ビールで乾杯

凛子

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「もう全部来たんじゃねえの? 注文したもん」
「ああ……うん、そうだね」
「じゃあこっち来いよ」
「え?」

 真理が頬を紅潮させると、「なに乙女みてえな顔してんだよ」と茶化しながら、佑都は真理を傍に呼び寄せた。

「今日お前どうした? なんかあんだろ」

 佑都が真理の瞳の奥を覗き込む。
 全く気付いていないと思っていた佑都は、薄々感付いていたようだが、さすがにこのタイミングでは、なんと言えばいいのかわからない。

「えっ、な、なに? なにもないよ」

 動揺している真理の様子を見ていた佑都が、ふっと笑った。

「お前さぁ、さっきからずっと……眉毛半分ないけど」
「えぇっ!? ちょっ、やだぁ、言ってよ! 映画館で佑君が頭撫で回すからじゃん」

 真理が慌てて化粧ポーチを取ろうと腰を上げると、佑都は真理の腕を掴んでを引き寄せた。

「今更なに恥ずかしがってんだよ。お前のどんな姿見たって、嫌いになんかなんねえよ」

 今度は真理の髪を撫で頬に触れ、唇を寄せた。


「真理、ビール頼んで」
「あ、うん」

 インターホンでビールを二つ注文すると、真理は元の席に戻った。

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