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翌朝カフェにやって来た彼と目が合うと、明らかに菜々子に向かって歩いて来るのがわかった。昨日のこともあって、緊張でカップを持つ手が震える。
案の定、菜々子の目の前で立ち止まった彼は、何故か菜々子のランチバッグを持っていた。
「あの、それ……」
「昨日忘れていっただろ? 気付いてすぐに追いかけたんだけど、見当たらなくてさ」
ランチバッグをテーブルに置き、彼が言った。
昨日カフェに戻った菜々子と入れ違いになったということだろう。
「あ、そうだったんですね。わざわざありがとうございます」
「あぁ、いや……」
彼が何か言いたげな顔をしているように見えた菜々子は、恐る恐る尋ねてみた。
「あのぉ……中、見ました?」
「いや……」
「あ、そうですか」
それを聞いてホッと胸を撫で下ろした瞬間、彼がぽつりと言った。
「鮭弁……」
――見られたッ!!
よりによって、一番見られたくない人に。
「い、いつもはもうちょっとまともなお弁当なんですけど……」
なんて言い訳をしても時すでに遅し。
それは、白飯の上に焼き鮭が乗っているだけの質素で色気のない弁当だった。
ネイリストなんていう、いかにも手先が器用で女っぽくて華やかなイメージの職業に就いている菜々子だが、料理の腕はからっきしだった。
案の定、菜々子の目の前で立ち止まった彼は、何故か菜々子のランチバッグを持っていた。
「あの、それ……」
「昨日忘れていっただろ? 気付いてすぐに追いかけたんだけど、見当たらなくてさ」
ランチバッグをテーブルに置き、彼が言った。
昨日カフェに戻った菜々子と入れ違いになったということだろう。
「あ、そうだったんですね。わざわざありがとうございます」
「あぁ、いや……」
彼が何か言いたげな顔をしているように見えた菜々子は、恐る恐る尋ねてみた。
「あのぉ……中、見ました?」
「いや……」
「あ、そうですか」
それを聞いてホッと胸を撫で下ろした瞬間、彼がぽつりと言った。
「鮭弁……」
――見られたッ!!
よりによって、一番見られたくない人に。
「い、いつもはもうちょっとまともなお弁当なんですけど……」
なんて言い訳をしても時すでに遅し。
それは、白飯の上に焼き鮭が乗っているだけの質素で色気のない弁当だった。
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