ぱんだ喫茶店へようこそ ～パンダ店長はいつもモフモフです～

2話

2-2 コワモテの店員と美少年のアルバイト

「藤田さん、悪いけど追加でこのタッパーも洗っておいてくれる？」

厨房から渋くて低いイケボな声で名前を呼ばれた。

「はいはーい。」
ビーフシチューなどのこの店の人気メニューを作るちょっとコワモテの男性。
彼の名前は岩倉圭吾いわくらけいごさん。

彼も店員兼この店のシェフである。

岩倉さんの作る料理はどれも美味しすぎる！
バイトたちの人気No.1は断トツでビーフシチュー！
私もビーフシチューも大好きだけど、岩倉さんの作るとろとろ卵のオムライスもたまらなく美味しくて好き。

まかないで食べれた日は1日幸せな気分に浸れるくらい、ホントマジで美味い！

岩倉さんはパンダ店長と昔からのお友達らしい。
岩倉さんはパンダ店長を「パンダ」と呼ぶのでパンダ店長の本名は誰も知らない…
いや、聞けば教えてくれるのかも、だけど。
バイトたちの中でもなぜかそこは暗黙の了解になってる。

顔を着ぐるみで隠したパンダ店長とコワモテシェフ…
何ともわけありな匂いは正直プンプンする。
でも多分、彼らは犯罪者とかどこかの刑務所を脱獄してきたから顔を隠してる…とかではないと思う。
うん、多分だけどね。

色々考えながらタッパーを洗っていると、厨房にドタバタと派手な音を鳴らしながらアルバイトがもう1人入ってきた。

「すみません！電車に乗り遅れて遅刻しました～！」

大きなネコ目のすごい美少女…ではなく美少年の高橋伊織たかはしいおりくんだ。

「伊織くん、遅刻多いんじゃない？気をつけなよ～」

「わ～かってるよ！香音。今後は気をつけますって！」

少し拗ねたように私を見る。
大学生の伊織くんは私より3歳も年上なのに、男の子とは思えないほど肌もきめ細かくて色白で綺麗で思わず見惚れる。
ひげも全然見えなくてツルツル！

伊織くんが男の子で良かった。
女の子ならこんな可愛い子すぐにスカウトされて芸能界デビューだよ。
アイドル志望の私は嫉妬だらけで、隣に立って同じようにアルバイトなんてしていられないよ。

なので、伊織くんに恋愛感情みたいなのは正直わかない。
だって可愛すぎるんだもん。
身長も170センチギリギリあるかどうかな感じだし。
私は高身長の、男っぽいE○ILE系イケメンが大好きなので。

伊織くんも白いシャツの袖を肘までまくり上げて、厨房の洗い場にたくさんたまった汚れたタッパーや皿の山を一緒に洗い始めた。

「あー徹夜で勉強したのが間違ってたわ。」

まだ眠たそうにあくびをしている伊織くん。

「ほー。一応、真面目に大学生やってるのね。」

「真面目に決まってんだろ～高校生はいいよな毎日お気楽で。」

「いやいや、その言葉はソックリ返すよ。高校生は大学生ほど遊んでないわよ。」


雑談をしながらも、
とりあえずタッパーをすべて洗い終わり、時計を見るとそろそろ開店時間の11時だ。

ホールに出て、アルバイトはお客様が来るまで待機する。

今日は私と伊織くんがホール担当。
たまに多忙なときはパンダ店長も接客をする。


11時ジャスト、ぱんだ喫茶開店。