後宮の右筆妃

つくも茄子

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第一章

23.地位4

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「済まなかった」

「青……? 急にどうしたの?」

 何故か青に謝られた。

「ちゃんと謝ってなかったからさ」

「謝る理由なんてあった?」

「危ない目にあわせたし……結局、後宮からだしてやれねぇし……」

 しょんぼりとしている青。
 それだけなら責任を感じているんだな、と思うのだけど左頬が腫れあがっているのが気になる。

「何かあったの? ……その頬」

 どう見ても殴られたとしか思えない。

「ああ……高力こうりきにやられた」

「ごめん。誰それ?」

「ああ……オレの副官」

「副官に殴られたの?」

「ああ……オレの安易な行動のせいで杏樹が危険な目にあったから……」

「でも、協力関係だったんだから合意の上でしょ?」

「素人に間者の真似事さしたオレが悪いって……訓練を受けた玄人だって失敗する事あるのに……普通のお嬢様を使うなんてって……オレが巽家の娘だから大丈夫だって言ったら余計に怒られた。後宮で侍女としてきている令嬢に何やってるんだって……杏樹が巽家の令嬢だって他の連中知らねぇから……なんかあっても助けられないって……」

 ボソボソと経緯を言う青はその副官に叱られてかなり落ち込んでいた。
 私に対する罪悪感も無くはない。けど、どちらかというと副官にこっぴどく叱られた事の方がショックみたい。上官を叱り飛ばす部下って一体……。

 その後も心ここにあらずの状態で副官のことを喋っていく。

 身長は六尺五寸の大男で、髭ずらで常に黒眼鏡をかけていること。
 素顔は美形で、ちゃんと髭剃って眼鏡を外していれば黙っていても女が寄ってくる程の美男子。なのに本人は頑なに嫌がっている。理由は左目を怪我をしたせいで失明しているらしく、事故の怪我も目立つので他の人に怖がられたり不快な思いをさせないための配慮らしい。青はそれを残念がっていた。「自分の額の傷のような痣より何倍もマシ」、「左目の傷だって男の勲章だ」、「傷があっても美形」とのこと。性格も勤勉かつ真面目で、人にも自分にも厳しい。弱きを助け強きを挫く優しい人なのだそう。

 青の副官への賛美は留まる事はなかった。
 まぁ、それだけ副官大好きだと言う事は嫌でもよく分かった。
 要は、副官に言われて謝罪をしに来たという事だ。私の許しを得るまで戻って来るなと言われたらしい。納得の理由である。心の広い私は青を快く許してあげよう。なので、その副官大好き話はそろそろ終わってくれないだろうか?昼間にきて日が暮れ始めているのだけど……これ、何時まで続くの?





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