特効薬と副作用

凛子

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「大人は一回五粒だよ」

 徹はそう言いながら希の手をとり、一回分を手のひらに乗せた。

「少し苦味があるから、噛まないようにね」
「わかりました」

 希は言われた通り、一気に水で流し込んだ。

「希ちゃん、おいで」

 ソファーに腰掛けた徹が、包容力のある優しい笑顔を浮かべ、いつものように自分の膝をポンポンと叩いている。
 希は吸い寄せられるように徹の横に移動すると、ゆっくりと体を傾け、徹の膝に頭を預けた。
 すうっと肩の力が抜けていくのがわかる。
 

 目を開けた希は、自分が眠っていたことに気付くと、慌てて体を起こした。

「ごめんなさい!」

 時計を見ると、小一時間ほど経っていた。

「気持ち良さそうに寝てたよ」

 柔らかく微笑む徹と視線を交わした希は、ハッとして、軽く頭を揺らした。

「頭痛、治ってます! ほんとに効き目が早いんですね」
「え?」 

 徹は一瞬驚いたように目を丸くする。
 それから思い出したように「そうか、良かった」と言って目尻を下げた。
 希が満面の笑みを向けると、甘い瞳で見つめ返され、頭を撫でられる。

「今日はもう少しこのままでいたいから、やっぱり出前でも取ろうか」

 思わぬ予定変更に、希の頬は緩んだ。

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