極最強魔導士が本気を出せばこんなものだ。
満足感と共に、共に大会に出場するジュゼちゃんと抱き合い、喜びを分かち合う。
闘技場に行ってしまえば、後はこっちのもの。未だにミスティちゃんとイリーちゃんは私たちが大会に出る事そのものは反対みたいだけれども、予選か何かで私たちの圧倒的な力を魅せつけて、私たちが活躍するところをもっと見たいと思わせてしまえばそれで良い。
「じゃあ今日は、朝に闘技場でティエラって子と顔合わせして、近況報告とミーシャちゃんの説得。お昼ご飯を食べて帰ってきたら、ミーシャちゃんとジュゼちゃんが2度と生意気な口を聞けなくなるくらい、たくさん躾けてあげるとしましょう」
「ん……イリーおねーちゃん、ありがとう……」
「でもミーシャちゃんごときに言いくるめられたのは情けないから、後で補習ね?」
「ん。わかったの」
ミスティちゃんとイリーちゃんの不穏極まる会話も、私たちの強さを目の当たりにすれば、瞳を興奮に輝かせながら撤回すること間違いない。
何度かの修正はあったものの、私のパーフェクトなプランは問題無く進んでいる。今夜にはこの場の3人をメロメロにヒロイン堕ちさせてしまい、数の暴力でセレスちゃんとマリーちゃんをも屈服させてしまうだろう。
全ては私の掌の上でころころされちゃっているのだよ。私はみんなに気付かれないように、にやりと笑みを浮かべた。
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