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閉店した店内に、香ばしい匂いが立ち込める。
焼き上がったハンバーグを一口食べると、平野はなにも言わず箸を置いた。
やっぱりまだ駄目か、と菜々子が少し肩を落としていると、平野はガスレンジの上の鍋の蓋を開け、食べかけのハンバーグにデミグラスソースをたっぷりとかけた。
その様子を、菜々子はぽかんとして眺めていた。
「惚れ薬効いたかも」
平野が笑う。
「え?」
「よく頑張ったね。満点だよ」
「えっ、本当ですか?」
不意に涙が込み上げる。
平野は優しく微笑むと、ハンバーグを頬張った。
「すげぇ美味いけど、本当はまだ満点あげたくなかったんだ」
「おまけですか?」
「違うよ。まだ菜々子ちゃんとキッチンに立ちたかったから」
「え?」
「毎日菜々子ちゃんとこんなに傍で一緒に料理出来て、すっげぇ幸せだったから」
限界に達した涙が菜々子の瞳から零れ落ちた。
焼き上がったハンバーグを一口食べると、平野はなにも言わず箸を置いた。
やっぱりまだ駄目か、と菜々子が少し肩を落としていると、平野はガスレンジの上の鍋の蓋を開け、食べかけのハンバーグにデミグラスソースをたっぷりとかけた。
その様子を、菜々子はぽかんとして眺めていた。
「惚れ薬効いたかも」
平野が笑う。
「え?」
「よく頑張ったね。満点だよ」
「えっ、本当ですか?」
不意に涙が込み上げる。
平野は優しく微笑むと、ハンバーグを頬張った。
「すげぇ美味いけど、本当はまだ満点あげたくなかったんだ」
「おまけですか?」
「違うよ。まだ菜々子ちゃんとキッチンに立ちたかったから」
「え?」
「毎日菜々子ちゃんとこんなに傍で一緒に料理出来て、すっげぇ幸せだったから」
限界に達した涙が菜々子の瞳から零れ落ちた。
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