盗み聞き

凛子

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「あの……もし良かったら、江戸川の花火大会、一緒に行きませんか?」

 康生から突然声をかけられたのは、それから数日後のことだった。まどかはいつものように休憩室で食後のカフェラテを飲んでいた。

「え?」
「いや、駄目ならいいんですけど……」

 まどかの返事も聞かないうちから、康生は無理強いしない姿勢を見せた。

「いえ、特に予定はありませんけど」

 このチャンスを絶対に逃すまいと、まどかは食い気味に答えた。

「良かった! じゃあ時間と待ち合わせ場所は追って連絡します」
「はい、わかりました」

 連絡先を交換したまどかは、手にしたスマホが心臓の拍動と連動しているのを感じながら、足早に去っていく康生の後ろ姿を見送った。

 思い当たることといえば、ひとつだけしかない。
「良かったらお姉さんも結んでいって!」と、通りかかった商店街の七夕祭りで手渡された短冊に、冗談半分で書き込んだのは二週間前のことだ。

『チャンスが訪れますように』

 まさかこんなに早く叶うとは――
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