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プロローグ
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世界はなにものでもなかった
音もなく万物は砂粒よりも小さくすり潰され
何もかもがばらばらにされていた
全てはただそこに渦巻いていた
時折、闇にみちた世界に雷槌が走る
ただそれだけが世界のすべてであった
長い年月がすぎ
かつてないほどに強い閃光が幾度も迸り
闇の世界を白く染めあげる
膨大な力の奔流のあと一柱の神が生まれた
おお、雷の神ジュヌス
始まりの神よ
世界に満ちる闇に抗う力の神よ
二つの力が拮抗し、やがて弾けた
(ガリア地方の古老・口伝)
◆◆◆◆◆
「ピィーーーーーーッ」
早暁の秋空を斬り裂くように鋭い鳴き声が響き渡る。
朝日に照らされ金色に染まる雲間を銀色の翼が西を目指して翔けていく。
眼下にはトゥラーン大陸の北西部、ナヴィア半島の広大な森林地帯。
右手には大陸から続く龍尾山脈の尾根が東西に走り、その先には黒い森がうかがえる。左手には未だ黒く暗く沈むブラプトン湾が静かにうねり、フラプトンド半島やスプリンホールド島の影が朝霧の中にぼんやりと浮かんでいる。
彼が進むナヴィア半島は『神樹の巫女』フィラ=ウィサネイロスーーー途方も無く長い年月を生きるハイエルフーーーを最高指導者と仰ぐエルフの集落が点在し半島全域はエルウェラウタと呼ばれる地域である。エルウェラウタはエルフ達が精霊や妖精とともに暮らし、豊かな恵みを齎す大いなる自然が命を謳歌している地域でもある。
彼は更に一声鳴くと西の空へと消えて行った。
◆◆◆◆◆
聖暦九八五年、秋も深まったある日の夕刻。
「さて、どうしたものか…」
タサリオン=ドルジョンは執務室で読み終わった手紙を机に放り出し大きくため息を吐き出すと、無意識に長い顎髭を扱きつつ、そうひとりごちた。
『神樹の巫女』フィラ=ウィサネイロスは最高指導者ではあるが精神的な支柱であり政治には関与しない。そのためエルウェラウタの運営は賢人会議ーーー代表的な十二集落の長老により構成されるーーーによってなされており、タサリオン=ドルジョンは長きに亘ってエルウェンデの長老として賢人会議議長の立場にある。エルウェンデは人口二万四千人を抱え外郭を備えたエルウェラウタ最大の集落であり、ドルジョン家の私邸と行政施設を兼ねた大きな館が設置されている。
彼は千年を生きるとされるエルフとしても高齢な方に属し、その相貌には深い年輪が刻まれているが、生成り色に緑の縁取りがなされただけの質素なローブに包まれた肉体は未だ衰えず背筋はすっと伸びている。幾分か後退し薄くなってはいるがローブと同じ色合いの紐ですっきりと一本にまとめられた銀灰色の髪、その髪と同色のきりっとした眉と長い顎髭、強い光を宿した深緑の瞳は見る者に思慮深さと厳格さを印象づけるだろう。
深く腰掛けた椅子の背にもたれ両の腕を組んで天井の一点を見るともなく見つめていたが、ひとつ大きくため息をつくと、おもむろに机に両肘を突き組んだ両の手に額を乗せて深い思考の海に沈み込んでいった。
開いた窓から吹き込む風が小さくカーテンを揺らす。
(まったく、フラドリンの小僧っ子は厄介事を押し付けてきおって。赤子を見殺しにするのは憚られるが…里の者たちの忌避感は強かろう。しかし、あの夫婦の子ということは…。こんなことは前例がなく想像がつかぬ。なんとしたものか…。)
エルウェンデの長老として長い時を生きてきた彼にも経験のない問題が持ち込まれており、苦々しく思いつつも放置することもできず思い悩んでいるタサリオン=ドルジョンを傍らで見つめているこの鳥は、東に隣接するノルド大公国との玄関口、タリオンの長老フラドリン=チェフィーナの使い魔で名をテルペリオンと言う。自身は喋れないが使い魔になったことで人語を解することはできる。
体長約九シギル(約五一センチメートル)、翼を広げると約一八シギル(約百三センチメートル)ほどで、白銀に輝く翼は”テルペリオン”の名前に負けず美しい。
彼ははタリオンからエルウェンデまで直線距離でおよそ六十一・六ヒルファロス(約四百五キロメートル)をおよそ十時間ほどで飛んできていた。街道を進むならば七十一・三ヒルファロス(四百六十九キロメートル)あり、この距離は精霊魔法により身体強化と回復を施された馬でも九日はかかる。街道はもちろん直線ではなく途中に小さいながらも山越えもあるため、実際には十一日ほどかかる距離である。
不意に執務室ドアが開かれ、元気な声とともに女の子が飛び込んできた。
「お祖父様!テルペリオンが来てるんですって?」
返事がないので女の子は机の傍まで近寄ってからもう一度声をかける。
「ねー、お祖父様?」
再度、呼ぶ声でタサリオン=ドルジョンは思考の海から引き戻された。
「おお、フィンダリエか。すまんすまん。どうしたのじゃ?」
彼女は今年八才になるタサリオン=ドルジョンの孫娘、フィンダリエである。彼女の顔を見ると先程まで考え込んでいたのが嘘のように相好を崩した。
「これ、もらってきたの!テルペリオンと遊んでいい?」
フィンダリエは満面の笑顔を浮かべながら小さなな布の巾着を突き出して見せた。
「ああ、いいとも。おい、フィンダリエにケガをさせるなよ。」
袋の中身を見るとニコリとして、傍らに蹲っていたテルペリオンに声をかけた。
「テルペリオン、おいで!外へ行くわよ!」
そう言うなり彼女は執務室の扉から出て走っていった。タサリオン=ドルジョンに向かって『わかっている』と言いたげに一声鳴くと、バサリと羽ばたき窓から出ていく。その羽ばたきで書簡がふわりと舞い上げられ床に落ちた。
タサリオン=ドルジョンはフィンダリエが出ていった扉が開きっぱなしになっているのをしばらく眺めた後、やれやれと言うように肩を竦め扉を閉めにいった。戻りしに書簡が床に落ちている事に気づきそれを拾い上げると椅子に腰をかけ再び考え込み始めた。
窓からは眩しいくらいに西日が差し込み、タサリオン=ドルジョンの左半顔を容赦なく照らしているがそれを気にする事もなく彫像のように瞑目し考え込んでいるのは、半刻(約一時間)ほど前にテルペリオンが齎したこの書簡に由来する。
四半時(約三十分)ほど呼吸も忘れているのではないかと思われるくらいに微動だにしなかったタサリオン=ドルジョンは不意に大きく息を吐くと、纏わりつくなにかを振り払うように左右に首を振り拾い上げたまま手に持っていた書簡をもう一度読み返し始めた。
ーーー
賢人会議議長 タサリオン=ドルジョン殿
昨日夕刻、東の境界の詰め所にて野盗集団との戦闘が発生しました。
経緯は以下の通り。
大公国側より一台の馬車が侵入。
御者が倒れていたため兵士の一名が乗り込み馬車を停止させました。
同時に野盗と思わしき集団が突入して来たため警備兵と戦闘に発展。賊を撃退しましたが当方にも数名の軽症者が出ました。適切な治療を受けており任務に支障はないものと考えます。兵の証言では「かなり統率がとれておりただの野盗ではないかもしれない」との事。盗賊を装った傭兵などの可能性があるため調査を行いたいと思います。
この件につきましては定例会の折にご報告申し上げます。
馬車については乗員三名と荷物。
時折、ニテアスのフィンゴネルを訪れていたヨルニ、リタ夫妻とその赤子で、残念ながら御者席にいたヨルニと中にいたリタは死亡。赤子は生きており現在は私が保護しております。
この赤子の扱いについてご判断を仰ぎたくテルペリオンを遣わせました。
タリオン長老 フラドリン=チェフィーナ
ーーー
簡潔な報告、相談文であり形式としては全く問題がない。
そう、最後の一文以外は…。
エルフ族は人族と比べかなり長命であり伝統を重んじる面が強い。
長身・痩躯で容姿も大変整っており精霊魔法を行使する。それが災いして密かに攫われ奴隷とされる者が度々出た。それ故に警戒心が強く閉鎖的だとも言える。
かつてノルド大公国は南の大カルマル王国の支配下にあり当時は特に被害が多かった。
二百五十年ほど前にノルド大公国がカルマル王国から独立する際に、時のノルド大公・フレドリック=アスビョルン=ウルガー自身がエルウェラウタに出向き、賢人会議で正式に謝罪を行った。その際に出来得る限り攫われたエルフ達を救いだし帰還させると誓った。
その”誓約”により限定的に交流が認めら今日に至るのである。
それを覚えている者が未だに多数存命しているから悩むのである。しかもその赤子は人間にしか見えないがクォーターエルフである。
太陽が海に沈みかけ赤みを増した光が横顔の陰影を濃くしてゆく。
窓の外からテルペリオンと戯れるフィンダリエの明るい声が聞こえてきて、窓辺により一人と一羽の様子を見るともなく見つめる。書簡に書かれていた赤子とフィンダリエの幼い頃を重ねてでもいるのだろうか。
タサリオン=ドルジョンはふっと視線を外すと決意を秘めた表情で机に向かう。手元に精霊魔法で光を灯し慎重に言葉を選ぶようにゆっくりと巫女姫への手紙をしたためはじめた。
ーーー
あとがき
挿絵はUniDreamというAIイラストの自動生成を用いている為文章と一部差異がでておりますがスルーしていただけると助かります。
度量衡が独自なのでまとめ(今回出てきてるのは長さの単位のみなので長さだけ)
・シギル(鏃の長さが基準) 1/12ファロス 5.708cm
・ファロス(矢の長さが基準) 12シギル 68.496cm
・ラエファロス(弓名手の有効射程が基準) 400ファロス 273.984m
・ヒルファロス 24ラエファロス 6.576Km
ーーー
・1Km 3ラエファロス2ファロス1/2
・170cm 25シギル3/4
ーーー
今回の登場人物まとめ
・フィラ=ウィサラウネ エルウエラウタに住むエルフ達の女王、神樹の巫女
・タサリオン=ドルジョン 賢人会議議長、エルウェンデの長老
・フィンダリエ タサリオンの孫娘、八歳
ーーー
・フラドリン=チェフィーナ 賢人会議議員 タリオンの長老
・テンペリオン フラドリンの使い魔、ハヤブサ
ーーー
・フィンゴネル ニテアスに住む職人
ーーー
・ヨルニ ノルド大公国のウサマイラノールに店舗を構えていた商人
・リタ ヨルニの妻、フィンゴネルの妻であるミゼリエラの姉の娘、ハーフエルフ
・フレドリック=アスビョルン=ウルガー 二百五十年前に大カルマル王国から独立した初代ノルド大公、エルフとの誓約を行い交流を深めた、現在の大公はフレドリックから数えては九代目になっている
2023/2/17
ニテアス~タリオンの距離を間違えていたので修正しました
音もなく万物は砂粒よりも小さくすり潰され
何もかもがばらばらにされていた
全てはただそこに渦巻いていた
時折、闇にみちた世界に雷槌が走る
ただそれだけが世界のすべてであった
長い年月がすぎ
かつてないほどに強い閃光が幾度も迸り
闇の世界を白く染めあげる
膨大な力の奔流のあと一柱の神が生まれた
おお、雷の神ジュヌス
始まりの神よ
世界に満ちる闇に抗う力の神よ
二つの力が拮抗し、やがて弾けた
(ガリア地方の古老・口伝)
◆◆◆◆◆
「ピィーーーーーーッ」
早暁の秋空を斬り裂くように鋭い鳴き声が響き渡る。
朝日に照らされ金色に染まる雲間を銀色の翼が西を目指して翔けていく。
眼下にはトゥラーン大陸の北西部、ナヴィア半島の広大な森林地帯。
右手には大陸から続く龍尾山脈の尾根が東西に走り、その先には黒い森がうかがえる。左手には未だ黒く暗く沈むブラプトン湾が静かにうねり、フラプトンド半島やスプリンホールド島の影が朝霧の中にぼんやりと浮かんでいる。
彼が進むナヴィア半島は『神樹の巫女』フィラ=ウィサネイロスーーー途方も無く長い年月を生きるハイエルフーーーを最高指導者と仰ぐエルフの集落が点在し半島全域はエルウェラウタと呼ばれる地域である。エルウェラウタはエルフ達が精霊や妖精とともに暮らし、豊かな恵みを齎す大いなる自然が命を謳歌している地域でもある。
彼は更に一声鳴くと西の空へと消えて行った。
◆◆◆◆◆
聖暦九八五年、秋も深まったある日の夕刻。
「さて、どうしたものか…」
タサリオン=ドルジョンは執務室で読み終わった手紙を机に放り出し大きくため息を吐き出すと、無意識に長い顎髭を扱きつつ、そうひとりごちた。
『神樹の巫女』フィラ=ウィサネイロスは最高指導者ではあるが精神的な支柱であり政治には関与しない。そのためエルウェラウタの運営は賢人会議ーーー代表的な十二集落の長老により構成されるーーーによってなされており、タサリオン=ドルジョンは長きに亘ってエルウェンデの長老として賢人会議議長の立場にある。エルウェンデは人口二万四千人を抱え外郭を備えたエルウェラウタ最大の集落であり、ドルジョン家の私邸と行政施設を兼ねた大きな館が設置されている。
彼は千年を生きるとされるエルフとしても高齢な方に属し、その相貌には深い年輪が刻まれているが、生成り色に緑の縁取りがなされただけの質素なローブに包まれた肉体は未だ衰えず背筋はすっと伸びている。幾分か後退し薄くなってはいるがローブと同じ色合いの紐ですっきりと一本にまとめられた銀灰色の髪、その髪と同色のきりっとした眉と長い顎髭、強い光を宿した深緑の瞳は見る者に思慮深さと厳格さを印象づけるだろう。
深く腰掛けた椅子の背にもたれ両の腕を組んで天井の一点を見るともなく見つめていたが、ひとつ大きくため息をつくと、おもむろに机に両肘を突き組んだ両の手に額を乗せて深い思考の海に沈み込んでいった。
開いた窓から吹き込む風が小さくカーテンを揺らす。
(まったく、フラドリンの小僧っ子は厄介事を押し付けてきおって。赤子を見殺しにするのは憚られるが…里の者たちの忌避感は強かろう。しかし、あの夫婦の子ということは…。こんなことは前例がなく想像がつかぬ。なんとしたものか…。)
エルウェンデの長老として長い時を生きてきた彼にも経験のない問題が持ち込まれており、苦々しく思いつつも放置することもできず思い悩んでいるタサリオン=ドルジョンを傍らで見つめているこの鳥は、東に隣接するノルド大公国との玄関口、タリオンの長老フラドリン=チェフィーナの使い魔で名をテルペリオンと言う。自身は喋れないが使い魔になったことで人語を解することはできる。
体長約九シギル(約五一センチメートル)、翼を広げると約一八シギル(約百三センチメートル)ほどで、白銀に輝く翼は”テルペリオン”の名前に負けず美しい。
彼ははタリオンからエルウェンデまで直線距離でおよそ六十一・六ヒルファロス(約四百五キロメートル)をおよそ十時間ほどで飛んできていた。街道を進むならば七十一・三ヒルファロス(四百六十九キロメートル)あり、この距離は精霊魔法により身体強化と回復を施された馬でも九日はかかる。街道はもちろん直線ではなく途中に小さいながらも山越えもあるため、実際には十一日ほどかかる距離である。
不意に執務室ドアが開かれ、元気な声とともに女の子が飛び込んできた。
「お祖父様!テルペリオンが来てるんですって?」
返事がないので女の子は机の傍まで近寄ってからもう一度声をかける。
「ねー、お祖父様?」
再度、呼ぶ声でタサリオン=ドルジョンは思考の海から引き戻された。
「おお、フィンダリエか。すまんすまん。どうしたのじゃ?」
彼女は今年八才になるタサリオン=ドルジョンの孫娘、フィンダリエである。彼女の顔を見ると先程まで考え込んでいたのが嘘のように相好を崩した。
「これ、もらってきたの!テルペリオンと遊んでいい?」
フィンダリエは満面の笑顔を浮かべながら小さなな布の巾着を突き出して見せた。
「ああ、いいとも。おい、フィンダリエにケガをさせるなよ。」
袋の中身を見るとニコリとして、傍らに蹲っていたテルペリオンに声をかけた。
「テルペリオン、おいで!外へ行くわよ!」
そう言うなり彼女は執務室の扉から出て走っていった。タサリオン=ドルジョンに向かって『わかっている』と言いたげに一声鳴くと、バサリと羽ばたき窓から出ていく。その羽ばたきで書簡がふわりと舞い上げられ床に落ちた。
タサリオン=ドルジョンはフィンダリエが出ていった扉が開きっぱなしになっているのをしばらく眺めた後、やれやれと言うように肩を竦め扉を閉めにいった。戻りしに書簡が床に落ちている事に気づきそれを拾い上げると椅子に腰をかけ再び考え込み始めた。
窓からは眩しいくらいに西日が差し込み、タサリオン=ドルジョンの左半顔を容赦なく照らしているがそれを気にする事もなく彫像のように瞑目し考え込んでいるのは、半刻(約一時間)ほど前にテルペリオンが齎したこの書簡に由来する。
四半時(約三十分)ほど呼吸も忘れているのではないかと思われるくらいに微動だにしなかったタサリオン=ドルジョンは不意に大きく息を吐くと、纏わりつくなにかを振り払うように左右に首を振り拾い上げたまま手に持っていた書簡をもう一度読み返し始めた。
ーーー
賢人会議議長 タサリオン=ドルジョン殿
昨日夕刻、東の境界の詰め所にて野盗集団との戦闘が発生しました。
経緯は以下の通り。
大公国側より一台の馬車が侵入。
御者が倒れていたため兵士の一名が乗り込み馬車を停止させました。
同時に野盗と思わしき集団が突入して来たため警備兵と戦闘に発展。賊を撃退しましたが当方にも数名の軽症者が出ました。適切な治療を受けており任務に支障はないものと考えます。兵の証言では「かなり統率がとれておりただの野盗ではないかもしれない」との事。盗賊を装った傭兵などの可能性があるため調査を行いたいと思います。
この件につきましては定例会の折にご報告申し上げます。
馬車については乗員三名と荷物。
時折、ニテアスのフィンゴネルを訪れていたヨルニ、リタ夫妻とその赤子で、残念ながら御者席にいたヨルニと中にいたリタは死亡。赤子は生きており現在は私が保護しております。
この赤子の扱いについてご判断を仰ぎたくテルペリオンを遣わせました。
タリオン長老 フラドリン=チェフィーナ
ーーー
簡潔な報告、相談文であり形式としては全く問題がない。
そう、最後の一文以外は…。
エルフ族は人族と比べかなり長命であり伝統を重んじる面が強い。
長身・痩躯で容姿も大変整っており精霊魔法を行使する。それが災いして密かに攫われ奴隷とされる者が度々出た。それ故に警戒心が強く閉鎖的だとも言える。
かつてノルド大公国は南の大カルマル王国の支配下にあり当時は特に被害が多かった。
二百五十年ほど前にノルド大公国がカルマル王国から独立する際に、時のノルド大公・フレドリック=アスビョルン=ウルガー自身がエルウェラウタに出向き、賢人会議で正式に謝罪を行った。その際に出来得る限り攫われたエルフ達を救いだし帰還させると誓った。
その”誓約”により限定的に交流が認めら今日に至るのである。
それを覚えている者が未だに多数存命しているから悩むのである。しかもその赤子は人間にしか見えないがクォーターエルフである。
太陽が海に沈みかけ赤みを増した光が横顔の陰影を濃くしてゆく。
窓の外からテルペリオンと戯れるフィンダリエの明るい声が聞こえてきて、窓辺により一人と一羽の様子を見るともなく見つめる。書簡に書かれていた赤子とフィンダリエの幼い頃を重ねてでもいるのだろうか。
タサリオン=ドルジョンはふっと視線を外すと決意を秘めた表情で机に向かう。手元に精霊魔法で光を灯し慎重に言葉を選ぶようにゆっくりと巫女姫への手紙をしたためはじめた。
ーーー
あとがき
挿絵はUniDreamというAIイラストの自動生成を用いている為文章と一部差異がでておりますがスルーしていただけると助かります。
度量衡が独自なのでまとめ(今回出てきてるのは長さの単位のみなので長さだけ)
・シギル(鏃の長さが基準) 1/12ファロス 5.708cm
・ファロス(矢の長さが基準) 12シギル 68.496cm
・ラエファロス(弓名手の有効射程が基準) 400ファロス 273.984m
・ヒルファロス 24ラエファロス 6.576Km
ーーー
・1Km 3ラエファロス2ファロス1/2
・170cm 25シギル3/4
ーーー
今回の登場人物まとめ
・フィラ=ウィサラウネ エルウエラウタに住むエルフ達の女王、神樹の巫女
・タサリオン=ドルジョン 賢人会議議長、エルウェンデの長老
・フィンダリエ タサリオンの孫娘、八歳
ーーー
・フラドリン=チェフィーナ 賢人会議議員 タリオンの長老
・テンペリオン フラドリンの使い魔、ハヤブサ
ーーー
・フィンゴネル ニテアスに住む職人
ーーー
・ヨルニ ノルド大公国のウサマイラノールに店舗を構えていた商人
・リタ ヨルニの妻、フィンゴネルの妻であるミゼリエラの姉の娘、ハーフエルフ
・フレドリック=アスビョルン=ウルガー 二百五十年前に大カルマル王国から独立した初代ノルド大公、エルフとの誓約を行い交流を深めた、現在の大公はフレドリックから数えては九代目になっている
2023/2/17
ニテアス~タリオンの距離を間違えていたので修正しました
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