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「何でそんな顔するの? だって徹と行きたいんだもん。……ねぇ、いい加減気付いてよ」
「何をだよ?」
「ほら、全然気付いてないじゃん」
樹音は溜め息混じりで伏し目がちに言った。
感情が昂って込み上げる涙をぐっと堪える。
「何だよ?」
徹が眉根を寄せて覗き込む。
もう後には引けない、と樹音は覚悟を決め、繋いだ手にぎゅっと力を込めて立ち止まると、つられて徹も足を止めた。
「今日、朝からドキドキしっぱなしだったんだよ」
「え?」
突然の樹音の告白に、徹は寄せていた眉を一気に引き上げた。
「なんなら今週ずっとだよ」と樹音が続けると、「そんなの俺もだよ」と徹は顔色も変えずにあっさりと言った。
「え?」
「なんなら二年以上も前からずっとだ」
「嘘でしょ……?」
まさかの告白返しに、樹音は戸惑う。
「お前似のうさぎ、すっげぇ可愛かった」
「……」
「……気付けよバカ」
樹音は言葉を失って呆然と立ち尽くした。
「そういうことだから……初デートは、お前の好きなキングバッファローのライブってことで宜しくな」
そう言うと、今まで涼しい顔をしていた徹が初めて頬を染めてはにかんだ。
【完】
※最後まで読んでいただきありがとうございました。
「何をだよ?」
「ほら、全然気付いてないじゃん」
樹音は溜め息混じりで伏し目がちに言った。
感情が昂って込み上げる涙をぐっと堪える。
「何だよ?」
徹が眉根を寄せて覗き込む。
もう後には引けない、と樹音は覚悟を決め、繋いだ手にぎゅっと力を込めて立ち止まると、つられて徹も足を止めた。
「今日、朝からドキドキしっぱなしだったんだよ」
「え?」
突然の樹音の告白に、徹は寄せていた眉を一気に引き上げた。
「なんなら今週ずっとだよ」と樹音が続けると、「そんなの俺もだよ」と徹は顔色も変えずにあっさりと言った。
「え?」
「なんなら二年以上も前からずっとだ」
「嘘でしょ……?」
まさかの告白返しに、樹音は戸惑う。
「お前似のうさぎ、すっげぇ可愛かった」
「……」
「……気付けよバカ」
樹音は言葉を失って呆然と立ち尽くした。
「そういうことだから……初デートは、お前の好きなキングバッファローのライブってことで宜しくな」
そう言うと、今まで涼しい顔をしていた徹が初めて頬を染めてはにかんだ。
【完】
※最後まで読んでいただきありがとうございました。
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