22 / 82
第一章
22.地位3
しおりを挟む「無位無官の侍女ではイザという時に助けられないわ」
「はい……」
「かといって私の妹という地位だけでも後宮では弱いの。貴女を守るためには相応の地位は必要だと陛下は考えたのよ」
なるほど。
それで私は『才人』を与えられた訳だ。そして、後宮内での発言権や影響力を強める狙いもあるらしい。確かにそれなら納得出来るし理解できた。しかし、まだ問題がある。
「何故、陛下の部屋に私の部屋を作られるのですか?そんなことをすれば争いの元になるのでは?」
実際、何もない清らかな関係だとしても「同じ部屋で寝起きする間柄」となると男女の仲と思われるのは間違いないだろう。後宮というのはそんな所なのだ。私は皇帝陛下の寵を競う必要がないし、するつもりは毛頭ない。だけど第三者から見ると寵愛を独り占めしている状態だ。その様な状況は良くないのでは無いだろうか。そんな考えは直ぐに否定された。
「いいえ、そんなことはないわ。寵愛が厚いと思われていた方が安全よ。いいこと、杏樹。この後宮において何よりも大事なのは皇帝陛下の寵愛よ。四夫人でさえも寵愛が少ないとそれだけで侮られてしまうわ。それに、陛下の寵愛があるという事は、貴女を襲った犯人達も迂闊に手が出せないでしょう?貴女の身に何かあれば真っ先に動かれるのは陛下なのだからね。だから『才人』という位を与えられている限りは貴女の安全を保障できるわ」
姉上の言葉に少しだけ引っ掛かりを覚えた。それは、つまり……。
「犯人はまだ捕まっていないのですか?」
私の問い掛けに姉上は困った様に笑みを浮かべた。
「貴女が監禁されていた場所が場所だけにね」
それは、そうだ。
私が閉じ込められていた場所は冷宮の中でも最も端にある建物だ。誰も好き好んで足を踏み入れない場所である。そこを根城にするとしたら相当準備をしたことになるだろう。
「犯人の目的も何も分かっていないわ。貴女は自分を襲った犯人の顔を見ていないようだけど、犯人達からしたら取り逃がした貴女の存在は脅威以外の何物でもないわ。また狙われる恐れは十分あるの。今まで以上に気を引き締めなければなりません」
「……はい」
姉上の言葉に私は何も言えなかった。
1
お気に入りに追加
930
あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。


(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

失った真実の愛を息子にバカにされて口車に乗せられた
しゃーりん
恋愛
20数年前、婚約者ではない令嬢を愛し、結婚した現国王。
すぐに産まれた王太子は2年前に結婚したが、まだ子供がいなかった。
早く後継者を望まれる王族として、王太子に側妃を娶る案が出る。
この案に王太子の返事は?
王太子である息子が国王である父を口車に乗せて側妃を娶らせるお話です。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる