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王子
しおりを挟む王妃様による妃教育は魔の一ヶ月を超えた。
シルバー夫人以外初めての快挙ではないだろうか?
流石は王妃様だ!
王妃様が指導にあたってからはアリスの癇癪は鳴りを潜めている。
いや、そればかりか、妃教育に意欲的な兆候が見られる。
このような事は初めてだ!
きっと、王妃様の指導がアリスには合っていたんだ!!!
アリスが言っていたように、「アリスにあった教育」が必要だった!
周りの目も気にせずに感動に浸っていると、父上の無粋な声で現実に戻されてしまった。
「現実逃避している場合か!?あの娘、全くといっていいほど進展がないぞ!」
失礼な!
幾ら父上と言えどもなんと酷い事を言うのだ!
「父上の目は節穴のようですね」
「なに!?」
「アリスの立ち居振る舞いは以前に比べると格段と違っているではありませんか!廊下を早足で歩くことも無くなりました。僕を見ても前のように小走りで駆け寄って来てくれなくなった事は非常に寂しいですが、これも僕の妻になるために努力してくれている証だと思えば我慢も出来るというものです」
「……普通の令嬢は走る事は無いがな」
「姿勢も木のように美しくなっております。僕の胸に寄りかかってくる事がめっきり減ってしまって残念でなりません。柳の如くしなやかだったというのに……」
「……あれは“しな垂れかかっている”と言うのではないか?常識のある令嬢はあのような振る舞いはせんぞ……」
「ですが、歩き方もカーテシーも上手くなりましたので結果的に良かったのかもしれません」
「高位貴族の令嬢としては初歩の初歩だがな」
「食事の時間も静かなものです。僕もアリスと会話しながらの食事は楽しかったのですが……それも今はありません。食後の終わりにシェフに感謝の言葉を伝える位です。それすらも今までなかった事です!」
「まぁ…そうだな」
「御覧ください、アリスはあのように日々成長しております!!!」
今も頑張って妃教育を受けているアリスの姿を指さして父上に訴えた。
泣きそうな表情で必死に王妃様の指導に耐えている。
実に健気だ。
キャサリンではまず有り得ない光景。
僕のために頑張っている恋人の存在はかくも愛しいものだとは思わなかった。
「正気か?」
父上の唖然と呟いた声は生憎と僕の耳には届かなかった。
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