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五十年前の「とある事件」
79.第二王子視点
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僕のせいじゃない。
そうだろう?
僕はカタリナが聖女候補だって知らなかった。
なのに父や兄が僕のせいだって言う。
何故?
どう考えても僕のせいじゃない。
だって、母上は言ったんだ。
『幾ら何でも伯爵家なんて。王子の婿入りなら侯爵より上のはずでしょう?きっと伯爵家が嫌らしい手を使ってきたのね。ええ、そうに違いないわ』
『伯爵家程度で妥協しなきゃいけないなんて、我が国は終わっているのかしら? 』
格下の伯爵家との縁組に、母上は不満だった。
『カタリナが調子に乗らないように、貴男がしっかりと手綱を握っておきなさいよ。絶対に主導権を渡さない事!いいわね!! 』
だから、僕はカタリナが増長しないように、言って聞かせた。それだけだ。
なのに何故、僕の責任になる?
おかしいじゃないか。僕は何もしていないのに。
それに、カタリナだって悪かったんだ。
伯爵家で虐げられていたことを言わなかった。
言ってくれたら僕だって、手を差し伸べたさ。
『お前がここまで愚かだったとはな』
どうして?
父上と兄上が僕を責める。
母上は二人の後ろで顔を真っ青にしてしていた。
自室で謹慎していた。
それだけでも不満だったのに。
カタリナが聖女候補?
聖女になる?
もしかすると大聖女になれるかもしれない?
何だよ……それ……?
僕は知らない。
言ってくれれば良かったのに。
そうしたら結婚だって嫌がらなかった。
「もっと早くお前を始末しておくべきだった。肉親の情を捨てるべきだったのに……」
兄上が悔し気に言う。
何だよそれ?
「我々は許されない。決してな……。お前を楽にしてやることはない。この国のために奉仕活動をしてもらう。安心しろ。一人じゃない。あの伯爵親子と一緒だ」
何を言っているんだ?
兄上の言っていることが理解できない。
僕の知らないところで僕の未来が決定していた。
訳が分からないまま連れていかれた場所で、兄の言う“奉仕活動”に従事した。
来る日も来る日もマズイ薬を飲まされる。
昨日なんか一晩中、高熱でうなされた。
その前は嘔吐と下痢が繰り返された。
あまりのきつさに、これは現実じゃないと思う程だった。悪夢なら覚めて欲しいとさえ思った。
人って結構頑丈にできている。
こんな状態でも生きているんだ。
ああ……でもそろそろ限界かな?
意識が朦朧としてきた。
このまま死ぬのかな?
カタリナはどうしているだろう?
父上は?
兄上は?
母上はどうして助けにきてくれないんだ?
僕はずっと母上の言う通りに行動してきたのに……。
もう……限界だ……。
「ぼくの……せいじゃ……な……い……」
そうだろう?
僕はカタリナが聖女候補だって知らなかった。
なのに父や兄が僕のせいだって言う。
何故?
どう考えても僕のせいじゃない。
だって、母上は言ったんだ。
『幾ら何でも伯爵家なんて。王子の婿入りなら侯爵より上のはずでしょう?きっと伯爵家が嫌らしい手を使ってきたのね。ええ、そうに違いないわ』
『伯爵家程度で妥協しなきゃいけないなんて、我が国は終わっているのかしら? 』
格下の伯爵家との縁組に、母上は不満だった。
『カタリナが調子に乗らないように、貴男がしっかりと手綱を握っておきなさいよ。絶対に主導権を渡さない事!いいわね!! 』
だから、僕はカタリナが増長しないように、言って聞かせた。それだけだ。
なのに何故、僕の責任になる?
おかしいじゃないか。僕は何もしていないのに。
それに、カタリナだって悪かったんだ。
伯爵家で虐げられていたことを言わなかった。
言ってくれたら僕だって、手を差し伸べたさ。
『お前がここまで愚かだったとはな』
どうして?
父上と兄上が僕を責める。
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それだけでも不満だったのに。
カタリナが聖女候補?
聖女になる?
もしかすると大聖女になれるかもしれない?
何だよ……それ……?
僕は知らない。
言ってくれれば良かったのに。
そうしたら結婚だって嫌がらなかった。
「もっと早くお前を始末しておくべきだった。肉親の情を捨てるべきだったのに……」
兄上が悔し気に言う。
何だよそれ?
「我々は許されない。決してな……。お前を楽にしてやることはない。この国のために奉仕活動をしてもらう。安心しろ。一人じゃない。あの伯爵親子と一緒だ」
何を言っているんだ?
兄上の言っていることが理解できない。
僕の知らないところで僕の未来が決定していた。
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意識が朦朧としてきた。
このまま死ぬのかな?
カタリナはどうしているだろう?
父上は?
兄上は?
母上はどうして助けにきてくれないんだ?
僕はずっと母上の言う通りに行動してきたのに……。
もう……限界だ……。
「ぼくの……せいじゃ……な……い……」
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