悪役令嬢の私は死にました

つくも茄子

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200年後

54.勇者召喚2

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「警戒されてるってことだよ」

「警戒?」

「そう。神殿側としてはこれ以上、モンティーヌ聖教国に力を持たれたら困るってヤツだよ。あ、この場合軍事力とかじゃなくて信仰心の方ね」

「……それって……」

「フランにも心当たりあるでしょ?」

「ここ数年、モンティーヌ聖教国の神殿に詣でる人が増えていますけど……まさか……」

「そのまさかだよ。モンティーヌ聖教国は大聖女フランが居るばかりか次世代の聖女を輩出している。まぁ、それは良い事なんだけど、それによってモンティーヌ聖教国を神聖視する人間が増えてきている。この国の神殿ってフラン信者ばっかりだしね。枢機卿団が何か言ってもいうこと聞かないし。他の神殿側からしたら、モンティーヌ聖教国の力を削ぎたいっていうのが本音だろうね」

 いつの間にか信仰の対象にされていた。
 私、別にそんなつもりないんだけど。
 観光で潤っていると思っていたら、まさかの聖地巡礼だった。

「なんか……ごめんなさい?」

 思わず謝ってしまった。
 いや、謝ることでもないんだろうけど。

「別に謝らなくても良いよ。僕としては全く問題ないから。むしろ大歓迎。フラン信者が増えれば増えるほど、神殿の立場が弱くなる。ということは枢機卿団の影響力が弱まる。良い事づくしだ」

 ブレない。
 ゴールド枢機卿の神殿嫌いは筋金入りだった。

「だからフランには悪いけど、勇者召喚については傍観者でいて欲しいんだ」

「傍観?」

「うん。勇者を召喚した後も極力関わらないでいて欲しい」

「それは別に構いませんけど……いいんですか?」

「うん。一応、召喚の儀には立ち会ってもらうけどね」

「立ち会うんだ……」

「近日中に招待状が届くと思うよ」

「わかりました」

 こうして私は勇者召喚に立ち会うことになったのだった。








 ゴールド枢機卿の言った通り、枢機卿団から勇者召喚の儀への招待状が届いた。
 日程は二か月後。
 場所は元ロベール王国の跡地。

「えぇ……なんでまた……」

 思わずそう呟いてしまったのも仕方がないと思う。
 まさかここにきて、あの国が。いや、もう国じゃないけど……国じゃないけど……枢機卿団の肝いりの土地ではあるけど……よりにもよってなんでその場所で勇者召喚をするのよ!
 嫌がらせ?
 これって私に対する嫌がらせ?嫌がらせなの? ちょっと怒りがこみ上げてくる。

「意義申し立てしたい」

 無理だけど。


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