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第一章
48.皇帝side
しおりを挟む「貴妃の姪の入内は認めよう。だが、貴妃が静養殿に移るのはまた話は別だ。貴妃は朕よりも後宮の女子たちの信望を得ておる。その者らを置いて、一人だけ静養殿に行ってしまえば、貴妃を慕う者達も追いかけていこう。後宮は閑散としてしまうであろうからな」
「……陛下も御冗談がお上手ですわ。ですが、承知いたしました。私はこれからも他の妃達のまとめ役を引き受けましょう」
「助かる」
「勿体ないお言葉にございます」
「ただ、貴妃の姪の入内は年が明けてからにせよ」
「何か問題でもございますか?」
「後宮が落ちついてからの方が良いだろう。なんといっても、年末は忙しい時期だからな」
「承りました。それでは、来年の春頃に輿入れさせるよう手配致しますわ」
「あぁ、それが良いだろう」
丞相の許可を取らずとも独断できるだけの権力を郭家で持っているという事か。
貴妃は嫋やかな姿とは裏腹に強かだ。父親の企みは聞かずとも知っていよう。姪に寵愛がいくように身を引こうとする態度も恐らく計算の内だ。父親よりもよほど手強い。この者が女ではなく男だったなら郭家は栄えたであろうに……惜しいものだ。
娘でも孫でも幾らでも送り込んでくるといい。
その娘らを朕が相手をするかは別だ。
貴妃も人が悪い。
朕が姪を相手にしないであろうことを分かって話しているのだからな。朕の事を良く理解している証拠でもあるのだが……。本当に恐ろしい女子だ。
まぁ良い。どの道静養殿に入れる気は無い。静養殿に入れてしまえば、貴妃の影響力が衰える事はないのだからな。それは困るのだ。
それにしても、貴妃に仕えている女官……彼女らは郭家所縁の者達か? 縁者かもしれんな。朕が入内の件を断わると見越していたようで随分と驚いた顔をしておる。見た処、若い女人だ。腹芸が上手くできないのだろう。涼しい顔で顔色一つ変えない貴妃との差は大きい。
春か……。
何としても、それまでに巽家の姫に懐妊してもらわねばなるまい。
丞相の計画を潰す意味も込めてな。
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