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第一章
22.地位3
しおりを挟む「無位無官の侍女ではイザという時に助けられないわ」
「はい……」
「かといって私の妹という地位だけでも後宮では弱いの。貴女を守るためには相応の地位は必要だと陛下は考えたのよ」
なるほど。
それで私は『才人』を与えられた訳だ。そして、後宮内での発言権や影響力を強める狙いもあるらしい。確かにそれなら納得出来るし理解できた。しかし、まだ問題がある。
「何故、陛下の部屋に私の部屋を作られるのですか?そんなことをすれば争いの元になるのでは?」
実際、何もない清らかな関係だとしても「同じ部屋で寝起きする間柄」となると男女の仲と思われるのは間違いないだろう。後宮というのはそんな所なのだ。私は皇帝陛下の寵を競う必要がないし、するつもりは毛頭ない。だけど第三者から見ると寵愛を独り占めしている状態だ。その様な状況は良くないのでは無いだろうか。そんな考えは直ぐに否定された。
「いいえ、そんなことはないわ。寵愛が厚いと思われていた方が安全よ。いいこと、杏樹。この後宮において何よりも大事なのは皇帝陛下の寵愛よ。四夫人でさえも寵愛が少ないとそれだけで侮られてしまうわ。それに、陛下の寵愛があるという事は、貴女を襲った犯人達も迂闊に手が出せないでしょう?貴女の身に何かあれば真っ先に動かれるのは陛下なのだからね。だから『才人』という位を与えられている限りは貴女の安全を保障できるわ」
姉上の言葉に少しだけ引っ掛かりを覚えた。それは、つまり……。
「犯人はまだ捕まっていないのですか?」
私の問い掛けに姉上は困った様に笑みを浮かべた。
「貴女が監禁されていた場所が場所だけにね」
それは、そうだ。
私が閉じ込められていた場所は冷宮の中でも最も端にある建物だ。誰も好き好んで足を踏み入れない場所である。そこを根城にするとしたら相当準備をしたことになるだろう。
「犯人の目的も何も分かっていないわ。貴女は自分を襲った犯人の顔を見ていないようだけど、犯人達からしたら取り逃がした貴女の存在は脅威以外の何物でもないわ。また狙われる恐れは十分あるの。今まで以上に気を引き締めなければなりません」
「……はい」
姉上の言葉に私は何も言えなかった。
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