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第一章
57.千秋節3
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宴が賑やかになる中、私の前に果実酒が置かれた。
私の好きな酒の一つ。貴妃は事前に調べていたのだろう。その細やかな気遣いには感嘆する他なかった。いつもなら直ぐに飲み干してしまうのだけれど、生憎、今日はそんな気分でもなかった。宴の熱気とこの場に漂う甘い香りに酔ってしまい、さっきから気分が悪かった。
姉上と席が離れているせいかしら?
なんだか落ち着かない。
一応、正二品。
席順では上座にいるものの、淑妃である姉上とは向かい合う形になってしまっていた。これも仕方ない事なのだけれど、何かと貴妃と張り合う徳妃には特別配慮したのだろうと考えざるおえない。貴妃と向かい合う位置にいるのが徳妃なのだから……。主催する側とはいえ、ここまで徹底的なのも貴妃だからこそとも言えた。これが徳妃なら絶対に出来ないだろうことも分かる。私と徳妃の間に賢妃が座っている事で徳妃が私に絡んでくる心配もない。
ちらりと盗み見る形で徳妃を見る。
彼女はこの場の誰よりも華やかに装っている。
それがまた貴妃とは対照的だ。貴妃は華美になり過ぎない装いをしていたから。この宴は陛下を祝うと共に新しく入内した妃のお披露目の場でもあるのだろう。自分よりも妃達に花を持たせるあたり、貴妃らしいと言える。
それに比べて徳妃は派手好きというのか……派手過ぎる装いだ。しかも、彼女の後ろに控えている侍女達も徳妃に倣って煌びやかな衣を身に纏っていた。爛々とした眼差しで陛下を見つめる侍女達。彼女達の目的は容易に理解できた。陛下の「侍妾」を狙っているのだと。気に入られれば妃の位を手に出来る。徳妃も承知の上なのだろう。徳妃は美しい。けれど、妃達の中では年配者になっているのも確かだった。今後の事も踏まえて、自分の駒と成り得る者を陛下の閨に送り込みたい算段であるのは明白。それを指示したのはきっと彼女の親兄弟である事は想像がついた。徳妃に御子はいない。焦っているのかもしれない。それは徳妃か、それとも……。
「あらぁ~、巽才人様ではありませんことぉ?」
暢気に考え事をしている雑音が聞こえてきた。
私の好きな酒の一つ。貴妃は事前に調べていたのだろう。その細やかな気遣いには感嘆する他なかった。いつもなら直ぐに飲み干してしまうのだけれど、生憎、今日はそんな気分でもなかった。宴の熱気とこの場に漂う甘い香りに酔ってしまい、さっきから気分が悪かった。
姉上と席が離れているせいかしら?
なんだか落ち着かない。
一応、正二品。
席順では上座にいるものの、淑妃である姉上とは向かい合う形になってしまっていた。これも仕方ない事なのだけれど、何かと貴妃と張り合う徳妃には特別配慮したのだろうと考えざるおえない。貴妃と向かい合う位置にいるのが徳妃なのだから……。主催する側とはいえ、ここまで徹底的なのも貴妃だからこそとも言えた。これが徳妃なら絶対に出来ないだろうことも分かる。私と徳妃の間に賢妃が座っている事で徳妃が私に絡んでくる心配もない。
ちらりと盗み見る形で徳妃を見る。
彼女はこの場の誰よりも華やかに装っている。
それがまた貴妃とは対照的だ。貴妃は華美になり過ぎない装いをしていたから。この宴は陛下を祝うと共に新しく入内した妃のお披露目の場でもあるのだろう。自分よりも妃達に花を持たせるあたり、貴妃らしいと言える。
それに比べて徳妃は派手好きというのか……派手過ぎる装いだ。しかも、彼女の後ろに控えている侍女達も徳妃に倣って煌びやかな衣を身に纏っていた。爛々とした眼差しで陛下を見つめる侍女達。彼女達の目的は容易に理解できた。陛下の「侍妾」を狙っているのだと。気に入られれば妃の位を手に出来る。徳妃も承知の上なのだろう。徳妃は美しい。けれど、妃達の中では年配者になっているのも確かだった。今後の事も踏まえて、自分の駒と成り得る者を陛下の閨に送り込みたい算段であるのは明白。それを指示したのはきっと彼女の親兄弟である事は想像がついた。徳妃に御子はいない。焦っているのかもしれない。それは徳妃か、それとも……。
「あらぁ~、巽才人様ではありませんことぉ?」
暢気に考え事をしている雑音が聞こえてきた。
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