後宮の右筆妃

つくも茄子

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第三章

80.八州公1

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「拝礼?おかしなことを仰るのね。『八州公の当主は皇帝に拝礼する必要はない』。これは常識の範疇では?それとも初代皇帝の決定を無に帰す理由をお教え願えますか。ああ、もしかして皇帝を敬えとでも言うのかしら?それは申し訳ありませんわね。わたくし、に下げるほど安い頭を持っていませんの。ごめんあそばせ」

 見る者を魅了する妖艶な美貌で微笑みながら毒を吐くのはかん家の新当主、坎 照かん しょう。彼女の言葉に朝儀は騒然となった。

「そもそも、わたくし達、八州公が集いましたのは偏にを祝うため。朝儀に出て愚王の顔を見る為ではございませんわ。お間違えにならないようお願いいたしますわ」

 クスリと笑う坎州公に対し、ざわめきは酷くなった。
 しかし、それは皇帝陛下の臣下たちのみで、他の八州公は平然としていた。寧ろ、彼女の言葉を肯定するかのような態度の者さえいる。特に若いこん家の双子当主は目を輝かせながら坎州公を見ているし、他の州公達も良い笑顔だった。
 まぁ、一人だけ目を瞑って憮然としている州公もいるけれど。
 お父様、何だか一気に老けたようだわ。何かあったのかしら?

「随分ないわれようだ」
 
「まぁ!当然ですわ。そうでなければ、何処かのがおかしな誤解をしてしまいますもの。わたくし達がわざわざ集まったのは皇帝陛下のため、だと。ふふふ。そんな筈ありませんのにね。ですが、しっかりと否定しておかなければ悪知恵と足の引っ張り合いだけは超一流の方々がアホな噂を流しかねませんからね」

 クイッと扇子で口元を隠しながらも、目は一切笑ってなどいない。陛下も坎州公にはタジタジのようだわ。

 幾ら、八州公と言えどもこれは不敬ではないかしら?

 そう思うものの、坎州公を止められる者は誰もいない。

 こうして、朝儀の終了まで坎州公の独断場であったことは言うまでもない。


    
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