9 / 10
9
しおりを挟む
改札の手前で繋いでいた手を離したが、改札を抜けるとしれっと樹音の手をとった。家に送り届けるまでこのままでいたい。
だが、そんなことはおくびにも出さず、マンションが近付くと「今日はサンキューな」と俺はあっさりと伝える。
「楽しかったね。うさぎ可愛かったねぇ。また会いに行きたいなぁ」
俺が無理を言って頼んだことなのに、満面の笑みでそんなことを言う樹音が愛おしくて仕方なかった。
「おう、アイツすげぇ可愛いかったよなぁ……人って、自分に似てる生き物を可愛いと思うんだってさ。アイツお前に似てたもんな」
"お前に似てる"と"可愛い"を連発したが、樹音は気付いただろうか。
俺が約束のチケットを分配すると言うと、樹音はとびきりの笑顔を見せた。その笑顔が見たくて、ファンクラブにまで入って手に入れたのだ。
俺はチケットが二枚あることを伝えて、誰と行くのかと尋ねると、樹音は眉をひそめた。
「え、徹とじゃないの?」
「え? 俺とかよ」
驚いた俺は、そんなふうにそっけなく返してしまった。
やっと気付いたのだろう。
「じゃあ誰と行くの?」
「いや、俺が聞いたんだよ。……なぁ、お前どういう意味で言ってる?」
さっきの俺の言葉の意味に気付いたのかと思っていたら、「え、何が?」と返され、俺は心底がっかりして顔をしかめた。
だが、そんなことはおくびにも出さず、マンションが近付くと「今日はサンキューな」と俺はあっさりと伝える。
「楽しかったね。うさぎ可愛かったねぇ。また会いに行きたいなぁ」
俺が無理を言って頼んだことなのに、満面の笑みでそんなことを言う樹音が愛おしくて仕方なかった。
「おう、アイツすげぇ可愛いかったよなぁ……人って、自分に似てる生き物を可愛いと思うんだってさ。アイツお前に似てたもんな」
"お前に似てる"と"可愛い"を連発したが、樹音は気付いただろうか。
俺が約束のチケットを分配すると言うと、樹音はとびきりの笑顔を見せた。その笑顔が見たくて、ファンクラブにまで入って手に入れたのだ。
俺はチケットが二枚あることを伝えて、誰と行くのかと尋ねると、樹音は眉をひそめた。
「え、徹とじゃないの?」
「え? 俺とかよ」
驚いた俺は、そんなふうにそっけなく返してしまった。
やっと気付いたのだろう。
「じゃあ誰と行くの?」
「いや、俺が聞いたんだよ。……なぁ、お前どういう意味で言ってる?」
さっきの俺の言葉の意味に気付いたのかと思っていたら、「え、何が?」と返され、俺は心底がっかりして顔をしかめた。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説




甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる