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15.初恋2

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「アザミ、兄貴は止めといた方がいい」

 ユアンは神妙な表情で忠告してきた。
 コイバナができる友達なんていない。そもそも公爵邸から出る事が滅多にない私には女友達がいなかった。だから、キースの事で相談できる相手はユアンしかいないのだ。

「え?急に何を言うの?」

「いや、そのままの意味だが」

「そりゃあ、しがない子爵家の娘が公爵家の嫡男を好きになったって実りがないのは解ってるけど……」

「そういう意味じゃない。というか、身分は関係ないだろ?」

「ユアンこそ何を言ってるの?大いに関係あるでしょう。公爵家と子爵家なんて天と地ほどの差があるわよ。誰も認めないわ」

 現実主義のユアンにしては珍しい事を言うものだと首を傾げた。

「他の子爵家の娘なら無理だろうが、アザミなら大丈夫だ」

 全然大丈夫じゃないと思う。
 うちは一般の子爵家なんですけど?

「何を根拠に……」

「根拠ならあるだろう」

「どこに?」

 本当にユアンはどうしちゃったのかな?
 私の疑問に彼は答えた。

「ビブリア子爵家は歴史ある旧家だ。それに王国の穀物地帯でもある。国の約八割を支えているんだぞ?そんな重要な土地を治める領主一族の直系だ。血筋だって悪くない。父親は伯爵家の三男だ。司法を取り締まる家系の伯爵家は領地を持たない代わりに宮廷貴族として存在感を増してきている。知ってるか?アザミの伯父にあたる現伯爵は政界に参入するって専らの噂だ。司法長官の座は弟に譲るようだ。叔父の方だって成績優秀のエリート学生だ」

「ごめん。私、父方の親戚との付き合いないから分かんない」

「知ってる。まぁ、話はそれたが、アザミは自分が思っている以上に価値はあるって事だ。エリート伯爵家の血が流れている子爵家の跡取り娘。加えて、アザミは母上のお気に入りだ。だから、おばさんが亡くなった後はアザミの後見人を名乗り出た」

 説明されると「そうかも」って気になるから不思議。
 でもねぇ。
 それって中堅貴族には価値があって、上位クラスの貴族には価値がないように思える。

 こいつ理解してないな、という顔をするユアンに「解ってるよ」と言いたい。
 要は、あれだ。

 将を射んとする者はまず馬を射よ、これを実践すればワンちゃんあると言いたいのだろう。

 
 可能性がゼロではないなら頑張るのが私のポリシーだ。
 幸いにも公爵家にはユアンがいる。長男が後を継ぐのが一般的だけど、家の事情で次男や三男などの下の者が継ぐことだってある。
 私が頑張って二人以上の子供を産めば跡取り問題は解消だ! よし、いける!決めた!! 私はキースと結婚する為に全力で努力した。


 しかし、残念ながらキースを落とすことはできなかった。



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