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第一章
46.悪巧み
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「本日の朝儀は如何でございましたか?」
「どうしたもこうしたもない! 陛下は巽才人に皇子を産ますと宣言されたわ!!」
「それはまた……由々しき事態でございますな」
「そうよ、ただでさえ寵愛深いというのに……皇子まで産まれてしまうと空席となっている皇后と皇太子の地位は……」
「さりとて、御子の問題は神仏の采配。こればかりは如何に寵愛があろうとも分かりませぬ」
「だがな……」
「もしもの場合は如何様にもできましょう」
「……今までとは相手が違う。八州公の姫だ」
「はい。だからこそです。八州公を敵に回すことは国を揺るがしかねません。慎重にことを運ばねばなりません」
「そうだな……。それで? 何か策はあるのか?」
「今のところは何とも申し上げられません。まずは、情報を待つしかありません」
「そのような悠長な事を言っている場合ではない!このまま座して待てば巽才人の後宮の権限がいや増すばかりだぞ!!恐らく、此度の件は巽才人に一任されるだろう。そうなれば益々彼女の権力が増すばかりだ。早急に手を打つ必要がある!!」
「それは……危険やもしれませぬな。こう申しては何ですが……陛下は公平なお方。今まで妃を特別扱いすることはございませんでした。ましてや、地位と権利を一度に与えるなど……巽才人が強請ったにしても与えすぎです」
「全くだ!」
「もしも、巽才人に皇子が誕生しようものなら空席になっている皇后と皇太子の地位を陛下は与えるやもしれません」
「なんだと!? 私の娘を差し置いて!」
「落ち着いてください。そうなるかもしれないという可能性の話でございます」
「可能性でも捨て置けん!」
「如何致しますか?」
「巽才人に密偵を張り付かせろ」
「しかし、巽才人には護衛が付いております」
「侍女として潜り込ませればいい」
「それも難しいかと」
「なに!?」
「陛下は巽才人に仕える者を自ら厳選している程です」
「……それでもだ。どこかで隙はできる。これからは巽才人を最重要視しろ」
「では、淑妃の方は如何致しましょう」
「ふむ、淑妃の監視はいいだろう」
「宜しいのですか?」
「ああ」
「陛下の淑妃へのお渡しは増えておりますが……」
「だからこそだ。巽才人には宮を持たない代わりに陛下と寝室を共にしておる。それと、淑妃の宮には自室がある。陛下が淑妃の宮殿に頻繁に訪れているのは巽才人に会いに行っているに過ぎない。淑妃は巽才人の異母姉。妹に寵愛を奪われて面白くないだろう」
「揺さぶりを掛けますか?」
「いいや。その必要はない。我々が何もしなくともあの姉妹は既に亀裂が入っている筈だ。下手に関わって火の粉が飛んで来ないとも限らんからな。淑妃は無視しておいて構わん。その分、巽才人に集中してくれ」
「承知いたしました」
「それから、例の件を進める」
「まだお早いのではありませんか?」
「早いに越したことはない」
「では……」
「ああ、少々早いがあの子を後宮に送る」
「どうしたもこうしたもない! 陛下は巽才人に皇子を産ますと宣言されたわ!!」
「それはまた……由々しき事態でございますな」
「そうよ、ただでさえ寵愛深いというのに……皇子まで産まれてしまうと空席となっている皇后と皇太子の地位は……」
「さりとて、御子の問題は神仏の采配。こればかりは如何に寵愛があろうとも分かりませぬ」
「だがな……」
「もしもの場合は如何様にもできましょう」
「……今までとは相手が違う。八州公の姫だ」
「はい。だからこそです。八州公を敵に回すことは国を揺るがしかねません。慎重にことを運ばねばなりません」
「そうだな……。それで? 何か策はあるのか?」
「今のところは何とも申し上げられません。まずは、情報を待つしかありません」
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「それは……危険やもしれませぬな。こう申しては何ですが……陛下は公平なお方。今まで妃を特別扱いすることはございませんでした。ましてや、地位と権利を一度に与えるなど……巽才人が強請ったにしても与えすぎです」
「全くだ!」
「もしも、巽才人に皇子が誕生しようものなら空席になっている皇后と皇太子の地位を陛下は与えるやもしれません」
「なんだと!? 私の娘を差し置いて!」
「落ち着いてください。そうなるかもしれないという可能性の話でございます」
「可能性でも捨て置けん!」
「如何致しますか?」
「巽才人に密偵を張り付かせろ」
「しかし、巽才人には護衛が付いております」
「侍女として潜り込ませればいい」
「それも難しいかと」
「なに!?」
「陛下は巽才人に仕える者を自ら厳選している程です」
「……それでもだ。どこかで隙はできる。これからは巽才人を最重要視しろ」
「では、淑妃の方は如何致しましょう」
「ふむ、淑妃の監視はいいだろう」
「宜しいのですか?」
「ああ」
「陛下の淑妃へのお渡しは増えておりますが……」
「だからこそだ。巽才人には宮を持たない代わりに陛下と寝室を共にしておる。それと、淑妃の宮には自室がある。陛下が淑妃の宮殿に頻繁に訪れているのは巽才人に会いに行っているに過ぎない。淑妃は巽才人の異母姉。妹に寵愛を奪われて面白くないだろう」
「揺さぶりを掛けますか?」
「いいや。その必要はない。我々が何もしなくともあの姉妹は既に亀裂が入っている筈だ。下手に関わって火の粉が飛んで来ないとも限らんからな。淑妃は無視しておいて構わん。その分、巽才人に集中してくれ」
「承知いたしました」
「それから、例の件を進める」
「まだお早いのではありませんか?」
「早いに越したことはない」
「では……」
「ああ、少々早いがあの子を後宮に送る」
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