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宰相の息子2

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自分の婚約者ジュリエットと、親友とその婚約者アレックスとアテナの三人は殿下の話で盛り上がっている。
恐ろし過ぎてとても会話に入っていけない。


「ところで、そちらはでしたか?」

漸く殿下の話が終わったと思ったらアレックスが女性陣に「淑女の茶会」について質問した。和やかだった二人はその瞬間に表情が一変した。アテナ嬢は困った表情になり、ジュリエットはを浮かべた。アテナ嬢はともかく、ジュリエットの
恐ろしい。ことは聞かなくとも分かる。
 

「聞いてはいたが……は凄いな。本当に貴族の出か?」

「階級社会に喧嘩を真正面から売りつける方を初めて見ましたわ。本人は喧嘩を売った気は全くない御様子でしたけど……エドワード殿下と理由がよくわかりました」

褒めてない!
ああ~~~!やはりアリス嬢やらかしていたか。

二人から聞いた内容は想像以上に酷かった。

曰く、幼い頃から決められた婚約関係に対して「お可哀そうに」と憐れむ。
曰く、愛のない結婚生活が待っていると勝手に決めつけて「お可哀そうに」と涙ぐむ。
曰く、生まれてくる子供までも政略結婚をさせられる憐れな存在だと思い込み「お可哀そうに」と言い放つ。


……普通の貴族は政略結婚だ。
アリス嬢は自分の立場を理解していないのか?
いや、理解していたらこんなことになっていないか。
常識かつは「略奪愛」はしない!


「きっと今頃、

『エドワード様、この国の王族は十歳になるまでに婚約者が決められるんですって。可哀そうよね。これから幾らでも出会いがあるっていうのに家に縛られて生きていくなんて。親に勝手に決められた相手と恋愛関係に成れるものなのかしら?私には想像もつかないわ。やっぱり恋した相手と結婚する事が女性の一番の幸せだと思うわ。エドワード様もそう思われるでしょう?ねぇ、エドワード様。もしですよ、もし私たちに間に娘が生まれたらその子には政略結婚なんかさせないで欲しいんです!私たちのように愛し合って幸せになって欲しいの』

と、殿下に話されていると思いますわよ?」

ジュリエット……アリス嬢の声音…上手いな。役者に成れるぞ……。
 

「だが、アリス嬢は最新の化粧品や流行のドレスに関しては恐ろしく情報通であった。別の意味でも驚いたものだ。茶会で出された茶葉の銘柄や菓子に使われているフルーツなどをピタリと言い当てていたぞ!あれは凄い!」

「あれで何処の産地の特産品であるかを御存知でしたら良かったのですがね」

「まさか輸出している国の御令嬢にその良さを話して聞かせるとは……いやはや」

最悪だ!
二人はしみじみと話しているが……どう聞いてもアリス嬢がその令嬢に喧嘩を売ったも同然じゃないか!!

「もっとも、アリス嬢はずっとで話されていましたから相手には伝わっていませんけどね」

フォローになっていないぞ、ジュリエット。
アリス嬢も、アリス嬢だ。何故、共通語で話さないのか……。頑なに王国語で会話をし続けるのは嫌味とも取れる行為だ。

「嫌だわ!ヴィクター!アリス嬢が王国語以外の言葉を話せるはずありませんでしょう。当然、私かアテナ様がしているに決まっておりますでしょう!」

はっ!?
共通語が話せない?
いやいや、幾ら何でもそれはないだろう!
我が国のでもあるのだぞ?平民階級ではあるまいし……。いや、裕福な庶民なら普通に話せるはずだ。なのに貴族のアリス嬢が話せないとは一体どういうことだ?学園でも必須の授業だっただろう。

「どういうも何も実際話せておりません。挨拶位は出来るようですけど……流石に『こんにちは』で終わられてはどうしようもありませんわね」

なんだと!?
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