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第一章
12.妃の死2
しおりを挟む「青、どう思う?」
私は後宮での情報集めをしていた。情報収集と言っても女官同士の他愛のない噂話まで幅広く調べ上げただけなんだけど。
「どうもこうもないだろう。杏樹の言った通りだろうぜ」
「やっぱり、只の噂って訳ではないのね」
「まあ、そうだな。事故死で処理された尚美人は今まで死んだ女官とは手口が違い過ぎる」
「どういう意味?」
「そのままの意味さ。女官達は十中八九毒殺だろう。だが、尚美人は事故に見せかけて殺されたってことだ」
「でも、どうしてそんな事をする必要があるの?」
「さぁな。それはオレにも分からん。ただ言える事は後宮内で何かが起きているって事だけだ」
「後宮の妃達が狙われているの?」
「いや、一丸にそうとは言えない。なにしろ、妃付きじゃない女官も死んでいるからな。妃狙いならわざわざ部屋付きじゃない者を手を掛ける必要もないだろう」
「確かに……でも、それなら誰の仕業なのかしら? そもそも一体何時からこんな事になっているの? 女官達に聞いても要領を得ないし……」
「まぁな。年季明けに後宮から出された女官も多い。婚姻の箔付けに二、三年花嫁修業と題して後宮女官になるお嬢さん連中もいるからな。その辺じゃあ娯楽程度の噂しかしらねぇだろうぜ」
「人が死んでいるっていうのに……」
「出ていく側の人間からしたら自分は関係ないって思ってんだろ」
「目的も分からず殺されてるのに?」
「ああ。自分は大丈夫って言う安心感がどっかにあるんだろう。まあ、それもあながち間違ってない。好奇心に深入りしなけりゃ問題ない部分もある。ま、なんらかの偶然が重なって殺される場合もあるだろうが確率的には低いからな」
青は身も蓋もない考えを口にする。気持ちは分かるけどね。これ以上、お嬢様女官に聞いた処で意味は無いから止めろという事だろう。そうなると後は上級女官に聞くしかない。でも、上級女官と会う機会なんて訪れないのよね。他に何か手立てはないかしら?
「それじゃあ、古参の女官に聞いてみるのはどう? 古くから後宮に居るのなら噂の真偽を知っている筈だわ」
「それはよせ」
「どうして?」
「その辺は口が堅い。古参のしかも中級女官なんて特にな。後宮に骨をうずめる連中ばかりだ。慎重で用心深い。それに上と下、両方との繋がりがある。怪しと思った瞬間に上に報告されちまうし、下を使って排除にかかる。ある意味で敵に回すと怖い連中だ」
憮然とした表情で淡々と忠告してくる。
けど、詳しくない?
もしかして何かした後?
だから私に忠告してくるの?
なんだか愚痴っぽくなってきてるし、ここら辺で話を変えないと不味い。
「な、なら上級女官は?」
話をそらした私は悪くないだろう。
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