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第一章
9.巽淑妃(美娘)side
しおりを挟む「杏樹様と近しい年齢の将来有望な殿方を調べました結果、該当する者が数名いらっしゃいました。その中で、人柄、家柄、財産などを照らし合わせたところ、文官では王蘭様が武官では霍凱様が相応しく思われます」
「そう……ありがとう」
「ただ、この二名以外にも候補はいらっしゃいますが、杏樹様のお眼鏡に適うかどうかは分かりかねます。それに……」
「何かしら?」
「いえ、何でもございません」
「言いかけて止めるのは感心しないわね」
「申し訳ございません。淑妃様のご意思に反するような事がございますので控えさせていただきました」
「言って頂戴。私は気にしないわ」
「では失礼して……。お二人とも杏樹様より年上ですので、既に幾つかの見合い話が持ち込まれております。それと……」
「まだ何かあるの?」
「はい。実は、お二人揃ってかなりの出世欲の持ち主でございます。霍凱様は先々代の時代に一族から“貴妃”がでた事により家格も高くなりましたが、宮中に置かれては新参者の一族。対して、王蘭様は旧家の出身ですが中央との繋がりが薄い家柄でございます。その事も踏まえて杏樹様に伺っていただかないといけません」
「出世のために杏樹を娶るかもしれないと言いたいのね?」
「はい」
そうね。
夏葉の言う通りだわ。
それが普通の考えだと思うわ。
ただでさえ巽家の娘という肩書きは強いもの。まして、今は皇后に次ぐ序列第三位の巽淑妃の妹となれば、自分の利益のためだけに「妻」に迎えようとする者が後を絶たないわ。それこそ権力志向の強い者達なら、この機を逃すはずがないでしょうね。かと言って、うだつの上がらない男の下に嫁がすなど論外だわ。
「……第一候補者はとりあえずはその二人にしておきましょう。他はまだ判断がつかないわ。引き続き調べて頂戴」
「かしこまりました」
夏葉が退室すると、ふぅと息をついた。
結婚相手の家柄が下なのは特に問題はしていないわ。それでも、杏樹を出世の道具にしようとする者の元に嫁がす事など出来る筈もない。
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