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第二章
70.包青side
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「淑妃の宮で起こった火事の発生場所は妃の寝室近くでした。すでに炎は消し止められましたが出火原因は現在も不明とのこと。なお火災に巻き込まれた女官及び侍女はいない模様です。ただ、淑妃付の下女の証言によりますと、昨日の昼過ぎに突然、下女の1人が倒れ昏倒したため慌てて他の下女と共に医局へと運ばれ間もなく亡くなったそうです」
えらいことになった。
どう考えても狙いは淑妃だ。
正確には淑妃の胎の子だろうが……。
「はぁ~……次から次へと……放火犯も分からん、被害者側の下女が亡くなる……どうなっているんだ、まったく」
「犯人の目撃情報も上がってきていませんが、面白い事が分かりました」
「なんだ?」
「亡くなった下女は数日前に貴妃様からの紹介状を持って配属されたばかりの下女でした」
なんとなく嫌な予感しかしない。
オレの眉間にしわが寄っているのをみて高力は楽しげに笑った。こいつの本性は間違いなく性悪だ!間違いない!!
「それでその紹介状を書いた貴妃は何て言っているんだ? お前なら知っているんだろう」
高力の言葉を待つことなく、オレは次の書類に目を通す。今度はなんだ……また放火事件かよ。……いや待て。これは……。
「……マジか……」
この書類には『賢妃の関与が疑わしい』と書かれている。
すぐに別の報告書を見るがそちらには『賢妃、書の達人なり。他者の文字を真似るのも容易く、特に文字の書き方は秀逸』とあった。
「まさかとは思うが……賢妃が……?」
俄かには信じられねぇ。
鄧賢妃は四夫人とはいえ、他の妃と比べると影が薄い。薄すぎる。……こう言っちゃあなんだが、賢妃は存在自体が気薄だ。大人しいとは聞いているし、実際、人見知りが激しい質だと言う事は実証済みだ。オレや高力だけじゃねぇ、知らない女官との会話が成り立たない程だ。いや、あれは場が持たないと言うべきだろうな……。とにかく、大人し過ぎるほど大人しい妃だ。その分、実家から連れてきた侍女が囲い込んでいる。
「あの賢妃が御大層な事はできないと思うが……う~~ん……まぁ、女は分からんからな……」
どんなに清らかな女子でも夜叉に変えちまうのが後宮だ。賢妃の腹の内なんか誰にも分からない。オレの言葉に高力は複雑な表情で首を振ると静かに口を開いた。
「いいえ。恐らくそれは無いでしょう。そもそも『書』の達人だからと言って犯人と決めつけることはできません。なにしろ、随分とあからさまですからね。疑ってくれと言っているようなものです」
「ムチャクチャ怪しいが……白ってことか?」
「どちらかと言うと灰色です。本人が手を出していなくとも周りが勝手に暴走する場合もありますからね」
「……ああ」
高力に言われてなんだか納得した。
通常、実家からの侍女は少数だ。それを賢妃は倍以上連れてきている。「極度のあがり症」と言う名目でな。
「罠でも仕掛けて見るか……」
ポツリと零した一言に高力は目を細めていた。
えらいことになった。
どう考えても狙いは淑妃だ。
正確には淑妃の胎の子だろうが……。
「はぁ~……次から次へと……放火犯も分からん、被害者側の下女が亡くなる……どうなっているんだ、まったく」
「犯人の目撃情報も上がってきていませんが、面白い事が分かりました」
「なんだ?」
「亡くなった下女は数日前に貴妃様からの紹介状を持って配属されたばかりの下女でした」
なんとなく嫌な予感しかしない。
オレの眉間にしわが寄っているのをみて高力は楽しげに笑った。こいつの本性は間違いなく性悪だ!間違いない!!
「それでその紹介状を書いた貴妃は何て言っているんだ? お前なら知っているんだろう」
高力の言葉を待つことなく、オレは次の書類に目を通す。今度はなんだ……また放火事件かよ。……いや待て。これは……。
「……マジか……」
この書類には『賢妃の関与が疑わしい』と書かれている。
すぐに別の報告書を見るがそちらには『賢妃、書の達人なり。他者の文字を真似るのも容易く、特に文字の書き方は秀逸』とあった。
「まさかとは思うが……賢妃が……?」
俄かには信じられねぇ。
鄧賢妃は四夫人とはいえ、他の妃と比べると影が薄い。薄すぎる。……こう言っちゃあなんだが、賢妃は存在自体が気薄だ。大人しいとは聞いているし、実際、人見知りが激しい質だと言う事は実証済みだ。オレや高力だけじゃねぇ、知らない女官との会話が成り立たない程だ。いや、あれは場が持たないと言うべきだろうな……。とにかく、大人し過ぎるほど大人しい妃だ。その分、実家から連れてきた侍女が囲い込んでいる。
「あの賢妃が御大層な事はできないと思うが……う~~ん……まぁ、女は分からんからな……」
どんなに清らかな女子でも夜叉に変えちまうのが後宮だ。賢妃の腹の内なんか誰にも分からない。オレの言葉に高力は複雑な表情で首を振ると静かに口を開いた。
「いいえ。恐らくそれは無いでしょう。そもそも『書』の達人だからと言って犯人と決めつけることはできません。なにしろ、随分とあからさまですからね。疑ってくれと言っているようなものです」
「ムチャクチャ怪しいが……白ってことか?」
「どちらかと言うと灰色です。本人が手を出していなくとも周りが勝手に暴走する場合もありますからね」
「……ああ」
高力に言われてなんだか納得した。
通常、実家からの侍女は少数だ。それを賢妃は倍以上連れてきている。「極度のあがり症」と言う名目でな。
「罠でも仕掛けて見るか……」
ポツリと零した一言に高力は目を細めていた。
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