6 / 12
6
しおりを挟む
食事を終え、映画館に向かう。
映画館に二人で行くことはあまりなかった。好きなジャンルが違うからだ。佑都はアクション映画や推理ものを好む。それは個人の自由で、たとえ恋人同士であっても互いに共感を求めることもしないし、押し付けもしない。それでいい、と真理は思う。
だが、今日は誕生日ということで、「真理が観たいものにしよう」と佑都は言った。勿論ラブロマンスだ。
倦怠期を乗り越えることが出来ずに別れたカップルが再会し、恋の炎が再燃するというストーリーで、映画のラストは想像できた。勿論それをわかっていて、今日の日に合わせて真理が選んだものだった。
場内が暗くなると同時に、ふと佑都との初デートの記憶が甦り、真理は胸を高鳴らせた。
佑都と初めて手を繋いだのも、キスをしたのも、映画館だったのだ。
背もたれがしっくりこないのか、そわそわして何度も座り直す佑都に目を向けると、佑都の右手が肘置きを越えて、真理の左手にふわりと被さった。まるで、今自分が考えていたことを見透かされたようで真理の頬が熱くなる。
佑都の右手は真理の手を返し、真理の指にしっかりと絡まった。そして顔を近付け、真理の額に優しくキスを落とす。
それから映画が終わるまでの二時間半、佑都と何度も唇を重ねた。
「こういうのあんま観ねえけど、たまにはいいな」
「付き合ってくれてありがとう」
「また映画デートしような」
映画館を出た佑都はそう言うと、ちらっと視線を合わせ、照れたように笑った。
「たまにはいい」と言ったのが、映画の内容だけではないような気がしたのは、真理が前半部分とラストシーンしか覚えていないからだ。
きっと、佑都もそうに違いない。
映画はやはり、ハッピーエンドだった。幸せそうに微笑む二人の結婚式シーンで締め括られた。
このまま映画のラストと同じように、筋書き通りに進めばいいのに、と思わず繋いだ手に力が入ってしまう。
「爪立てんな。猫みたいに」
ふっと笑った佑都に茶化され、必死過ぎる自分に苦笑した。
映画館に二人で行くことはあまりなかった。好きなジャンルが違うからだ。佑都はアクション映画や推理ものを好む。それは個人の自由で、たとえ恋人同士であっても互いに共感を求めることもしないし、押し付けもしない。それでいい、と真理は思う。
だが、今日は誕生日ということで、「真理が観たいものにしよう」と佑都は言った。勿論ラブロマンスだ。
倦怠期を乗り越えることが出来ずに別れたカップルが再会し、恋の炎が再燃するというストーリーで、映画のラストは想像できた。勿論それをわかっていて、今日の日に合わせて真理が選んだものだった。
場内が暗くなると同時に、ふと佑都との初デートの記憶が甦り、真理は胸を高鳴らせた。
佑都と初めて手を繋いだのも、キスをしたのも、映画館だったのだ。
背もたれがしっくりこないのか、そわそわして何度も座り直す佑都に目を向けると、佑都の右手が肘置きを越えて、真理の左手にふわりと被さった。まるで、今自分が考えていたことを見透かされたようで真理の頬が熱くなる。
佑都の右手は真理の手を返し、真理の指にしっかりと絡まった。そして顔を近付け、真理の額に優しくキスを落とす。
それから映画が終わるまでの二時間半、佑都と何度も唇を重ねた。
「こういうのあんま観ねえけど、たまにはいいな」
「付き合ってくれてありがとう」
「また映画デートしような」
映画館を出た佑都はそう言うと、ちらっと視線を合わせ、照れたように笑った。
「たまにはいい」と言ったのが、映画の内容だけではないような気がしたのは、真理が前半部分とラストシーンしか覚えていないからだ。
きっと、佑都もそうに違いない。
映画はやはり、ハッピーエンドだった。幸せそうに微笑む二人の結婚式シーンで締め括られた。
このまま映画のラストと同じように、筋書き通りに進めばいいのに、と思わず繋いだ手に力が入ってしまう。
「爪立てんな。猫みたいに」
ふっと笑った佑都に茶化され、必死過ぎる自分に苦笑した。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる
Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした
ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。
でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。
彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
強引な初彼と10年ぶりの再会
矢簑芽衣
恋愛
葛城ほのかは、高校生の時に初めて付き合った彼氏・高坂玲からキスをされて逃げ出した過去がある。高坂とはそれっきりになってしまい、以来誰とも付き合うことなくほのかは26歳になっていた。そんなある日、ほのかの職場に高坂がやって来る。10年ぶりに再会する2人。高坂はほのかを翻弄していく……。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
推活♡指南〜秘密持ちVtuberはスパダリ社長の溺愛にほだされる〜
湊未来
恋愛
「同じファンとして、推し活に協力してくれ!」
「はっ?」
突然呼び出された社長室。総務課の地味メガネこと『清瀬穂花(きよせほのか)』は、困惑していた。今朝落とした自分のマスコットを握りしめ、頭を下げる美丈夫『一色颯真(いっしきそうま)』からの突然の申し出に。
しかも、彼は穂花の分身『Vチューバー花音』のコアなファンだった。
モデル顔負けのイケメン社長がヲタクで、自分のファン!?
素性がバレる訳にはいかない。絶対に……
自分の分身であるVチューバーを推すファンに、推し活指南しなければならなくなった地味メガネOLと、並々ならぬ愛を『推し』に注ぐイケメンヲタク社長とのハートフルラブコメディ。
果たして、イケメンヲタク社長は無事に『推し』を手に入れる事が出来るのか。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
Catch hold of your Love
天野斜己
恋愛
入社してからずっと片思いしていた男性(ひと)には、彼にお似合いの婚約者がいらっしゃる。あたしもそろそろ不毛な片思いから卒業して、親戚のオバサマの勧めるお見合いなんぞしてみようかな、うん、そうしよう。
決心して、お見合いに臨もうとしていた矢先。
当の上司から、よりにもよって職場で押し倒された。
なぜだ!?
あの美しいオジョーサマは、どーするの!?
※2016年01月08日 完結済。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる