後宮の右筆妃

つくも茄子

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第一章

61.犯人1

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 数日後、犯人が捕まった。
 その犯人が一連の女官殺しの真犯人であった事も判明する。

 果実酒に毒を仕込んだのは、元宝林げんほうりん

 元は徳妃の侍女で、陛下に見初められ侍妾から「宝林」にと成った女人。
 陛下との間に一人の皇子を産んでいた。

 果実酒を運んできたのは元宝林の侍女。
 宴の席で他の侍女に紛れて毒を入れるように命じられたというのだ。

 正確には、元宝林から渡された薬を杯に入れるように指示されたとか。侍女本人はそれが毒であるという事は知らなかったようで、何度も命乞いをしていたらしい。もっとも、皇帝の妃に薬を入れること自体が罪だ。当然、死罪を命じられた。
 

 侍女に命令した元宝林はというと――


『私は何もしておりません!これは何かの間違いです!!』

 そう言って取り乱したという。
 牢に入れられても容疑を否認し続けた。それは元宝林の部屋から毒物が発見されても変わる事はなかった。

『違う……何かの間違いだわ。毒なんて盛っていない。薬は……ただの痺れ薬で……そう聞いたから……』

 震えながら無実を訴えるも聞き入れられることはなく、その日のうちに死刑を命じられた。物的証拠がある以上、言い逃れなど聞き届けられるはずがない。

 調査により分かった事がもう一つあった。

 元宝林の隠し持っていた毒は、女官殺しに使われた毒である事が分かったのだ。

 女官達は毒殺の可能性が高い。
 疑いの余地なく元宝林による犯行だと決定付けられたのだ。
 ただ、とうの本人は最後の最後まで容疑を否認し続けた。
 刑場に引き摺られていっても尚、「嘘よ!」「私は殺してない」「どうして私が……」と叫んでいたという。そして処刑台の上に放り出されると、泣き叫び助けを求めていた。しかし無情にも執行人が斧を振り下ろした。

 彼女は自分の犯した罪を悔いることなく逝った。
 こうして、私の毒殺未遂事件及び女官変死事件の幕は呆気なく閉じた。

 


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