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第一章
38.楊圭side
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「圭、母さんには内緒にする。私にだけは本当の事を話してくれ」
「父上……?」
「これはお前だけの問題ではない。楊家の将来が掛かっている。返答次第では相応の処置を施さなければならないんだ」
「いったい……」
「陀姫は半年そこらで子供を産んだ」
「父上まで疑うんですか? 陀姫は母上に酷くなじられ寝室から外に出られなくなっているんですよ! だいたい、早産だからなんですか!八ヶ月や七ヶ月で産まれた子供は他にもいます!息子は間違いなく私の子です!!」
「早産で産まれたばかりの赤子があんなに元気よく泣くものか!取り上げた産婆も医師も『子供は間違いなく正常な状態で産まれてきた』と証言している!……分かるか?この意味が。あの赤子は臨月で産まれてきたんだ。ここで問題になってくるのは、お前が何時から陀姫と懇ろになっていたか、だ。あの事件後、直ぐにお前達を婚姻させた。それが両家にとって一番傷がつかない方法だと思ったからだ。まさか、それが裏目にでるとはな……」
「父上、あの時も言いましたが、私は誓って陀姫と関係を結んではおりません」
「酔っぱらいの戯言に付き合う気はない」
「父上!」
「……まあ、それは冗談として。泥酔状態のお前の意見があの時反映されなかったのは致し方ない。だが、あの時関係を持ったとしても漸く七ヶ月を過ぎた頃あいだ」
「何が仰りたいんですか?」
「お前、事件前から陀姫と関係を持っていたんじゃないのか?」
「なっ!?」
「何を驚いている。既にお前達は婚姻しているんだ。今更、昔の事をほじくり返す気はない。だが、事は子供に関係している。どうなんだ?」
「そ、そんな訳ないでしょう!!!」
父上の余りの言いぐさに声を上げてしまった。
陀姫と婚姻したが杏樹を裏切ったことは無い!
憤慨する私とは裏腹に、父はガックリと肩を落としていた。
「違うのか……。そうか……なら間違いはないようだな。圭、陀姫の産んだ子供は残念ながらお前の子ではない」
「父上まで母上のようなことを!」
「……お前には酷かもしれんが事実だ。陀姫は恐らく腹に子がいる事を分かった上で嫁いできたのだ……いや、子供の父親が必要だと思ってお前と婚姻したという事になる。あの事件も偶然ではないだろう。お前と関係を持ったと思わせる事で、世間体が悪くなる前に既成事実を作ったんだ。でなければあの事件を起こした意味がない。つまり、子供は楊家の血を一滴も引かない他人だ」
「馬鹿げている!!父上、頭がおかしくなったのですか!!!」
余りにも荒唐無稽過ぎる。
納得がいかず喚き散らした私を見て、父が溜め息をつく。
「お前は知らんだろうが、陀姫の評判は巽一族内で最悪だ。元々、その出自を一族内で疑われていた。圭、陀姫の母親の身分を知っているか?」
「陀姫からは庶民出身の側室だと聞いていますが……違うのですか?」
「いや、それは確かだ。旅芸人の一座の舞姫だったらしい。巽家の当主が家督を継ぐ前に見初めて家の外で囲っていたようだ。家を継いでからは屋敷内の一角に母娘を住まわせたようだがな」
話がみえない。
正室に気を使って外で女を囲う男は多い。
「お前も鈍い奴だな。陀姫の実母も同じことをやらかしているという事だ。つまり、陀姫に巽家の血は流れていない」
「なっ!?」
思いもよらない言葉に絶句する他なかった。
「父上……?」
「これはお前だけの問題ではない。楊家の将来が掛かっている。返答次第では相応の処置を施さなければならないんだ」
「いったい……」
「陀姫は半年そこらで子供を産んだ」
「父上まで疑うんですか? 陀姫は母上に酷くなじられ寝室から外に出られなくなっているんですよ! だいたい、早産だからなんですか!八ヶ月や七ヶ月で産まれた子供は他にもいます!息子は間違いなく私の子です!!」
「早産で産まれたばかりの赤子があんなに元気よく泣くものか!取り上げた産婆も医師も『子供は間違いなく正常な状態で産まれてきた』と証言している!……分かるか?この意味が。あの赤子は臨月で産まれてきたんだ。ここで問題になってくるのは、お前が何時から陀姫と懇ろになっていたか、だ。あの事件後、直ぐにお前達を婚姻させた。それが両家にとって一番傷がつかない方法だと思ったからだ。まさか、それが裏目にでるとはな……」
「父上、あの時も言いましたが、私は誓って陀姫と関係を結んではおりません」
「酔っぱらいの戯言に付き合う気はない」
「父上!」
「……まあ、それは冗談として。泥酔状態のお前の意見があの時反映されなかったのは致し方ない。だが、あの時関係を持ったとしても漸く七ヶ月を過ぎた頃あいだ」
「何が仰りたいんですか?」
「お前、事件前から陀姫と関係を持っていたんじゃないのか?」
「なっ!?」
「何を驚いている。既にお前達は婚姻しているんだ。今更、昔の事をほじくり返す気はない。だが、事は子供に関係している。どうなんだ?」
「そ、そんな訳ないでしょう!!!」
父上の余りの言いぐさに声を上げてしまった。
陀姫と婚姻したが杏樹を裏切ったことは無い!
憤慨する私とは裏腹に、父はガックリと肩を落としていた。
「違うのか……。そうか……なら間違いはないようだな。圭、陀姫の産んだ子供は残念ながらお前の子ではない」
「父上まで母上のようなことを!」
「……お前には酷かもしれんが事実だ。陀姫は恐らく腹に子がいる事を分かった上で嫁いできたのだ……いや、子供の父親が必要だと思ってお前と婚姻したという事になる。あの事件も偶然ではないだろう。お前と関係を持ったと思わせる事で、世間体が悪くなる前に既成事実を作ったんだ。でなければあの事件を起こした意味がない。つまり、子供は楊家の血を一滴も引かない他人だ」
「馬鹿げている!!父上、頭がおかしくなったのですか!!!」
余りにも荒唐無稽過ぎる。
納得がいかず喚き散らした私を見て、父が溜め息をつく。
「お前は知らんだろうが、陀姫の評判は巽一族内で最悪だ。元々、その出自を一族内で疑われていた。圭、陀姫の母親の身分を知っているか?」
「陀姫からは庶民出身の側室だと聞いていますが……違うのですか?」
「いや、それは確かだ。旅芸人の一座の舞姫だったらしい。巽家の当主が家督を継ぐ前に見初めて家の外で囲っていたようだ。家を継いでからは屋敷内の一角に母娘を住まわせたようだがな」
話がみえない。
正室に気を使って外で女を囲う男は多い。
「お前も鈍い奴だな。陀姫の実母も同じことをやらかしているという事だ。つまり、陀姫に巽家の血は流れていない」
「なっ!?」
思いもよらない言葉に絶句する他なかった。
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