ぱんだ喫茶店へようこそ ~パンダ店長はいつもモフモフです~

和賀ミヲナ

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1話

1-5 もう一度、別れ話。そして。

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パンダ店長や伊織くんの前で泣いてしまって
はずかしかったけど、もうすでに醜態は晒しまくってるので平気になってきた。
精神的に強くなってきたな、私も。

彰との別れ話も聞いてもらえたし、
こんな美味しいビーフシチューと
あまおう苺モンブランやコーヒーまでサービスしてもらえるなんて。

ここに来れて良かったな。
あのまま家に帰ってたら、
まだまだ彰への怨み節を延々と周りの友人に垂れ流したかもしれない。
そんな自分の姿を思い浮かべたらちょっとゾッとする。


「ごちそうさまでした。
ビーフシチューも苺のモンブランもとっても美味しかったです。
またお店に来たいです。
ありがとうございました。」

お会計をしてパンダ店長と伊織くんにお礼を伝える。

「ありがとうございました。
よろしければ、ぜひまたお越しくださいませ。」

パンダ店長が今度はスマートにドアを開けて私を送り出してくれた。

外に出たら雪がちらほらと降っている。
夜になり外気温も一気に下がったのか、
吐いた息もすぐに白くなる。

「さっ…寒いっ…!!」

けれど心は正反対に何だかポカポカと暖かくなってきた。
とても不思議な気持ちに包まれる。

いま、彰の顔を思い出しても腹もたたないし、
自分でもビックリするくらい気持ちが凪いで落ち着いてきた。


翌日、冷静になれた私は彰と電話できちんと別れ話をもう一度仕切り直した。


本当は会うべきかもしれないけれど、またお金を持ってこられても困るしね…

「優菜、怒ってるよね?」
恐る恐る彰が聞いてくる。

「ううん、怒ってはないよ。
私のせいもあるだろうけど彰の心が私から離れたのならその時に話して欲しかったかな…」

「そうだね、その通りだと思う…
俺が優菜を幸せにしてあげられなくて…ごめ…」
段々と彰の声が涙声になっていく。

「もういいよ、私も悪かったから。
楽しい思い出をたくさんありがとう、
今度こそ、だね。さよなら彰。」

つられて泣きそうになるのを何とかこらえてそう返事をした。


「…うん、ありがとう優菜。」

電話を切る。


ああーついに別れた。
さよなら私の五年間。
綺麗に別れられたよね?
100点満点の女よね?


うん、私は頑張った。
良かった。
これで次の恋愛にも後腐れなく進めるはずだ。

また一から頑張ろうよ、私。



「…あれ?」

後日、またぱんだ喫茶店に行こうと思いこの前と同じ道を歩いたのだが、なぜかお店が見つからない。

道、間違えたかな?
あの時、混乱してたし確かに道はハッキリとは覚えてないかも。

「…まあ、いっか」
なんとなくだけど、自分に何か変化があるときにフッと目の前にまた現れる。

そんな気がする。

不思議なお店…ぱんだ喫茶店。



第一話 完
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