エンシェントソルジャー ~古の守護者と無属性の少女~

ロクマルJ

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48 第三の古代文明

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床に設置された開閉用と見られるレバーにゼロスが手を掛ける

「そのままレバーを時計回り方向に回して
 かなり腐食が酷いはずよ、破断させないよう気を付けて」

プロメの助言に僅かに頷き
ゆっくりと指示された方へとレバーを回す

ギリギリッ...

「!」

その手ごたえは想像していたよりかなり滑らかに動作した
ゆっくりとレバーの回転に合わせ
厚さ5㎝以上はあろうかという金属製のハッチが
ゆっくりと横にずれて道を空けて行く

隙間から僅かにひんやりとした空気が漏れ出す
ハッチが完全に開ききるとそこには
更に下の階へと続く階段が伸びていた

今までの階層にあった各扉、閉鎖機構等と見比べても
明らかにこの箇所のハッチの厚みは他よりも厚く
重要な階層であるという事が推測出来る

ゼロスが先頭に立ち、間にセルヴィを挟む様に進む

階段を降り切ると、そこは今までの階層とは全く異なる
巨大な空間へと開けており、そこにはビッシリと
金属製の縦2m弱、横幅1m程のカプセルが
ところせましと並べられていた
やはり此方も腐食・劣化が見られたが
それでも上層階に比べると格段に保存状態は良く
周囲の壁等には、まだ文字として
読み取る事が出来る物が多数見受けられる

「解析出来るか?」

「確認できる範囲の文字列は全て記録中だけど
 言語解析するにはまだ不足ね」

「やはりこの時代の物とは違う文字列なのか」

「そうね、この時代と私達の時代の言語から
 関連性を結び付けて解析して居るけど
 今の所はどちらにも当てはまらないわ」

セルヴィが近くにあったカプセルの一つを隅々まで観察していく
プロメもその場に瞬き一つせずに静止している
恐らく各種センサーで分析を行っているのだろう

ゼロスは念の為、再度周囲を警戒するが
その空間には自分達以外、何者も確認する事は出来なかった
周囲を見回した際、その一角に
入力端末の様な物を発見し、近寄ってみる

物理的なモニターらしきものは既にひび割れ
その役割を終えている、入力する為の装置は
旧時代のキーボードを彷彿とさせるボタン式だ

一つを試しに押してみるが
これもやはり既に完全に死んで居る様子で
何も反応する事は無かった

「この中の記憶装置は解析出来ないか」

ゼロスの問いにプロメが僅かに装置に視線を向ける
数秒程すると、ゆっくりと横に首を振る

「その機械の主記憶装置は磁気ディスク製
 それと補助に不揮発性の半導体メモリーが確認出来るけど
 どちらも完全に内部情報は失われているわね」

「そうか」

「ぷはぁ!」

その時、一つのカプセルの下部に
潜り込んでいたセルヴィが顔を上げる

「ここにもやはり魔術回路に酷似する部位が使われてますね
 恐らく水属性の...冷却系の機構だと思います」

「これも魔法機械の一種なのか?」

「うーん...似てると言うだけで、こんな魔具は見た事ないです
 それにマナを流す為の伝達系を見る限り
 この機械を動かす為に必要なマナの量は
 とても人間が個人で扱える量を軽く超えてます
 一体どうやってこれを動かしていたのでしょう...」

「古代の魔具、か」

「でもおかしいのです、魔具は
 神機、すなわちゼロスさん達の時代の遺物を元に
 今から数百年前に産み出され、その機構を解析する事で
 魔具技術は発展して来たと言われています
 でも正直私が見る限り、ここにある遺物の方が
 遥かに今の私達の魔具に近い機構をしている様に見えます
 だとすると何故わざわざ、今の私達は
 より遠い神機をベースにしているのでしょう?」

「有用性の発見が偶然神機の方が早かった、
 というのは確かに違和感があるな」

ゼロスが手を顎に当て考え込む

「違和感、という程度なら既に色々あるわよ」

解析が終えたのか、プロメが合流する

「まずこの時代の魔具という技術だけど
 それに関しては私達とは全く異なる技術
 というのは間違いない、けれど
 その使い方が近過ぎるのよ」

「どういう事だ?」

「例えば、町の人の暮らしを見た時
 暖房器具、食材の冷蔵保存から
 運送、生活インフラに至るまで
 様々な所に魔具が取り入れられているわね
 今まで接したこの時代のコミュニティを見る限り
 社会制度としては産業革命以前の中世欧州の形態に近い
 土木や建設技術もそれ相応
 けれど、生活に於ける魔具技術の用途だけで言えば
 私達の時代で言う19世紀レベルなのよ」

「それは、人は技術があれば使うだろう
 発明や発見は偶発的に産まれ
 結果的に順序が入れ替わってしまっただけ
 という事もあるのではないか?」

ゼロスが疑問を投げかける

「そうね、それも現時点ではまだ否定出来ないわ
 だから違和感《・・・》どまりなのよ
 この施設もそうね、僅か1000年弱前にも関わらず
 余りにも構造や施設の概念が私達の物に近すぎる」

「既に目覚めた他に生き残りが
 その技術を伝えたという事は?」

「ならどうしてさっきの銃の様な遺物もそうだけど
 態々昔、21世紀頃の技術でこんなものを作るの?」

「ふむ...」

再び考え込む

「それと、話は変わるけど
 ここの施設が何なのか、大体見えて来たわ」

「本当ですか?!」

「ええ、さっきセルヴィちゃんがが教えてくれた
 冷却の働きをする、という話で辻褄が合ったのよ」

「ほう」

「結論から言えばここは、何等かの長期避難を前提とした
 シェルター、そして冷凍睡眠施設だと思われるわ
 長期と言っても、私達の様な数十・数百万年という
 単位では無く、数十から数百年単位で考えて居たのでしょうけど」

「れいとうすいみん...?」

セルヴィが聞いたことが無い言葉に不思議そうに尋ねる

「前に人類が本格的に
 宇宙を目指した時期があった
 という話はしたわね」

「はい!言い伝えは本当だったんですねっ」

「その頃に開発されていた技術の一つなの
 宇宙の船旅はとても長い時間がかかるから
 そこで乗員を膨大な時の流れから守る為に
 冷凍して眠らせる事で、時間を止める技術、という所ね」

「ほぇ...時間を...本当に神様の様な魔法ですね
 あ、それってゼロスさんが今の時代まで眠っていたのも
 そのれいとうすいみん、という技術によるものなのですか?」

「目的としては同じだけど、技術は全く違うわね
 冷凍睡眠は人を保存する技術としては初期の物
 余りに不完全だったのよ
 眠ったまま二度と目覚めさせられなかったり
 その効果も年月の経過と共に劣化が進んだりね」

「はぅ、、眠ったまま一生起きれない何て怖いです...」

「残念だけど、その不安がここに居る者は
 皆現実になってしまった様ね」

「ぇ...?」

言われて改めてセルヴィが周囲を見回す

「もしかして...これ全部」

「ええ、そのカプセルの中にはどれも
 人が入っているわ、恐らく皆骨かミイラでしょうけど」

思わずカプセルから後ずさり、ゼロス達の元へ駆け寄る
今までただの昔の装置と思っていた物は
中身入りの棺桶と同じだったからだ

「なな、なんで、一体どうしてこんな物をっ」

「何故か、という所までは解らないわね
 当人に聞いてみればわかるんじゃない?」

徐にプロメが横に視線を向ける

ゼロスとセルヴィが共にプロメの視線の先を見やると
そこにも一つの同種のカプセルがあった
しかし良く見るとそれだけ異なっている点がある

カプセルが開いているのだ

「ひぃぃ!」

それに気づき咄嗟にゼロスの背後に隠れる
しかし良く良く見てみると中身は空だった

「あのカプセルはごく最近まで稼働していた形跡があるわ
 そしてこの施設特有の残留エネルギーを解析して
 範囲検索を掛けてみたら...」

徐にプロメが天井を見上げる

「有るのよね、同じエネルギーの反応が上の街に」
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