上 下
17 / 36
3話

3-6 怒濤の追加注文

しおりを挟む

「どうかされましたか?」

ショーケースのケーキを眺める三津谷さんに話しかけると、彼女はまたニコッと笑う。

「伊織くん、ケーキ全部食べてしまったので…まだまだ食べたいなあと思って♪」

「…え!?あのケーキ全部!?マジで!?」
お客様ということも忘れて思わず素に戻って言ってしまう。
三津谷さんのテーブルを見ると空のお皿が積み上がっていた。

うちは喫茶店で…お寿司屋さんじゃないんだけど。

「ここのケーキ本当に美味しくて。クリームも柔らかくて軽くてペロッと食べれちゃう。
この上段にあるケーキあとで全部ください。
いまあそこのお席のお客様たちで大変でしょうから、あとで構いませんので。」


「え!?上段のケーキを全部ですか!?」

ざっと数えても10個くらいはあるんだけど…マジか?


「はい。」

ケーキ7個ペロリと食べて更に10個追加とは…なんという食欲!

「か、かしこまりました。少々お待ちくださいませ。」

「はーい。よろしくお願いします」

厨房ではモーニングセット10個分を岩倉さんとパンダ店長があわただしく作っている。

ドリンクはだけは10人分、先にマリリンと作りゲートボール仲間のおじいちゃんおばあちゃんのテーブルに届ける。

そして、三津谷さんの追加オーダーを俺が伝えるとパンダ店長も岩倉さんもマリリンも驚いて一瞬動きが止まる。

「ええ!まだケーキ食べるの、あの女の子…すごいね!あの細い身体のどこに入ってくんだろ」

「だよね…俺も不思議」

少ししたらモーニングセット10人分も出来上がってきた。
相変わらず岩倉さんもパンダ店長も動きが早い。

マリリンと俺でテーブルに順番に運んでいく。

「伊織くん、ケーキも出すので手伝いお願いできますか?」

「あ、了解です」

パンダ店長も素早くショーケース上段のケーキを次々に皿にのせて行く。
とはいえ小さなテーブルにのるのはせいぜい3皿くらいであろうからとりあえず1皿に3つほどのケーキを隙間なくのせてなんとか3皿分に注文分のケーキをおさめることできた。

ケーキだらけのお皿…なかなか壮観だな。

「お待たせ致しました。」
三津谷さんのテーブルにケーキの皿をギリギリ置いていく。


真向かいにいたライターのおじさんがコーヒーをのみながらあんぐりと口を開けて三津谷さんをみている。

そうだよな、驚くよな…普通に。
か弱いゴスロリ女子がケーキ17個ペロリと食べようとしてるぞ!

「ありがとうございます!嬉しい~」

「ではご注文の品お揃いのようですので…」

3枚に膨れあがった伝票をテーブルに置こうとしたそのとき、また三津谷さんが口を開いた。


「あの…追加いいですか?」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

猫の喫茶店『ねこみや』

壬黎ハルキ
キャラ文芸
とあるアラサーのキャリアウーマンは、毎日の仕事で疲れ果てていた。 珍しく早く帰れたその日、ある住宅街の喫茶店を発見。 そこは、彼女と同い年くらいの青年が一人で仕切っていた。そしてそこには看板猫が存在していた。 猫の可愛さと青年の心優しさに癒される彼女は、店の常連になるつもりでいた。 やがて彼女は、一匹の白い子猫を保護する。 その子猫との出会いが、彼女の人生を大きく変えていくことになるのだった。 ※4話と5話は12/30に更新します。 ※6話以降は連日1話ずつ(毎朝8:00)更新していきます。 ※第4回キャラ文芸大賞にエントリーしました。よろしくお願いします<(_ _)>

【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜

なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」  静寂をかき消す、衛兵の報告。  瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。  コリウス王国の国王––レオン・コリウス。  彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。 「構わん」……と。  周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。  これは……彼が望んだ結末であるからだ。  しかし彼は知らない。  この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。  王妃セレリナ。  彼女に消えて欲しかったのは……  いったい誰か?    ◇◇◇  序盤はシリアスです。  楽しんでいただけるとうれしいです。    

天之琉華譚 唐紅のザンカ

ナクアル
キャラ文芸
 由緒正しい四神家の出身でありながら、落ちこぼれである天笠弥咲。 道楽でやっている古物商店の店先で倒れていた浪人から一宿一飯のお礼だと“曰く付きの古書”を押し付けられる。 しかしそれを機に周辺で不審死が相次ぎ、天笠弥咲は知らぬ存ぜぬを決め込んでいたが、不思議な出来事により自身の大切な妹が拷問を受けていると聞き殺人犯を捜索し始める。 その矢先、偶然出くわした殺人現場で極彩色の着物を身に着け、唐紅色の髪をした天女が吐き捨てる。「お前のその瞳は凄く汚い色だな?」そんな失礼極まりない第一声が天笠弥咲と奴隷少女ザンカの出会いだった。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします

希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。 国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。 隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。 「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

まほろば荘の大家さん

石田空
キャラ文芸
三葉はぎっくり腰で入院した祖母に替わって、祖母の経営するアパートまほろば荘の大家に臨時で就任した。しかしそこはのっぺらぼうに天狗、お菊さんに山神様が住む、ちょっと(かなり?)変わったアパートだった。同級生の雷神の先祖返りと一緒に、そこで巻き起こる騒動に右往左往する。「拝啓 おばあちゃん。アパート経営ってこんなに大変なものだったんですか?」今日も三葉は、賑やかなアパートの住民たちが巻き起こす騒動に四苦八苦する。

目が覚めたら夫と子供がいました

青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。 1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。 「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」 「…あなた誰?」 16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。 シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。 そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。 なろう様でも同時掲載しています。

「お節介鬼神とタヌキ娘のほっこり喫茶店~お疲れ心にお茶を一杯~」

GOM
キャラ文芸
  ここは四国のど真ん中、お大師様の力に守られた地。  そこに住まう、お節介焼きなあやかし達と人々の物語。  GOMがお送りします地元ファンタジー物語。  アルファポリス初登場です。 イラスト:鷲羽さん  

処理中です...