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八話
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翌朝早くにインターホンがなった。
「おかえり」
「……早くにごめん」
「ううん。起きてたから。……結局一睡も出来なかったの」
「俺もだよ」
そう言って、倫也は憔悴した表情でソファーに身体を沈めた。
麻里絵も横に腰を下ろす。
「麻里絵……ごめんな」
「何に謝ってるの?」
「三條場さんのことだよ。本当は半年以上も前に連絡があったんだ。黙っててごめん」
「うん。彼から聞いたよ」
「三條場さんから、奥さんと別れるつもりだから麻里絵を返して欲しいって言われたんだけど、『今更言われても困る』って断ったんだ」
「うん。それも聞いた」
「それからも何度か連絡があったけど、ずっと断り続けてたんだ。勝手なことして悪かった。三條場さんのことは、麻里絵と付き合う時の条件だったもんな。『復縁できることになったら彼のところに戻る』って……」
倫也は短く息を吐いてから続ける。
「麻里絵には悪いけど、正直俺は、別の人との結婚を選んだ元カレが戻ってくるなんて、無いに等しいと思ってたんだ。まさかこんな事になるなんて本当に思ってなかった。麻里絵との結婚生活が幸せ過ぎて、別れることなんてもう考えられなかったんだ。どうにかならないかって考えながら過ごしてきたんだけど、昨日三條場さんから『もう待てない』って言われたんだ」
「それで諦めて私を手放すことにしたの?」
「手放すって、麻里絵は物じゃないだろ」
「物じゃないから、私にもちゃんと考えがあるんだよ。倫君が決めることじゃないよ!」
「悪かった」
言ってから倫也は視線を落とした。
「倫君、私の一途なところが好きって言ってくれたよね?」
「ああ……そうだよ」
「一途な人っていうのはさあ、一人の人しか愛せないんだ
よ?」
「わかってるよ」
「――わかってないじゃん!」
突然荒げた麻里絵の声に、伏し目がちだった倫也は肩を跳ね上げて麻里絵を見た。
「おかえり」
「……早くにごめん」
「ううん。起きてたから。……結局一睡も出来なかったの」
「俺もだよ」
そう言って、倫也は憔悴した表情でソファーに身体を沈めた。
麻里絵も横に腰を下ろす。
「麻里絵……ごめんな」
「何に謝ってるの?」
「三條場さんのことだよ。本当は半年以上も前に連絡があったんだ。黙っててごめん」
「うん。彼から聞いたよ」
「三條場さんから、奥さんと別れるつもりだから麻里絵を返して欲しいって言われたんだけど、『今更言われても困る』って断ったんだ」
「うん。それも聞いた」
「それからも何度か連絡があったけど、ずっと断り続けてたんだ。勝手なことして悪かった。三條場さんのことは、麻里絵と付き合う時の条件だったもんな。『復縁できることになったら彼のところに戻る』って……」
倫也は短く息を吐いてから続ける。
「麻里絵には悪いけど、正直俺は、別の人との結婚を選んだ元カレが戻ってくるなんて、無いに等しいと思ってたんだ。まさかこんな事になるなんて本当に思ってなかった。麻里絵との結婚生活が幸せ過ぎて、別れることなんてもう考えられなかったんだ。どうにかならないかって考えながら過ごしてきたんだけど、昨日三條場さんから『もう待てない』って言われたんだ」
「それで諦めて私を手放すことにしたの?」
「手放すって、麻里絵は物じゃないだろ」
「物じゃないから、私にもちゃんと考えがあるんだよ。倫君が決めることじゃないよ!」
「悪かった」
言ってから倫也は視線を落とした。
「倫君、私の一途なところが好きって言ってくれたよね?」
「ああ……そうだよ」
「一途な人っていうのはさあ、一人の人しか愛せないんだ
よ?」
「わかってるよ」
「――わかってないじゃん!」
突然荒げた麻里絵の声に、伏し目がちだった倫也は肩を跳ね上げて麻里絵を見た。
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