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4話
4-5 働きたい
しおりを挟む「…カズのお店に行きたいって、莉奈のほうから言い出して。迷惑かけるかもしれないけれど、この子をここで少し働かせてもらえない?」
「ええ!?」
パンダ店長が驚いてお姉さんと莉奈ちゃんを交互に見る。
私も思わず香音ちゃんと目を合わせてびっくりしてしまう。
「もちろん、お願いする立場だから。
お給料もいらないし、
なんならこちらから莉奈の分のお給料はアタシが払うし。
あ、遅くなったけどこれ!
皆さんで食べてくださいね。
うちは、実家が和菓子店なんですよ。」
和菓子の詰め合わせの大きな菓子折りを紙袋から出して、
私と香音ちゃんに渡してくれた。
白桜堂の和菓子だ!
てかパンダ店長の実家が和菓子屋なの!?
白桜堂ってかなり老舗で昔から大人気の和菓子屋さんなんですけど!!
「いやいや、姉さん。あのね…無茶言わないでよ…」
「無茶なのは最初からわかってるけど…こんなの頼めるのカズしかいないし。」
「姉さん、莉奈の気持ちを全然聞いていないじゃない。さっきから…
莉奈、本当にここで働きたいって思ってる?」
「…うん。カズくんのケーキ作ってるとこ…見たいの。」
小さな声だけどそこはハッキリと莉奈ちゃんが答えた。
「へー。ケーキに興味あるの?」
「…うん。」
「そうか…うーん。でも接客とかもあるんだよ。いまの莉奈にできる?」
「わからない…けどやりたいとは思うから。
お願い…します」
莉奈ちゃんは、今度はパンダ店長を正面から見てハッキリとした声でそう話した。
「うーん…わかりました!採用しましょう!見習いだから時給は低めだけど、いい?」
「…ありがとう」
「ありがとう、カズ!」
莉奈ちゃんと紗和さんの声が揃って答えた。
「じゃあ…あ、紹介するね。圭吾はもう知ってるもんね。マリリンさん、香音ちゃんちょっとこっち来てもらえる?」
カウンターでずっと話を聞いてしまってた私と香音ちゃんは少し気まずい気分になりながら、店長たちの前に向かう。
「パートの広瀬茉莉子です。よろしくね」
「藤田香音です。私も高校生!同じ年かな?よろしく!」
「櫻井莉奈です。
よ…よろしくお願いします」
まだちょっと怖そうにおどおどとしながらも声はきちんと出して挨拶をしてくれた莉奈ちゃん。
「あともう1人、大学生の高橋伊織くんて子がいるからね。
慣れるまではしばらく接客は難しいだろうし…皿洗いとバッシングをお願いしようかな。」
「バッシング…」
「お客様の食べ終わったお皿やグラスを下げることね。あとは調理補助をしてもらおうかな。」
「…わかりました。」
「なかなか、人とスムーズに話すのも難しい子ですけど…よろしくお願いいたします」
紗和さんもかしこまって私たちにまでお辞儀をする。
そして、店内を少し見学してから、2人は今日はとりあえず帰っていった…。
明日から早速、莉奈ちゃんはここで働くことになる。
果たしてどうなる??
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