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部屋に入った凌雅は、窓辺に置かれた真っ赤に染まるポインセチアに近付いていく。
「新しく買った?」
「ううん、凌ちゃんに貰ったやつだよ」
「そっか……」
言ってから凌雅はそれをしばらく眺めていた。
あの日「待ってる」とは言ってあげられなかったけれど、ポインセチアは大切に育てていた。
「凌ちゃん? ポインセチアはね、勝手に赤く染まらないんだよ」
「え、どういうこと?」
凌雅が首を傾げている。
「この時期に真っ赤に色付けようと思ったら、十月くらいから短日処理っていうのをやらないといけないんだけどね、朝から夕方までの十時間くらいは日光が当たる場所に置いてあげて、その後は段ボール箱なんかを被せて、日光も蛍光灯の光も当たらない真っ暗な時間を十四時間くらい作らないといけないの。毎日欠かさずに、長い時は二ヶ月近くもね」
「そうなんだ。全然知らなかった。じゃあ沙紀、それをやってたってこと? ……今年も、去年も、一昨年も」
「うん……」
「そっか」
「クリスマスが近付くとたくさんお店に並ぶけど、本当は寒がりで弱虫でデリケートで、少しでも手を抜くと元気なくなっちゃったり枯れちゃうんだって。夜はね、ここだと冷えるから部屋の一番暖かい場所に置いてあげるの。手が掛かって困っちゃうよ。凌ちゃんが、こんなの置いていくから……」
眉を寄せて話しながら、窓辺に置いた鉢植えを抱えた沙紀が凌雅に視線を向けると、凌雅は切なげに微笑んだ。
「沙紀」
「ん?」
「俺と……結婚してほしいんだ」
そう言った凌雅の頬は、ポインセチアに負けず劣らず真っ赤に染まっていた。
ポインセチアを送ろう
大きなツリーは買えないから
ポインセチアを送ろう
大好きな君に……
ポインセチアを送るよ
大きなツリーは買えないけど
ポインセチアを送るよ
僕の気持ちと一緒に
ポインセチアを送るけど
君は受け取ってくれるかな
ポインセチアの花言葉を知ってるかい?
「私の心は燃えている」
まさにその通りなんだ
ポインセチアを送るよ
日の当たる暖かい窓辺に飾ってくれないかな
そして僕もそばに置いてくれないかな
【完】
「新しく買った?」
「ううん、凌ちゃんに貰ったやつだよ」
「そっか……」
言ってから凌雅はそれをしばらく眺めていた。
あの日「待ってる」とは言ってあげられなかったけれど、ポインセチアは大切に育てていた。
「凌ちゃん? ポインセチアはね、勝手に赤く染まらないんだよ」
「え、どういうこと?」
凌雅が首を傾げている。
「この時期に真っ赤に色付けようと思ったら、十月くらいから短日処理っていうのをやらないといけないんだけどね、朝から夕方までの十時間くらいは日光が当たる場所に置いてあげて、その後は段ボール箱なんかを被せて、日光も蛍光灯の光も当たらない真っ暗な時間を十四時間くらい作らないといけないの。毎日欠かさずに、長い時は二ヶ月近くもね」
「そうなんだ。全然知らなかった。じゃあ沙紀、それをやってたってこと? ……今年も、去年も、一昨年も」
「うん……」
「そっか」
「クリスマスが近付くとたくさんお店に並ぶけど、本当は寒がりで弱虫でデリケートで、少しでも手を抜くと元気なくなっちゃったり枯れちゃうんだって。夜はね、ここだと冷えるから部屋の一番暖かい場所に置いてあげるの。手が掛かって困っちゃうよ。凌ちゃんが、こんなの置いていくから……」
眉を寄せて話しながら、窓辺に置いた鉢植えを抱えた沙紀が凌雅に視線を向けると、凌雅は切なげに微笑んだ。
「沙紀」
「ん?」
「俺と……結婚してほしいんだ」
そう言った凌雅の頬は、ポインセチアに負けず劣らず真っ赤に染まっていた。
ポインセチアを送ろう
大きなツリーは買えないから
ポインセチアを送ろう
大好きな君に……
ポインセチアを送るよ
大きなツリーは買えないけど
ポインセチアを送るよ
僕の気持ちと一緒に
ポインセチアを送るけど
君は受け取ってくれるかな
ポインセチアの花言葉を知ってるかい?
「私の心は燃えている」
まさにその通りなんだ
ポインセチアを送るよ
日の当たる暖かい窓辺に飾ってくれないかな
そして僕もそばに置いてくれないかな
【完】
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