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4話
4-14 莉奈の感謝と夢
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「へえ…例えばどんなことで?」
「まずは私は学校へ行かせることに必死で…就職か大学進学かを選ぶ高校生の大事な時期に不登校なんて許せないと思ってたのよね。」
「…そうだね」
「でもね、カウンセラーや病院で相談してるうちに私の子育ての仕方が莉奈の邪魔をして無理させてたことに気づいて…
…莉奈も周りの子たちに合わせようと、
ずっと必死に自分を圧し殺してきた結果かな。精神的につぶれて不登校になったみたい…」
「そこに気づけた紗和ちゃんがえらいと思うよ」
「え?そうかな…」
「私もさ、子どもは親のいうこと指示することに従って当たり前とずっと思ってたのよ。
自分の親もそうだったし。でも上の子が反抗期にさしかかってきてさ。
私を睨む顔をみたときにね。
あ、この顔、見覚えある!私の反抗期のときの顔そのものだわって」
紗和ちゃんも自覚があるのかうんうんと深く頷く。
「不思議だけど子育てって連鎖していくのかな。いいことも悪いことも。」
ふふっと笑いあったときに、莉奈ちゃんが制服姿のまま、こちらのテーブルに向かってきた。
いまはランチタイムが終わり夕方からの開店までしばらく閉店状態なので、他のお客さまはいない。
「ママ、お待たせ。ちょっといま時間ある?」
「ん?何で?」
「えっとー。
恥ずかしいけど、カズくんに教わりながら初めてちゃんとケーキ作ってみたの。」
莉奈ちゃんの後ろからパンダ店長が苺のショートケーキを持ってきた。
ケーキも層になり、クリームも綺麗に塗られてきちんと売り物に見えるレベルだ。
「え!ウソ。これ…莉奈が作ったの?」
「うん。本当はママの好きなモンブランとかタルト作れたらと思ったけどさすがにレベル高いみたいで。」
「いや…十分だよ。嬉しい。いただきます」
紗和ちゃんが笑顔で一口ケーキをフォークですくい口に運ぶ。
私の分まで作ってくれたようでパンダ店長が持ってきてくれた。
生クリームがふわっとした舌触りで一瞬で口のなかで蕩けた。
濃すぎず甘すぎず…これは美味しい!
「すごいね!初めてでこのレベルって…」
「いえ、カズくんにもかなり手伝ってもらったので。」
「頑張ってるんだね、莉奈…ママ嬉しいよ。ありがとう。」
「ママ、今までたくさん迷惑かけたよね。本当にごめんなさい。でも、私ママがいてくれたから頑張れたよ。」
「莉奈…や、やだそんなことこんなところで…」
紗和ちゃんの目からぼろぼろと涙がこぼれた。
「感謝とごめんねと…それとお願いがあって。」
莉奈ちゃんが真っ直ぐに紗和ちゃんをみる。
「私…高校は辞めて、製菓学校に通いたい。」
「えっ…」
「この喫茶店でお手伝いして改めて思ったの。
勉強したいのはお菓子のこと。
できれば和菓子と洋菓子を融合させたスイーツを私、ずっと作りたかったの。」
「和菓子と洋菓子を…」
「うん、和洋折衷ていうのかな。
和菓子の古風な部分も大好きなんだけど。
白桜堂もできればだけど私が継ぎたい。いまはお店はおばあちゃんとパパとママとが頑張ってくれてるけど。
色んなスイーツを考えて売りたいなって。」
「莉奈…そこまで考えてくれたの。」
莉奈ちゃんの目がキラキラしている。
ここに来たときのようなびくびくした怯えたような表情がすっかり消えた。
蛹が蝶になる、そんな瞬間を間近でみれた気がした。
「まずは私は学校へ行かせることに必死で…就職か大学進学かを選ぶ高校生の大事な時期に不登校なんて許せないと思ってたのよね。」
「…そうだね」
「でもね、カウンセラーや病院で相談してるうちに私の子育ての仕方が莉奈の邪魔をして無理させてたことに気づいて…
…莉奈も周りの子たちに合わせようと、
ずっと必死に自分を圧し殺してきた結果かな。精神的につぶれて不登校になったみたい…」
「そこに気づけた紗和ちゃんがえらいと思うよ」
「え?そうかな…」
「私もさ、子どもは親のいうこと指示することに従って当たり前とずっと思ってたのよ。
自分の親もそうだったし。でも上の子が反抗期にさしかかってきてさ。
私を睨む顔をみたときにね。
あ、この顔、見覚えある!私の反抗期のときの顔そのものだわって」
紗和ちゃんも自覚があるのかうんうんと深く頷く。
「不思議だけど子育てって連鎖していくのかな。いいことも悪いことも。」
ふふっと笑いあったときに、莉奈ちゃんが制服姿のまま、こちらのテーブルに向かってきた。
いまはランチタイムが終わり夕方からの開店までしばらく閉店状態なので、他のお客さまはいない。
「ママ、お待たせ。ちょっといま時間ある?」
「ん?何で?」
「えっとー。
恥ずかしいけど、カズくんに教わりながら初めてちゃんとケーキ作ってみたの。」
莉奈ちゃんの後ろからパンダ店長が苺のショートケーキを持ってきた。
ケーキも層になり、クリームも綺麗に塗られてきちんと売り物に見えるレベルだ。
「え!ウソ。これ…莉奈が作ったの?」
「うん。本当はママの好きなモンブランとかタルト作れたらと思ったけどさすがにレベル高いみたいで。」
「いや…十分だよ。嬉しい。いただきます」
紗和ちゃんが笑顔で一口ケーキをフォークですくい口に運ぶ。
私の分まで作ってくれたようでパンダ店長が持ってきてくれた。
生クリームがふわっとした舌触りで一瞬で口のなかで蕩けた。
濃すぎず甘すぎず…これは美味しい!
「すごいね!初めてでこのレベルって…」
「いえ、カズくんにもかなり手伝ってもらったので。」
「頑張ってるんだね、莉奈…ママ嬉しいよ。ありがとう。」
「ママ、今までたくさん迷惑かけたよね。本当にごめんなさい。でも、私ママがいてくれたから頑張れたよ。」
「莉奈…や、やだそんなことこんなところで…」
紗和ちゃんの目からぼろぼろと涙がこぼれた。
「感謝とごめんねと…それとお願いがあって。」
莉奈ちゃんが真っ直ぐに紗和ちゃんをみる。
「私…高校は辞めて、製菓学校に通いたい。」
「えっ…」
「この喫茶店でお手伝いして改めて思ったの。
勉強したいのはお菓子のこと。
できれば和菓子と洋菓子を融合させたスイーツを私、ずっと作りたかったの。」
「和菓子と洋菓子を…」
「うん、和洋折衷ていうのかな。
和菓子の古風な部分も大好きなんだけど。
白桜堂もできればだけど私が継ぎたい。いまはお店はおばあちゃんとパパとママとが頑張ってくれてるけど。
色んなスイーツを考えて売りたいなって。」
「莉奈…そこまで考えてくれたの。」
莉奈ちゃんの目がキラキラしている。
ここに来たときのようなびくびくした怯えたような表情がすっかり消えた。
蛹が蝶になる、そんな瞬間を間近でみれた気がした。
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