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王子3
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「まて!そなたは騎士団長の一人息子ではないか!父親の跡を継ぐのではないのか!?いや、その前にベデヴィア伯爵家はどうなる?養子でも貰うのか?実子を差し置いてそんなことは許されん!騎士団長の命令なら直ぐに撤回するように申し伝える!」
跡取り息子を他家に差し出すなど……有りえない。
アレックスは父親と不仲なのか?
もしや冷遇されているのではないだろな……。
「殿下、我が一族は養子を迎えるほど分家の数はありません。ベデヴィア伯爵家の跡継ぎは私です」
「だが……婿入りするのだろう?」
「アテナも一人娘ですからね。私の父と違ってアテナの父君は高齢なのです。不謹慎ですが順当に亡くなるとしたらスタンデール辺境伯爵の方が早いのです。我がベデヴィア伯爵家は私の息子が跡を継ぐことになるでしょう」
「近衛はいいのか!?」
「殿下、近衛騎士団長という地位は世襲制ではありません。騎士団は実力主義です。なので私が近衛騎士団に入るも入らないも自由なのですよ」
「それでも代々ベデヴィア伯爵家が近衛騎士団を率いてきたではないか」
「正確にはベデヴィア伯爵家出身者というべきですが……。まあ、継ぐ爵位がない男子が近衛騎士団に入団して出世した者が多い家ですから。世襲制と勘違いしている人は少なからずおります」
「なら!」
「ですが我がベデヴィア伯爵家は軍の出です。何時までも中央に居座る訳には参りません」
「?軍は数十年前に解体されたままのはずだろう?野蛮過ぎる軍隊の存在が国の治安を脅かしている、と当時の国王陛下が判断されて解体に踏み切った。解体後は騎士団と合併したはずだ。なのに何故、辺境に赴くんだ?」
「そうですね。時の国王陛下が‟完全なる平和主義”を唱えたことで‟国軍国防”の存在そのものは消滅しました。だからといって他国がそれを褒め称えて侵略しない保証は何処にもありません。寧ろ、国を守る機関を失った事で攻めてくる国は多いのです。現に、当時も大変な混乱が国内外に起こりました」
「え?」
それはどういう……。
「今は辺境伯爵家と帝国基地が国防軍の役目をになってくれているのが現状です。ですが、当然、不満はでます。なにしろ辺境伯爵家の私兵を国防の守りにあたらせているのですから」
「なに!?不満?国を守ることに不満を言うとはけしからん!」
一体どこの田舎貴族共だ!
国を守る栄誉を与えられているというのに!
「彼らが不満に思うのは当然の事です。混乱当初ならいざ知らず、数十年経っても改善の兆しもなく軍の再整備の話もないのですから。それで国に優遇されているかといえばそうでもありません。勿論、王家も辺境伯爵家たちに援助金を渡してはいますが、軍事費というものは巨額です。王家からの援助金など雀の涙ほどにしかなりません。十数年前からブロワ公爵夫妻が「投資」という名目で毎年莫大な支援金を送ってくださっていたからこそ彼らの鬱憤もかなり抑えられていましたが、王家の度重なる失政とキャサリン様への仕打ちで中央に対する不信感が限界まで膨れ上がっているんです。このままでは中央と地方の亀裂は避けられません。私はそうならないためにもスタンデール辺境伯爵家に行くのです。それと、中央にいるよりも国境を接するスタンデール辺境伯爵家にいた方が国を守れるというものです」
跡取り息子を他家に差し出すなど……有りえない。
アレックスは父親と不仲なのか?
もしや冷遇されているのではないだろな……。
「殿下、我が一族は養子を迎えるほど分家の数はありません。ベデヴィア伯爵家の跡継ぎは私です」
「だが……婿入りするのだろう?」
「アテナも一人娘ですからね。私の父と違ってアテナの父君は高齢なのです。不謹慎ですが順当に亡くなるとしたらスタンデール辺境伯爵の方が早いのです。我がベデヴィア伯爵家は私の息子が跡を継ぐことになるでしょう」
「近衛はいいのか!?」
「殿下、近衛騎士団長という地位は世襲制ではありません。騎士団は実力主義です。なので私が近衛騎士団に入るも入らないも自由なのですよ」
「それでも代々ベデヴィア伯爵家が近衛騎士団を率いてきたではないか」
「正確にはベデヴィア伯爵家出身者というべきですが……。まあ、継ぐ爵位がない男子が近衛騎士団に入団して出世した者が多い家ですから。世襲制と勘違いしている人は少なからずおります」
「なら!」
「ですが我がベデヴィア伯爵家は軍の出です。何時までも中央に居座る訳には参りません」
「?軍は数十年前に解体されたままのはずだろう?野蛮過ぎる軍隊の存在が国の治安を脅かしている、と当時の国王陛下が判断されて解体に踏み切った。解体後は騎士団と合併したはずだ。なのに何故、辺境に赴くんだ?」
「そうですね。時の国王陛下が‟完全なる平和主義”を唱えたことで‟国軍国防”の存在そのものは消滅しました。だからといって他国がそれを褒め称えて侵略しない保証は何処にもありません。寧ろ、国を守る機関を失った事で攻めてくる国は多いのです。現に、当時も大変な混乱が国内外に起こりました」
「え?」
それはどういう……。
「今は辺境伯爵家と帝国基地が国防軍の役目をになってくれているのが現状です。ですが、当然、不満はでます。なにしろ辺境伯爵家の私兵を国防の守りにあたらせているのですから」
「なに!?不満?国を守ることに不満を言うとはけしからん!」
一体どこの田舎貴族共だ!
国を守る栄誉を与えられているというのに!
「彼らが不満に思うのは当然の事です。混乱当初ならいざ知らず、数十年経っても改善の兆しもなく軍の再整備の話もないのですから。それで国に優遇されているかといえばそうでもありません。勿論、王家も辺境伯爵家たちに援助金を渡してはいますが、軍事費というものは巨額です。王家からの援助金など雀の涙ほどにしかなりません。十数年前からブロワ公爵夫妻が「投資」という名目で毎年莫大な支援金を送ってくださっていたからこそ彼らの鬱憤もかなり抑えられていましたが、王家の度重なる失政とキャサリン様への仕打ちで中央に対する不信感が限界まで膨れ上がっているんです。このままでは中央と地方の亀裂は避けられません。私はそうならないためにもスタンデール辺境伯爵家に行くのです。それと、中央にいるよりも国境を接するスタンデール辺境伯爵家にいた方が国を守れるというものです」
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