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宰相
しおりを挟むなんとも厄介な事になったものだが、陛下からの頼みは断れん。
――数時間前――
急遽、陛下のプライベートルームに呼ばれたと思ったら、
「……最低限で構わん。王子とその婚約者の見張りを、そち達の子息に頼みたい」
と、騎士団団長と共にとんでもない事を聞かされた。
要は、我が国の問題児王子たちのフォローを私と近衛騎士団団長の息子にさせるという超難題である。
陛下は何を考えているのか!
私たちの息子は確かに優秀だ。
どこぞの王子殿下たちと違って実力で使節団に選ばれている。
それでも、キャサリン様に比べれば天と地ほどの差がある!同じことが出来ると思われてはたまらない。
「陛下、若輩者でしかない我が息子がエドワード殿下方をお諫めする事は不可能に近いと存じ上げます」
「分かっておる。そこを何とかして欲しいのだ」
理解していないようだ。
腐っても王族。王子であるエドワード殿下に真っ向からダメ出しが出来るのはキャサリン様しかいなかった。
他の者では、最悪、不敬罪に成りかねないのだ。
「努力はいたしましょう。ですが、肝心の殿下方が御自分達の現状を理解されていない状況では、如何に我々の息子たちとは申しましても、一介の臣下の身で出来ることは限られております」
「……それで構わん。頼んだぞ」
「承りました」
私と陛下だけで話が進んでしまった。悪く思うな、騎士団長。陛下の「お願い事」に絶句して呆然と立ちすくんでいる貴殿が悪い。こういうのは決断力と判断力が物を言うのだ。
「王妃殿下には何とお伝えいたしましょうか」
陛下だけの意向に沿う事は出来ない。
この国の舵取りを行っているのは王妃殿下なのだ。
「……やはり言わねばならんか?」
「エドワード殿下だけの問題ではありません。事は国際問題に発展する恐れのある事案です」
「……些か…大袈裟ではないか?」
「陛下、例の事件から一年が経過しております。今回の招待は間違いなくエドワード殿下方を見極めるためのものに相違ありません。慎重に事を運ばねば更なる笑い種になりかねないものです」
「そうか…そうだな。では…王妃には私の方から話しておこう」
「はっ」
最後までショックで立ちすくんでいた騎士団長を無理やり歩かせて退出した。
さて、息子に何と言って説明をすればいいものか。
いや、これは息子だけでは対処できないだろう。婚約者である令嬢にも被害が及ぶ案件だ。至急、対策を立てる必要がある。
それにしても、騎士団長は何時になったら現実に戻ってくるのだ?隣で歩いている姿は何時もと変わりないように見えるが、目がグルグルと回っている。当分、正気には戻らないかもしれない。ま、騎士団長なら仕事には支障は来さないだろう。頭で別の事を考えていようが、首から下は全くの別物。仕事仕様に動くよう、体で教え込まれた世代だからな。先々代の国王からのツケのせいだ。
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