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200年後

53.勇者召喚1

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 イリスが婚約を解消して百年が経つ。
 ロベール王国が解体されて百年後。


 魔王の誕生。

 千年に一度の出来事。
 遠い過去の遺物だと思っていたのに。

 おかしい。
 私は『乙女ゲーム』の世界に転生したはず。
 なのに、いつの間にか剣と魔法の『勇者と魔王の戦いファンタジー』の世界になってる。
 学園モノのドキドキハラハラな物語じゃなくて、戦闘モノメインに移行してない?気のせい?気のせいじゃないよね、コレ。

 しかも『乙女ゲーム』は既に終了している。

 そもそも勇者ってどうやって決めるの?
 何を基準にしているの?
 ファンタジーにありがちな「召喚魔法」っていうけど。
 それって『異世界ファンタジー』……いやいや。元々異世界ファンタジーだから……。

 でもこれってやっぱりジャンル変わってない?

 え?
 本当に勇者ってどう選ぶの?
 その前に誰が召喚するの?

 ……わからない。
 彼奴ら神殿側なにも言ってこないだもの!







「そりゃ、フランには言わないよ」

 ゴールド枢機卿が、私の疑問に答えてくれた。

「だってフラン、枢機卿団に反目してるし」

「反目なんかしてません!」

 なんて人聞きの悪い!
 私は平和主義者なんですから!
 枢機卿団の言うことに逆らったことなんかありません!

「でも、神殿のやり方に疑問を持ってるのは事実でしょ?」

「……それは……そう、ですけど……」

「まぁ、その辺はさぁ。僕達も同じだからフランのことをとやかく言えないんだけどね。フランだけじゃない。モンティーヌ聖王国自体が神殿に……この場合、枢機卿団かな?彼らにマークされていてもおかしくないよね。だって、彼らと折り合いの悪い連中のたまり場みたいになってるもん。そりゃあ、警戒するよ」

「それは……確かに……」

 ゴールド枢機卿の言う通りだった。
 深く考えてこなかったけれど、ゴールド枢機卿を始め、神殿側とは少々アレな感じで、枢機卿団と心理的に相いれない。
 かといって、別に反神殿的な教義を掲げているわけじゃないので、敵対する理由も特にない。
 個人的には嫌いなだけで敵対するつもりはないし、そんなことをすればこっちだって無傷ではいられない。そもそも宗教が相いれないからとなりふり構わず「間違ってる」と言うのはちょっとね。
 個人的には関わりたくない。
 こっち見んな、の心境。

 関わりたくなくても向こうからくるから厄介なのよね。
 いつもは嫌でも関わらせようとするのに、今回に限ってはそれがない。

 それって逆に不自然じゃない?


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