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国王
しおりを挟む馬鹿は死なないと直らないというが、世の中、死んでも直らない馬鹿は存在する。それが実の息子だというのだから笑えない。
「いっそのこと、まとめて出荷してしまっては如何かしら?」
「王妃……」
ナニを出荷するのか、そして何処に出荷するというのか……恐ろしくて聞けん。
馬鹿息子の「婚約破棄宣言」から時間を置かずに姪は隣国に行ってしまった。
「宗主国の皇女に対して無礼を働いて生きていられるだけでも奇跡です」
確かにその通りだ。
帝国皇女を母に持つ姪は、帝国の「皇女」としての身分が生まれた時から与えられていた。巨大な帝国は、皇女を属国の王族と結婚させるのが習わしだ。
皇女を嫁がせる事で支配地域の信頼を得ると共に帝国皇女の血を引く王を誕生させる狙いがあるのだろう。そうする事で帝国への反発を押さえつける狙いがある。分かっていても、皇女を娶る事で得られるメリットは大きい。帝国との交流で国が豊かになるのだからな。
「だが、王妃よ。皇帝陛下はエドワードの婚姻は認めてくれたぞ?」
「ええ。新しい婚約者が立派な妃に成れるというのなら、という一文がありましたけどね」
「要は、妃教育が修了すればいい事だ」
「その妃教育で躓いているからこそ悩んでいるのでは?」
グッ!
痛い処をついてくる。
そうなのだ。
エドワードが選んだ娘。
キャサリンの義妹。
弟の再婚相手の連れ子。
あれほど出来が悪かったとは……幼児の方がよっぽどマシだったぞ?
「シルバー夫人にも匙を投げられてしまって……一体どうなさるおつもりです」
そうなのだ。
八人目の教育係が先日辞職した。
シルバー夫人に逃げられては本当に後がない。
かの夫人は教育熱心である以上に、やる気のない子供を指導するエキスパートとして有名なのだ。だからこそ頼み込んで来てもらったのに結果がこれではな。
また、エドワードの婚約者の不出来さが噂されるのか。
最近ではご婦人方の見る目が一層厳しくなったように感じるが……気のせいではあるまい。
どうしたものか。
折角、皇帝陛下に土下座して許しを得たというのに。
いや、その前に教育係が他にいるのか?
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