2 / 7
2
しおりを挟む
「別れよう」
積もり積もった不満が、萌々香を暴走させた。瑛大は別れたくないと言ったが、萌々香は聞く耳を持たなかった。
その後も何度か着信があったが無視し続けた結果、瑛大からの連絡は途絶え、その後どうしているのかはわからなかった。
それから一ヶ月もしないうちに、新しい恋人が出来た。自分はモテるほうだ、と萌々香は思う。
新しい恋人は優太といい、文字通り優しい男だった。デート中に他の女に目を向けるようなこともなく、萌々香しか眼中にないような男だった。そしてデートの行き先はいつも彼が決めてくれたが、行く先々で問題が発生した。
人気のテーマパークへ行けば、年に一度の休園日だったり、初めてのドライブデートは、高速道路でエンストを起こした。予約のとれない隠れ家レストランの予約が奇跡的にとれたと思えば、当日車が大渋滞に巻き込まれて時間に間に合わず、せっかくとれた予約をキャンセルする羽目になった。
『持ってない男』なのかもしれない。
萌々香の話には手を止めて耳を傾けるが、いつの間にか話がすり替わっていて、逆に萌々香のほうが彼の話を延々と聞かされていることがよくある。
『聞いて欲しがり男』なのだ。口数が多いというより、四六時中喋っていて全く落ち着きがない。これが女友達ならば問題ないのだけれど……。
恋人とは毎日でも会いたい、と萌々香は思う。会って癒されたい。
女友達に癒しは求めない。時々会って、着地点のない話を好き勝手喋って各々のストレスを発散する。話の中身なんてなくても、女は共感しながら会話を繋げていく。それでいいのだ。
ある日、いつものようにいつの間にか話題がすり替えられ、彼の話を聞かされていた萌々香は、ふとショーウィンドウに映る自分の姿を目にして愕然とした。楽しいはずのデート中なのに、酷く疲れているように見えたからだ。
彼は確かに優しいが、全てを受け止めてくれる器の大きさや男らしさを感じたことはなく、癒し効果もないようだった。
何かが違う。
結局彼との交際は一ヶ月も持たなかった。
積もり積もった不満が、萌々香を暴走させた。瑛大は別れたくないと言ったが、萌々香は聞く耳を持たなかった。
その後も何度か着信があったが無視し続けた結果、瑛大からの連絡は途絶え、その後どうしているのかはわからなかった。
それから一ヶ月もしないうちに、新しい恋人が出来た。自分はモテるほうだ、と萌々香は思う。
新しい恋人は優太といい、文字通り優しい男だった。デート中に他の女に目を向けるようなこともなく、萌々香しか眼中にないような男だった。そしてデートの行き先はいつも彼が決めてくれたが、行く先々で問題が発生した。
人気のテーマパークへ行けば、年に一度の休園日だったり、初めてのドライブデートは、高速道路でエンストを起こした。予約のとれない隠れ家レストランの予約が奇跡的にとれたと思えば、当日車が大渋滞に巻き込まれて時間に間に合わず、せっかくとれた予約をキャンセルする羽目になった。
『持ってない男』なのかもしれない。
萌々香の話には手を止めて耳を傾けるが、いつの間にか話がすり替わっていて、逆に萌々香のほうが彼の話を延々と聞かされていることがよくある。
『聞いて欲しがり男』なのだ。口数が多いというより、四六時中喋っていて全く落ち着きがない。これが女友達ならば問題ないのだけれど……。
恋人とは毎日でも会いたい、と萌々香は思う。会って癒されたい。
女友達に癒しは求めない。時々会って、着地点のない話を好き勝手喋って各々のストレスを発散する。話の中身なんてなくても、女は共感しながら会話を繋げていく。それでいいのだ。
ある日、いつものようにいつの間にか話題がすり替えられ、彼の話を聞かされていた萌々香は、ふとショーウィンドウに映る自分の姿を目にして愕然とした。楽しいはずのデート中なのに、酷く疲れているように見えたからだ。
彼は確かに優しいが、全てを受け止めてくれる器の大きさや男らしさを感じたことはなく、癒し効果もないようだった。
何かが違う。
結局彼との交際は一ヶ月も持たなかった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
愛のかたち
凛子
恋愛
プライドが邪魔をして素直になれない夫(白藤翔)。しかし夫の気持ちはちゃんと妻(彩華)に伝わっていた。そんな夫婦に訪れた突然の別れ。
ある人物の粋な計らいによって再会を果たした二人は……
情けない男の不器用な愛。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

拝啓、大切なあなたへ
茂栖 もす
恋愛
それはある日のこと、絶望の底にいたトゥラウム宛てに一通の手紙が届いた。
差出人はエリア。突然、別れを告げた恋人だった。
そこには、衝撃的な事実が書かれていて───
手紙を受け取った瞬間から、トゥラウムとエリアの終わってしまったはずの恋が再び動き始めた。
これは、一通の手紙から始まる物語。【再会】をテーマにした短編で、5話で完結です。
※以前、別PNで、小説家になろう様に投稿したものですが、今回、アルファポリス様用に加筆修正して投稿しています。
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる