ぱんだ喫茶店へようこそ ~パンダ店長はいつもモフモフです~

和賀ミヲナ

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4話

4-1 母と娘、来店

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とある町外れに知る人ぞ知る、
ひっそりとあるレンガ造りのレトロな雰囲気のある喫茶店。

その名も「ぱんだ喫茶店」
今日もひっそりと開店しています。

こんにちは。
私は広瀬茉莉子ひろせまりこと申します。
皆からは可愛くマリリンと呼ばれてます。
ここのぱんだ喫茶店のパートをしています。
41歳の兼業主婦です。
小学五年生と中学二年生の男の子の母親でもあります。

旦那も頑張って働いてくれてはいるけれど、一般企業の会社員。
そこまで給料はよくない。

ここからが一番、子どもたちの学費がかかるので。
私もここの喫茶店と夜からはスーパーのレジもやってます。
しんどいよー!
正直、自分の時間なんて一切ないからストレスも溜まるけどね!

でもこんなバタバタするのもあと少しで、これも子育ての醍醐味でもあるのかなーと思ってるとこです。


「マリリンさん、二番テーブルにお冷やのおかわりをお願いします。」

高校生のアルバイトの藤田香音ふじたかのんちゃんが声をかけてきた。

香音ちゃんはいつも髪の毛をツインテールにして女子高生らしくて溌剌としてとても可愛らしい顔をしている。
我が子に女の子が1人は欲しかった私としては、娘がいたらこんな感じなのかなーと可愛らしい香音ちゃんと話す度にいつも楽しくて仕方がない。

もちろん、息子たちも可愛いんだけどね、2人とも反抗期に入ってきたのかな。

リビングでいつもだらだらとスマホやらゲームばかりする長男と次男を見る度に、
「いい加減に勉強しなさいよ!」
と声をかけるだけで睨んできたり。
それはそれは嫌そうな顔をして…
長男なんて
「うるせえ!ババア」
とまで言ってくる…腹が立つわ…
誰のお陰でここまで大きくなったと思うの。
小さい頃はずっと「ママ、ママ」って2人ともついてきて。
本当に本当に可愛かったのに。

そして誰がババアだ!私はまだ41歳だぞ!
まだまだ若いわ!人生80年と言われるこのご時世。
まだ折り返し地点にきたくらいなのよ。
生まれて10年そこそこのひよっこ共にババアなんて言われたくないわ!

…と心のなかでずっと反論している。
もちろん、何度か口論したけど不毛すぎる口論だしどんどん馬鹿馬鹿しくなってくるし。
反抗期も放っておけばいつかは終わると思うしね。

あ、また家庭の愚痴ばかりでてきてしまった。
すみません…
これも年齢のせいなのかな。
ババアではないけどオバサン化してきたなと最近は確かによくそう思える。


本日は土曜日のランチのピークが少し過ぎた14時頃。

今日もお客様は多かった。
バタバタと香音ちゃんと協力して時々パンダ店長にもホールを手伝ってもらいながら何とかランチのピーク終わりを迎えたところである。

カランカランとまたドアベルがなり女性が2人来店した。

「いらっしゃいませー」

「空いてるお席へどうぞ」


「どこの席がいい?」

「…ど…どこでもいい…。ママに任せる。」

お母さんと娘さんだろうか?

私と同年代かもう少し下くらいに見える、明るめのウェーブがかかる長い髪を後ろにまとめてスラッと手足が長く細いスタイルをした綺麗なお母さんと、
同じようにスタイルはよいけれど、黒い髪が伸び放題でちょっとボサボサで。
前髪で目が隠れて表情がよく見えない娘さん。
眼鏡もかけているがあそこまで髪がかかると邪魔ではないのだろうか。

高いヒールをカツカツと鳴らせてお母さんが奥の席に座るとあとに続く娘さんもオドオドとついていき席に座る。

お冷やとおしぼりをトレイに載せて私がオーダーを聞きに行く。

「いらっしゃいませ。ご注文はお決まりですか?」

「えっとね…アタシはドリアとサラダのセットにしようかな。コーヒーはブレンドで。莉奈りなあんたは?」

「えっと…あの…」

メニューをパラパラとまだ見て考えている様子の娘さん。

「あ、いいわもう。この子も同じので。いいでしょ?莉奈りな。」

「う…うん。」

メニューをまだ見ていたけれど、何か飲み込むかのように娘さんはお母さんの言葉に頷いてメニューを閉じて側に立て掛けた。


「あ、それと。暇になったらでいいので。カズをここに呼んでもらえます?」

「…は?」

カズ?って何だ?


そんな料理名があったっけな?と脳内をフル回転させた。
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