11 / 12
11
しおりを挟む
店の前からタクシーに乗って、佑都の部屋に着いた頃には、佑都の酔いは少し覚めているようだった。
部屋着に着替えてベッドの中で寄り添った。
「ずっと待ってたの。佑君からのプロポーズ。いつまで待ってもなにも言ってくれないし、もうその気がないのかと思ってた」
「お前よく言うよ。俺が一緒に住まねえかって言った時、軽くあしらったくせに」
佑都が不服そうな表情を浮かべている。
「だって今から同棲なんてしたら、絶対婚期逃しちゃうと思ったんだもん」
「……俺は、プロポーズのつもりで言ったんだ」
「え?」
「幸せな時間を過ごしてからお前と別れる時、いつもすげえ寂しくなるんだ。このままずっと一緒にいれたらいいのにって……まあそんなこと素面では言えねえけど」
そんなことをさらりと言ってしまう佑都は、やはりまだかなり酔っているようだ。
「今日みたいな日は特にな……」
真理の瞳に再び涙が溢れた。
どうして気付けなかったのだろう。佑都も同じ気持ちだということに。
こんなにも大切にしてもらっていたのに、なにを怖がっていたのだろう。
「佑君……これからは、もっと一緒にいたい」
真理はそう言ってから、別れ話を切り出そうなんて考えてしまったことを、心の中で詫びた。
「もっと、ってなんだよ。ずっと、だろ。結婚してくれんじゃねえの?」
「……するよ」
佑都は真理を抱き寄せ、安堵したように深い溜め息を吐いた。
時計の針が、零時に近付く。
しばらく抱き合い、ふと静かになったことに気付くと、佑都は寝息をたてていた。その優しいリズムを微睡みの中で聞いているうちに、真理も眠りに落ちた。
部屋着に着替えてベッドの中で寄り添った。
「ずっと待ってたの。佑君からのプロポーズ。いつまで待ってもなにも言ってくれないし、もうその気がないのかと思ってた」
「お前よく言うよ。俺が一緒に住まねえかって言った時、軽くあしらったくせに」
佑都が不服そうな表情を浮かべている。
「だって今から同棲なんてしたら、絶対婚期逃しちゃうと思ったんだもん」
「……俺は、プロポーズのつもりで言ったんだ」
「え?」
「幸せな時間を過ごしてからお前と別れる時、いつもすげえ寂しくなるんだ。このままずっと一緒にいれたらいいのにって……まあそんなこと素面では言えねえけど」
そんなことをさらりと言ってしまう佑都は、やはりまだかなり酔っているようだ。
「今日みたいな日は特にな……」
真理の瞳に再び涙が溢れた。
どうして気付けなかったのだろう。佑都も同じ気持ちだということに。
こんなにも大切にしてもらっていたのに、なにを怖がっていたのだろう。
「佑君……これからは、もっと一緒にいたい」
真理はそう言ってから、別れ話を切り出そうなんて考えてしまったことを、心の中で詫びた。
「もっと、ってなんだよ。ずっと、だろ。結婚してくれんじゃねえの?」
「……するよ」
佑都は真理を抱き寄せ、安堵したように深い溜め息を吐いた。
時計の針が、零時に近付く。
しばらく抱き合い、ふと静かになったことに気付くと、佑都は寝息をたてていた。その優しいリズムを微睡みの中で聞いているうちに、真理も眠りに落ちた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
愛のかたち
凛子
恋愛
プライドが邪魔をして素直になれない夫(白藤翔)。しかし夫の気持ちはちゃんと妻(彩華)に伝わっていた。そんな夫婦に訪れた突然の別れ。
ある人物の粋な計らいによって再会を果たした二人は……
情けない男の不器用な愛。
愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。
石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。
ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。
それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。
愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。
あなたには、この程度のこと、だったのかもしれませんが。
ふまさ
恋愛
楽しみにしていた、パーティー。けれどその場は、信じられないほどに凍り付いていた。
でも。
愉快そうに声を上げて笑う者が、一人、いた。
想い出は珈琲の薫りとともに
玻璃美月
恋愛
第7回ほっこり・じんわり大賞 奨励賞をいただきました。応援くださり、ありがとうございました。
――珈琲が織りなす、家族の物語
バリスタとして働く桝田亜夜[ますだあや・25歳]は、短期留学していたローマのバルで、途方に暮れている二人の日本人男性に出会った。
ほんの少し手助けするつもりが、彼らから思いがけない頼み事をされる。それは、上司の婚約者になること。
亜夜は断りきれず、その上司だという穂積薫[ほづみかおる・33歳]に引き合わされると、数日間だけ薫の婚約者のふりをすることになった。それが終わりを迎えたとき、二人の間には情熱の火が灯っていた。
旅先の思い出として終わるはずだった関係は、二人を思いも寄らぬ運命の渦に巻き込んでいた。
愛しき夫は、男装の姫君と恋仲らしい。
星空 金平糖
恋愛
シエラは、政略結婚で夫婦となった公爵──グレイのことを深く愛していた。
グレイは優しく、とても親しみやすい人柄でその甘いルックスから、結婚してからも数多の女性達と浮名を流していた。
それでもシエラは、グレイが囁いてくれる「私が愛しているのは、あなただけだよ」その言葉を信じ、彼と夫婦であれることに幸福を感じていた。
しかし。ある日。
シエラは、グレイが美貌の少年と親密な様子で、王宮の庭を散策している場面を目撃してしまう。当初はどこかの令息に王宮案内をしているだけだと考えていたシエラだったが、実はその少年が王女─ディアナであると判明する。
聞くところによるとディアナとグレイは昔から想い会っていた。
ディアナはグレイが結婚してからも、健気に男装までしてグレイに会いに来ては逢瀬を重ねているという。
──……私は、ただの邪魔者だったの?
衝撃を受けるシエラは「これ以上、グレイとはいられない」と絶望する……。
不遇な王妃は国王の愛を望まない
ゆきむらさり
恋愛
稚拙ながらも投稿初日(11/21)から📝HOTランキングに入れて頂き、本当にありがとうございます🤗 今回初めてHOTランキングの5位(11/23)を頂き感無量です🥲 そうは言いつつも間違ってランキング入りしてしまった感が否めないのも確かです💦 それでも目に留めてくれた読者様には感謝致します✨
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。
※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる