後宮の右筆妃

つくも茄子

文字の大きさ
上 下
40 / 82
第一章

40.巽夫人(母)side

しおりを挟む
 
 酷いわ、酷いわ!
 出産を終えたばかりの陀姫をするなんて!

 陀姫が夫以外の子供を産んだ?
 陀姫が巽家の血を引いていない?
 陀姫が旦那様の実子ではない?

 私が旦那様に聞いた数々の話。
 それらは今まで知らなかった事実だった。
  
「それがなんだっていうの!旦那様だって陀姫を娘としていたのよ?なら、楊家だって陀姫とその子供を家族として大切にするべきでしょう!? 陀姫が嘘をついていたからって何!? 圭殿は陀姫の“夫”でしょう!広い心で許してあげる度量がなくてどうするの!! 旦那様、これでは陀姫が可哀そうですわ。離縁させて家に戻らせてはどうかしら? 陀姫と子供の面倒くらいは巽家でみれますわ! そうだわ! いっその事、てはどうかしら。杏樹と陀姫を入れ替えてしまえば問題は解決だわ。元々、杏樹が圭殿に嫁ぐはずだったのですもの。少しばかり道が違っただけの話。楊家の方々も杏樹なら喜んで迎え入れますわ。産まれた子供を杏樹の子にしてしまえば万事上手くいきます。」

「いい加減にしないか!」

「だ、旦那様?」
 
「先ほどから黙って聞いていれば……そのような馬鹿げた真似ができる筈がないだろう!!」

「で、でも……杏樹は賢い子ですもの……楊家の怒りだって沈めて上手く回してくれます……」

「そういう問題ではない!只でさえ、婚姻を入れ替えさせているのだ、これ以上の暴論が許されるはずがない!」

「ですが……」

「それに、先ほどから杏樹、杏樹と呼び捨てにしているが……あの子は既に皇帝陛下の妃。それも『正二品の妃』だ。寵愛も著しいと世間でも専らの評判なのは知っているだろう。お前のしようとする事は皇帝陛下からお気に入りの寵妃を奪い取り他の男に献上する行為だ!だいたい、どうやって杏樹を楊家に嫁がす?後宮から呼び戻して無理矢理嫁がす気か?愚かな……それを実行する前に我らが反逆罪として滅ぼされる!! そんなことも理解できないとは……誰か!この愚か者を地下に幽閉せよ!!」

 なに!?
 何が起こっているの?

 扉から出てきた下男に両手を掴まれて訳が分からないまま地下室に入れられてしまった。
 屋敷にこんな場所があるなんて知らなかった。

 それよりも、何故、私がこんな場所に?

 何時も優しかった旦那様。
 聞いたこともない怒鳴り声だったわ。
 どうして怒られたのかしら?
 私はにしていただけなのに……。
 

「だって……今までそうやって上手くいってきたじゃない……それなのに……」

 分からない。
 何がいけないのか……。
 杏樹が皇帝陛下の寵妃だからいけないの?

 ……分からないわ。
 寵妃だからってなに?
 私の娘に違いないでしょう?
 なら、私の言う事を聞くのが“娘”のためというものだわ。

「それの何がいけないの……」

 


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

美しい姉と痩せこけた妹

サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。 ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。 ※短いお話です。 ※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。

【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた

杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。 なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。 婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。 勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。 「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」 その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺! ◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。 婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。 ◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。 ◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます! 10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!

【完結】6歳の王子は無自覚に兄を断罪する

土広真丘
ファンタジー
ノーザッツ王国の末の王子アーサーにはある悩みがあった。 異母兄のゴードン王子が婚約者にひどい対応をしているのだ。 その婚約者は、アーサーにも優しいマリーお姉様だった。 心を痛めながら、アーサーは「作文」を書く。 ※全2話。R15は念のため。ふんわりした世界観です。 前半はひらがなばかりで、読みにくいかもしれません。 主人公の年齢的に恋愛ではないかなと思ってファンタジーにしました。 小説家になろうに投稿したものを加筆修正しました。

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

処理中です...