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騎士団長1

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気が付いたら朝になっていた。
昨日の記憶がない。
私は一体何をしていたんだ?
陛下に呼ばれて宰相閣下と共に私室に入って、それから……なんだったか。そうだ!確か陛下から気がする。だが、それが何であったのかが思い出せない。困った。名ばかりとはいえ王家と王都を守る名誉を与えられた近衛騎士団のトップであるというのに……恥じ入るばかりだ。



「父上、ご案じ召されますな。ヴィクター宰相の息子と共にエドワード殿下たちのお世話を致します。これから、ブリジットの屋敷に赴き、皆で、対策を立てるための作戦会議を行う次第です」

「ああ……」

「昨日の事で父上は大層お疲れのようでしたので、騎士団の方には私から連絡をしておきました。今日一日はゆっくりとお過ごしください」

「……そうか」

「詳細を話せば、騎士団の方々も『日頃から陛下の命令遂行を忠実にこなされて疲労がたまっておいでなのでの届けにしておきます』とのことでした。騎士団の方々が理解ある者達ばかりで安心いたしました。帰りに騎士団の様子を見に行って参ります。それでは、時間がきましたので出発致します」

「行ってくるといい」

「はい、行って参ります」

静かに玄関が閉じられた。
振り返った執事のバートンが物言いたげな顔で私を見ている。非難めいた顔だ。私は知らない間にしたのか?バートンがこのような顔をする時は必ず何かをした後だ。もっとも、私にその記憶はないので、後から詳細をバートンに聞いて頭を抱えるケースが何時ものパターンと化している。


「旦那様、お話がございます」


ああ、やはり何かをしてしまったようだ。
バートンの様子では話は長いのだろう。メイドにお茶と菓子、それと簡単な軽食の準備をするように命じている。食事をしながら話を聞けという事だろう。それが一番きついのだが、私に拒否権はない。我が家で一番の権力を持っているのは家長である私ではなく、目の前にいる老執事だ。早くに両親を亡くした私にとって父親同然のバートンに何時まで経っても頭が上がらない。亡き妻も私よりもバートンを頼りにしていた程だ。


「旦那様、支度が調いました。『盾の間』で詳細をお話致します」

 
……本当に私はどんな恐ろしい事態を引き起こしたのだ?
バートンがワザワザ『盾の間』で話そうとするなどと。
我が家は建国以来から「武」を誇る一門だ。
そのため家紋も「盾と剣」が施されている。屋敷にも『盾の間』と『剣の間』があるほどだ。どちらもの話し合いの時でしか使用しない特別な部屋。そこで話を聞くとなると……ただ事ではない。
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