上手に生きたい。

平亜美

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高校時代①

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私立高校への入学が決まって卒業が終わった後。

私はバイトの面接に行ったり、友達と遊んだり充実していた。

そんな中で不良時代の女の先輩に誘われる。

「久しぶりに遊ばない?」


この先輩は見た目こそ不良で、周りも怖い友達が多かったが、とても優しくて面倒見の良い先輩だった。

暇だった私は呼ばれた場所へ行った。

そこにはその先輩と美奈(みな)先輩という他校の1個上の先輩、そして美奈先輩の彼氏と、初めましての奥川 輝明(おくがわ てるあき)という男の先輩がいた。

美奈先輩はとても美人で優しい先輩だがキレると止められなくて怖いと有名だった。
家も筋金入りのヤンキーで、姉はレディースの総長、お母さんも元レディースという家系だった。

そしてこの奥川 輝明、通称“てる”に私の人生はまた狂わされる。


てるはいわゆるホストのような見た目の男の人で、とても軽いノリの人だった。

私を呼んだ女の先輩は、てるに夢中らしく、凄くベタベタしていたのを覚えている。

凄いアウェイなとこに呼ばれたな、と思ったが人付き合いの良かった私はてるとも連絡先を交換してこの後このグループでよく遊ぶことになる。


そして女の先輩とてると私、3人でくっちゃべってた時だった。


「亜美って彼氏作らないの?」

てるが私に聞いてきた。

「あー、好きな人いないんで」

そっけなく返すがてるは続ける。

「じゃあ俺と付き合ってみない?」



突然の告白に固まる私。
でもそれ以上に横にいた女の先輩が怒っていたのを覚えている。


「亜美とてるは似合わないよ!私のがてるの彼女に向いてる!」

先輩は必死で止めていた。
好きなことはバレバレだったから私は先輩を応援していたので私は断ることにする。


そこからだった。
てるは何かと理由をつけて私を誘うのだ。
他の女の先輩が呼んでるからと言われ行くと、てると二人だったり、てるの友達の男の先輩ばかりだったりした。

最初はそれが嫌だったが

「絶対大切にするから」
「高校普通にちゃんと行けるように応援する!」

そんなてるに心が動いて行ったのも事実だった。


見た目が地元の中ではかっこいい方だったのもあって、私も少しずつてるのことを好きになった。

だが私のダメンズ人生はここからスタートすることになる。


私はてると付き合うことになったが、女の先輩とも変わらず遊んでいた。
てると付き合ったことは気に食わないみたいだが、他の男を見つけたらしい。

てるは家がなかった。

友達の家の倉庫に住んでいたのを覚えている。
家出したのかは知らない。

そしててるはバイトもしてなかったし高校にも行ってなかった。

付き合ってすぐに携帯を解約していた。

その頃、ウィルコムと携帯の2台持ちが流行っていて、私は自分で2台持っていた。

そしてそのウィルコムを貸してくれと言われ、連絡をとるためにてるに貸していた。


私は高校生になっていた。
都内の学校に普通に通っていた。

でも下校の時間になると、てるが仲間を連れて校門の前に来るのだ。

あきらかに不良っぽい集団、そしてそこと合流して帰宅する私。

また先生から目をつけられるのも早かった。

校則は厳しい学校だったがギャルっぽい子達が何人かいて、私はその女の子達と学校ではつるんでいた。


高校では部活に入ろうかな?と思い、いくつか見学をするが先輩達に門前払いされてしまう。

私はまた学校の問題児のポジションにいたのだ。



そして夏休みに入るまだ前、事件が起きる。



てるは色んなとこで危ないことをしているようだった。
バイクを盗んで売ったり、怖い先輩からお金を借りて逃げたりしていたようだ。
そして何があったかは分からないが地元の暴走族に目をつけられることになる。

その暴走族はとても有名で、気に食わない奴がいたら殴る蹴るは当たり前、ピアスを引きちぎったとかナイフを刺したとかまで聞いていた。

正直、学校で少しグレてたくらいの私とは違って本当の不良グループだ。

私はここと関わりたくなかった。



「亜美、助けて!殺される」

夜中にてるから電話が来る。
急いでてるの周りに連絡して、みんなで朝までてるを探すがその日は見つからなかった。
隠れていたらしい。

また別の日も、てるとの待ち合わせ場所に行くと、どうやって情報を掴んだのか、そこには暴走族の人達がいた。

暴走族の人達に追っかけられて、私とてるは必死で原付バイクで逃げた。


正直てるといるのはとても疲れた。
何も悪いことしていないのに、怖い人たちに追いかけられ、携帯代を代わりに支払い、朝まで付き合わされて学校へ行ってもフラフラということが続いた。

学校には前のように私を連れ出してくれる友達もいない、相談出来る子もいない、バイトもしなくてはいけない、夜中はてるに会う、どんどん私は学校へ行くことが面倒に思うようになっていた。


ある日てるとまた逃げている時に私は足を怪我した。
学校へ行くが、上履きが履けない。

なので片方の上履きの後ろを踏んで履いていた。


そこに話したこともない先輩が話しかけてくる。


「それ、かっこいいと思ってんの?」

何のことだ?と思って驚いているとその人は続けて

「上履き。ちゃんと履けないんだね。校門にも変なの連れてくるの君だよね?もう学校来なくていいよ」

私はこの時悲しいというより怒りになった。かっこいいと思って踏みつけてるわけじゃない、校門にだって迎えに来るなと言ってるのにてるが来るのだ。

「足、怪我してるんで」

私が言うと先輩はとても冷たい目で

「そーゆう嘘はいいよ」

と言って行ってしまった。



なんで話したことも名前も知らない先輩にいきなり言われなくてはいけないのか。
私は睡眠不足もあり、とてもイライラして、このまま帰ってしまおうかと思った。

でも私は知っていた、一度休んだり遅刻したりバックれたりしたらまた不良になってしまうことを。

いや、この時点で普通の子から見たら不良だったのかもしれない。


イライラした私は保健室で寝かせてもらおうと思い、向かった。


「お腹痛いんで寝かせてください」


そう言う私を見た保健室の先生は私を軽蔑した目で見る。
そしてこう言った。

「学校は寝に来るとこじゃない。仮病で寝かせてあげるほど私甘くないよ。あなたのことは知ってるよ。そんなに学校がだるいなら他の生徒の迷惑になるから来なくてよろしい」


私はここで疲れてしまう。
なんで話したこともない人に、二人連続で勝手に知られていて、怪我してるのに嘘だとか、学校に来なくていいと言われなきゃいけないのだ。

私は睡眠時間が無かったけど授業は真面目に受けていた。
たまにほぼ失神で寝てしまうこともあったが可愛いものだった。
テストも頑張っていた。
遅刻も早退もしたこともない。

だけど私を見てくれる人はいなかった。
私がどうであろうと私のつるんでいる人達や彼氏で判断されてしまうのだ。

急に怒りが湧いてきた。
私は初めて無断で早退をした。

早く帰ったしバイトも行きたくないし、てると遊ぼう。

そう思い、てるに連絡するがてるは出ない。
そしてそこからてると連絡が取れなくなる。



私は変わらずそれでも学校に通っていた。
もう完全に浮いていたが、全く気にしていなかった。

休み時間にトイレに行った時に学年のギャルっぽい子達に言われる。

「最近彼氏来なくない?別れたの?」

あからさまに馬鹿にしているようだった。
数人でニヤニヤしながら問い詰めてくる。

「分かった、捨てられたんでしょ!」
「貢いでるって噂あったもんね」


ああ、どいつもこいつも。
何にも知らないくせに好き勝手。

気づいた時には私はその女の髪の毛を引っ張っていた。

「あ!?パギャル(半端なギャル)が何口聞いてんだよ!?お前ブスだから彼氏いねえもんな!可哀想だなあ!?おい、謝れよ!」

初めて人の容姿を馬鹿にしたと思う。
でももう一度吐いたら止まらなかったのだ。
女の子達に止められてトイレは大騒ぎになった。



「自宅待機」


そしてまた先生に私は言われる。
ああ、そうか私は問題児になったのか。

そして家でまた過ごすことになった。

そこにお母さんからもう一つ告げられる。



なんとてるは捕まって鑑別所に行ったとのことだ。
証拠品として私のウィルコムを没収しているという。
お母さんに連絡があったそうだ。

私はウィルコムを解約することにした。


負の連鎖は続けて起こるもので、中学の不良の後輩から連絡が来る。

「亜美ちゃんいきなりすいません、さやか先輩が亜美ちゃん連れてこないと殺すぞって言ってて…来てくれませんか?」


さやかとは私と同い年の地元の有名なヤンキーだった。
中学生の時から水商売しているだの薬をやっているだの噂が耐えない子だ。
そして、てるを追っかけ回していた暴走族のうちの一人の彼女である。

不良は不良と集まるが、てるを紹介された時にいた美奈先輩、暴走族、さやか。
ここら辺は地元の不良でもあまり関わりたくないと言われるほどのヤンキーだった。

簡単に言えば何するか分からない人達なのだ。
少年院なんか当たり前で、人を殺したという噂まである。


ああ、てるが捕まったからその彼女に落とし前つけてもらおうってことか。


学校も行けないし、家にいてもあいつらは家まで来るだろう。
親にも何するか分かったもんじゃない。

私は少しでも強く見せるために髪を金髪にした。
そしていざという時逃げれるようにジャージにスニーカー、髪の毛を掴まれないようにお団子にして指定された場所へ行くことになった。


ああ、絶対ボコボコにされるな。


そう思いながら着くと、そこにはさやかが一人でいた。
身長が165cmくらいあり、ブリーチだけした如何にもヤンキーな髪色、そしてスウェットにサンダル、見た目だけで正直怖かった。

さやかは吸っていたタバコを消すと

「あんたが亜美?ふーん」

と私を睨みつけた。
全く相手に媚びない話し方、私と仲良くする気はやはり無いようだ。

「こっち来て」

さやかはスタスタと歩き始める。
そして路地裏の駐車場に案内されると、そこには暴走族の人達が何十人といた。
バイクも何十台もあった。

私はこの時、心臓が本当に止まるかと思った。
今からされることを考えて、ひたすらバクバクしていた。

だが暴走族の人達は私をチラ見するとそのまま雑談を続けた。

私が動揺と緊張でどうすればいいか分からなくなっていると

「こっちに座れば?」

と、さやかが私を呼ぶ。

言われるがままそこに座る私。

さやかはさっきまでの冷たい口調とは変わって彼氏と思われる人にベタベタしていた。


その横に、とても綺麗な顔の男の人がいた。
ニッカを着ていて襟足は金色、いかにもなヤンキーだったが色が白くて鼻はスっとしていて、いわゆる美形だった。

その人は大人しい性格らしく、周りがバカ騒ぎしてるのを静かに見ていた。


「なに?」

いきなり話しかけられた。
私がずっと見ていたからだ。

「あ、いや何でも…」


私は怖くて俯いた。

何やら暴走族達はバイクで走りに行くらしい。
みんなぞろぞろとバイクに乗って行った。

私はどうすれば…ここにいればいいのかな、帰っていいかな…
どうしようと私は動けなくて固まっていた。


「番号教えて」

さやかが突然言ってくる。
え、なんで?もう出来れば関わりたくない…

「早く」

拒否できなかった。
ちょっと不良になったくらいの私では本物のヤンキーに逆らうことはできなかった。


番号を教えるとさやかは彼氏とバイクで行ってしまった。
そしてぞろぞろと暴走族達が消えていく。

だがさっきの美形のヤンキーは私の横でタバコを吸っている。


「あの…行かないんですか?」

私が恐る恐る聞くとバイクに向かって行って私にヘルメットを渡した。

「送るよ」


いきなりのことに頭が混乱した。
え、私集団リンチとかされるんじゃなかったの?
何のために呼ばれたの?
帰っていいの?

混乱していたが私は大人しくその人のバイクの後ろに乗る。


家に着くとお礼を言った。
そして家に入ろうとするところで呼び止められた。

「待って、やっぱ少し話せない?」


断れる訳もなく、私は団地の小さな公園でその人と話しをすることにした。

その人は私の1個上、名前は木下 勇(きのした ゆう)と言うらしい。
第一印象は、怖い、クール、というイメージだった。

「あの、なんで私呼ばれたんです?」

恐る恐る聞くとその人は物静かな声で答えた。

「亜美ちゃんって、てるの彼女でしょ?」

ああ、やっぱりてるのことか…と思った。

「あいつ俺らのバイク盗んだから追っかけてんだけど逃げ足早いからなかなか捕まんなくて。家も無いらしいから分かんなくて。」

「てるなら今捕まってますよ」

私が答えると勇は続けた

「うん、知ってる。てるを追っかけてる時に何回か亜美ちゃん見て」

「はい」

その後、勇は少し黙った後に照れくさそうに呟いた。



「一目惚れ…したんだよね」



一目惚れ?????????
いきなりのことで頭が混乱する。

「私にですか?」

「うん…可愛いなって…」


勇はクールでは無くてシャイだったのだ。
話を聞くと、一目惚れをしてずっと話しかけたかったがいつも逃げられると、てるが捕まったからチャンスだと思ったけど自分からだと怖がられるからさやかに頼んだとの事だった。

私は笑ってしまった。

勝手にイメージ作られて嫌な思いをしていたのに、私も勝手に怖がっていたのだ。

私は明け方まで勇と公園で話した。
色んなことを。
お互い、人と付き合ったことはあるがキス以上した事がなかったり、同じ音楽が好きだったり、本当に色んなことを。

勇はとても優しい子だった。
学校を辞めて建築のバイトをしているらしい。
今日もこのまま仕事へ行くらしい。


私は勇と連絡先を交換してそれから毎日メールをするようになる。
暇だと伝えるとすぐに飛んできてくれるし、いつも飲み物を買ってきてくれた。
女の子用のヘルメットが無かったからと新しい物を買ってきてくれた。

決して無理やり何かをするようなことは無く、私のペースに合わせてくれた。

私は生まれて初めて異性に居心地がいいと思ってしまった。


そして自宅待機が取れて学校へ行くことになる。
が、私の髪色は金髪のままだった。



居場所が無い学校より、居心地の良い地元を選んでしまったのだ。

廊下にテストの結果が張り出されていた。
なんと私は学年三位だった。


テストの結果を見た担任の先生には止められるが、私は自主退学を選ぶことになる。



暴走族の人達は最初は怖かったけどみんな私には優しかった。
誰も私を否定しない。

私がワガママを言っても、勇は可愛い可愛いと何でも聞いてくれた。

そうして私はてると別れてないのに勇と付き合うことになる。


私と勇が付き合ったと聞いたら暴走族のみんながお祝いをした。

「ずっと一目惚れしたって言ってたもんなぁ!」
「叶って良かったなぁ!」

そして怖かったさやかも大喜びして、態度が180度変わった。

「くっついてくれて嬉しい!これから私の彼氏と4人で遊ぼうね!」


そして私はこの暴走族達と、さやかと毎日つるむようになり、家へはどんどん帰らなくなった。



そして、てるが出所してくる事になる。
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