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4話

4-2 姉と弟

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「あ、それと。暇になったらでいいので。カズをここに呼んでもらえます?」

「…は?」

カズ?って何だ?


そんな料理名あったっけ?と脳内をフル回転させた。



「も、申し訳ありません。カズ…とは何のことでしょうか?」

おずおずと私が聞き返すとお母さんはキョトンとした表情でこちらを見る。

「え?カズって誰かわからないの…?和樹かずきですけど。」

「和樹…さま?」

シェフの岩倉さんは確か下の名前は圭吾けいごだし。

するとお母さんのほうがハッと目を見開いて何かに気づいたようだ。

「あっ!ごめんなさい。この店の店長を呼んでください。」

「あ!はい。かしこまりました。」

オーダーを通しに厨房に入り、岩倉さんにオーダーを告げてから、パンダ店長に先ほどの話をした。

「え…?お母さんと娘さん…?何歳くらいの?」

パンダ店長が警戒したのかちょっと固まる。
確かに。
店長を呼んでくれなんてクレーム案件しかないように思うし。

「お母さんは私と同じくらいの40代、いくかいかないかの年齢ですね。娘さんは高校生くらい?かな。髪が長くて…」

「あ…!わ、わかりました。」

パンダ店長が察したように手を出して私の言葉を途中から止めた。
すると背後から鋭い声がかかる。

「カズ!和樹がここにいるんでしょ!」

見ると先ほどのお母さんが、カウンター越しの厨房の入り口からこちらを覗いていた。

「あ…すみません、こちらは厨房になりますので…」

私が制して席に戻そうとすると、パンダ店長がさっと間に入ってきた。

「お久しぶりです。」

「その声…カズ!?そのパンダの頭は何??ふざけてんの?」


「いや、あのね…これには理由が色々あるんです。姉さん、お願いだからちょっと落ち着いて。」


「「えっ!ね、姉さん!?」」

私と香音ちゃんが大きな声を思わずあげてしまい、驚きのあまりユニゾンになってしまった。

姉さん…パンダ店長にお姉さんいるんだ!
そういえばこの前、
香音ちゃんからパンダ店長にはお姉さんと妹さんと姪っ子さんもたくさんいるらしい!って情報を聞いた気がする。
私、最近本当に物忘れひどくて。
聞いたことすぐわすれるんだよなあ…っていや、いまはそこじゃない!


「いまはまだお店にお客様がほかにもいるから。
午前中の分が終われば一旦店を閉めて話をゆっくり聞くから。」

「…わかった。皆さん、お騒がせしてごめんなさい。あ、圭ちゃん久しぶり!ごめんね。うるさくして。」

「…ウス。」

お姉さん、岩倉さんとも知り合いなのか。
親しげに下の名前で呼び掛ける。

カズ…和樹ってパンダ店長の名前なのか~
当たり前だけど普通に人間の名前なんだな。
いつもパンダの頭してしパンダ店長としか呼んでないから。
名前を聞いたりするととても不思議な感じだ。

「すみません~」

ホールからお客様の声が聞こえて私と香音ちゃんはすぐに振り返りホールに戻る。
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