上 下
64 / 70

新王1 

しおりを挟む

地方増税――。

国のために出した法案が地方貴族に無視された。
国王の命令に背いたのだ。
ゆえに、地方貴族達に使者を送った。登城命令書を持たせて。

 
国王の命令に背くことは大罪である――
場合によっては死罪に値する――


これなら登城するであろうという内容の命令文だ。
なのに……貴族たちは再び無視した。
国王の僕の命令に従わないだと?
これは許される範囲内を超えている。

許せない――
いや、許されない行為だ――


王として、命令違反委は厳罰を処さなければならない。
だが僕は父上と違って優しい王だ。
いきなり殺しはしない。
辺境の者達は優秀だと伝え聞く。
彼らの王宮での奉仕を命じた。
田舎者が王宮で働けるのだ。名誉な事だと泣いて喜ぶに違いない。


文官武官、全てを王宮で無償奉仕させよ――


勅命を放った三日後、辺境貴族が独立宣言をした。




――我ら辺境貴族は王家の奴隷ではない!
 
そもそも「地方増税」とは何だ?
何故、我らが王都に住まう者達が楽をするために金を出さなければならぬ!
それほど、金が欲しいというのなら王都民に働かせれば良い!
王宮の者達は王都民以外は国民とは思っておらぬのか?
だからと言って領民の血税を王都のためだけに使用する行為を許す事は出来ない! 
 
その上、我が領民を王宮で無償奉仕させろとは何事だ!
我らの民に「死ね」とでもいうのか!
それとも仕事が出来ない王宮の文官武官の代わりに働かせて功績だけ持ってゆこうという算段か!

許し難い!

このような理不尽極まりない命令を受ける訳にはいかない!

我がスタンデール辺境伯爵家は今ここで独立を宣言する!――
 


スタンデール辺境伯爵家が独立宣言し「スタンデール公国」を名乗った。


「身の程知らずの田舎貴族が……思い上がりも甚だしい」

貴族が王になるだと?
バカバカしい!
誰が奴らを認める?
誰も認めはしない。

この時の僕は辺境貴族の独立宣言を嘲笑った。
国の何たるかを知らない愚かな田舎者は数日もせずに王である僕に泣きついてくる。許しを乞うてくるに違いないと。

本気でそう思っていた。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

えっ「可愛いだけの無能な妹」って私のことですか?~自業自得で追放されたお姉様が戻ってきました。この人ぜんぜん反省してないんですけど~

村咲
恋愛
ずっと、国のために尽くしてきた。聖女として、王太子の婚約者として、ただ一人でこの国にはびこる瘴気を浄化してきた。 だけど国の人々も婚約者も、私ではなく妹を選んだ。瘴気を浄化する力もない、可愛いだけの無能な妹を。 私がいなくなればこの国は瘴気に覆いつくされ、荒れ果てた不毛の地となるとも知らず。 ……と思い込む、国外追放されたお姉様が戻ってきた。 しかも、なにを血迷ったか隣国の皇子なんてものまで引き連れて。 えっ、私が王太子殿下や国の人たちを誘惑した? 嘘でお姉様の悪評を立てた? いやいや、悪評が立ったのも追放されたのも、全部あなたの自業自得ですからね?

真実の愛だからと平民女性を連れて堂々とパーティーに参加した元婚約者が大恥をかいたようです。

田太 優
恋愛
婚約者が平民女性と浮気していたことが明らかになった。 責めても本気だと言い謝罪もなし。 あまりにも酷い態度に制裁することを決意する。 浮気して平民女性を選んだことがどういう結果をもたらすのか、パーティーの場で明らかになる。

私と一緒にいることが苦痛だったと言われ、その日から夫は家に帰らなくなりました。

田太 優
恋愛
結婚して1年も経っていないというのに朝帰りを繰り返す夫。 結婚すれば変わってくれると信じていた私が間違っていた。 だからもう離婚を考えてもいいと思う。 夫に離婚の意思を告げたところ、返ってきたのは私を深く傷つける言葉だった。

結婚式間近に発覚した隠し子の存在。裏切っただけでも問題なのに、何が悪いのか理解できないような人とは結婚できません!

田太 優
恋愛
結婚して幸せになれるはずだったのに婚約者には隠し子がいた。 しかもそのことを何ら悪いとは思っていない様子。 そんな人とは結婚できるはずもなく、婚約破棄するのも当然のこと。

愛することはないと言われて始まったのですから、どうか最後まで愛さないままでいてください。

田太 優
恋愛
「最初に言っておく。俺はお前を愛するつもりはない。だが婚約を解消する意思もない。せいぜい問題を起こすなよ」 それが婚約者から伝えられたことだった。 最初から冷めた関係で始まり、結婚してもそれは同じだった。 子供ができても無関心。 だから私は子供のために生きると決意した。 今になって心を入れ替えられても困るので、愛さないままでいてほしい。

殿下に裏切られたことを感謝しています。だから妹と一緒に幸せになってください。なれるのであれば。

田太 優
恋愛
王子の誕生日パーティーは私を婚約者として正式に発表する場のはずだった。 しかし、事もあろうか王子は妹の嘘を信じて冤罪で私を断罪したのだ。 追い出された私は王家との関係を優先した親からも追い出される。 でも…面倒なことから解放され、私はやっと自分らしく生きられるようになった。

結婚の約束を信じて待っていたのに、帰ってきた幼馴染は私ではなく義妹を選びました。

田太 優
恋愛
将来を約束した幼馴染と離れ離れになったけど、私はずっと信じていた。 やがて幼馴染が帰ってきて、信じられない姿を見た。 幼馴染に抱きつく義妹。 幼馴染は私ではなく義妹と結婚すると告げた。 信じて待っていた私は裏切られた。

待ち合わせの時間になっても婚約者は迎えに来ませんでした。平民女性と駆け落ちしたですって!?

田太 優
恋愛
待ち合わせの時間になっても婚約者は迎えに来なかった。 そして知らされた衝撃の事実。 婚約者は駆け落ちしたのだ。 最初から意中の相手がいたから私は大切にされなかったのだろう。 その理由が判明して納得できた。 駆け落ちされたのだから婚約破棄して慰謝料を請求しないと。

処理中です...