悪役令嬢の私は死にました

つくも茄子

文字の大きさ
上 下
53 / 82
100年後

51.ゴールド枢機卿視点2

しおりを挟む
 
 結果から言うと大丈夫じゃなかった。

 部下からの続報によると、神殿の地下牢には幼い子供が鎖に繋がれて監禁されていると言うじゃないか!!しかも、村人達から虐待を受けているという証言も上がってきた!!!
 何じゃ、そりゃ!? 一体どういう事だよ!?
 しかも子供は五、六歳くらいの幼児との報告……。
 おいおい、いくら何でも幼すぎ!!
 一体いつからそんな状況だったんだ。その前に何で子供を監禁して虐待していたんだよ?意味不明。理解不能。

 これは早急に対処しなければマズいね――と思った。

 その国の権力者に話を通すべきか、とも考えた。でもねぇ、こういった村関係は国の力が届き難くて放置されていたりする。国と国の国境からはかなり離れているのも原因なんだけど、それにしてはもう酷い。酷すぎて言葉がでないよ。

 聖王国から使者を送り対策を取るように促した。
 それ以外に方法ってないんだよね。

 フランも呆れてた。


『外からアクションを掛けた方が動きやすいでしょう』

『誰だって国の恥を外には出したくないもの』

『聖王国の言葉を無視する事はないでしょう』


 なんて言いながら同意してくれた。
 そして使者を遣わすことになった。でも、多分……その村はもうダメだろう。
 どんな理由があるにせよやっている事は犯罪だ。その証拠を神殿の地下に隠していると報告したし……まぁ、証拠が無くても同じように処理されただろうけどね。その村の関係者達は、もう「終わり」だろう。後はあの国の人間がどう対処するのか見モノだよね。
 しかしなぁ~、こんな犯罪って本当に起きるんだね。しかも聖女見習いが滞在する村で起こるだなんて――ついてないよねぇ?


  それからさらに数日後、神殿の地下にある隠し部屋と地下牢を調べた結果を知らせに来た部下から驚愕する報告がなされた。
 なんとその女児は「聖属性」の持ち主だという! 
 何、その子……神の子じゃん。正確には「神の愛し子」。……今の時代にまだそんな存在が居たんだ。希少種だよ、ほんとに。
 そんな子を監禁とかあり得ない……。
 しかも、その地下牢はがあったらしい。

 おいおい、何?それ!?

 そんな重要な案件が隠ぺいされているなんて――この国大丈夫? あ、そういえばこの神殿って旧時代の遺跡なんだっけ?ヤバくない?え?その女児を村から移動して本当に大丈夫?……聖女一行は速やかに村から立ち去った方がいいねっ!

 イリス達は女児の保護を名目に村を後にした。
 ただし、イリス達が村から出た瞬間に村が壊滅してしまった。

 やっぱり!!

 村全体が湖になったって何だよ!?


 その後がもう大変だった。
 これは後から解った事だけど、村は元々水神を祀っていたらしい。
 多分だけど女児は「水神の巫女」の家系だったんじゃないかな?千年前はそういった「巫女の家系」は珍しくなかったしね。で……そんな村は元々あった水神信仰を止めてしまったわけか。
 まぁ、巫女がいれば水に関しては何の問題もない。
 最初は有難がられていても年月と共にそれが「あたりまえ」と受け止められていくのもまた人間社会ではよくある事だ。残念だけどね。

 それでも「巫女」っていうのは誰でもなれるものじゃない。力を使いこなせるように修行する必要がある。保護された女児は強い「聖気」持ちだと判明した。


【女児たちのはが、その力はです――】


 興奮しきった部下からの報告書。
 若干、字の乱れがあった。


 【女児たちを聖王国へ移送致します――】


 ここに来るんだ。
 まぁ、妥当な線だろうな……。


 それにしても力がコントロールできない……か。

 
 きっと赤ん坊の時なんか無意識に力を使ってたんじゃないのかな?報告書には親は女児が二歳の時に死んでいるとある。恐らく、親から受け継いだ力だったんだろう。親が生存していればこんな目には合わなかった筈だ。コントロールできない子供の力を押さえられるのはその親だけ。

 両親共に親族なし。

 最悪のパターンだ。
 親が死んで直ぐに神殿の地下牢へ閉じ込められていたわけだ。
 まぁ、普通の人間からすると幼児が泣いただけで洪水が起こる程の大雨が降ったり、台風クラスの暴風雨が襲ったりといった事が起これば怖い。
 そりゃ、「バケモノ」とか「悪魔付き」とか言われるのは仕方ないね。村ぐるみだったわけだし……。うん。村が湖の底に沈んだのも村人が一人残らず死んだのも自業自得って奴だ。信仰を忘れずに女児を大事にしていれば恩恵もあったんだろうけどねぇ。

 今まで恩恵をタダ同然で貪っていたツケだ。
 仕方ないよね。
 神様を怒らせちゃったんだから。

 ほんと、馬鹿な事をしたもんだ。




 

しおりを挟む
感想 126

あなたにおすすめの小説

【12話完結】私はイジメられた側ですが。国のため、貴方のために王妃修行に努めていたら、婚約破棄を告げられ、友人に裏切られました。

西東友一
恋愛
国のため、貴方のため。 私は厳しい王妃修行に努めてまいりました。 それなのに第一王子である貴方が開いた舞踏会で、「この俺、次期国王である第一王子エドワード・ヴィクトールは伯爵令嬢のメリー・アナラシアと婚約破棄する」 と宣言されるなんて・・・

実は私が国を守っていたと知ってましたか? 知らない? それなら終わりです

サイコちゃん
恋愛
ノアは平民のため、地位の高い聖女候補達にいじめられていた。しかしノアは自分自身が聖女であることをすでに知っており、この国の運命は彼女の手に握られていた。ある時、ノアは聖女候補達が王子と関係を持っている場面を見てしまい、悲惨な暴行を受けそうになる。しかもその場にいた王子は見て見ぬ振りをした。その瞬間、ノアは国を捨てる決断をする――

【完結】「私は善意に殺された」

まほりろ
恋愛
筆頭公爵家の娘である私が、母親は身分が低い王太子殿下の後ろ盾になるため、彼の婚約者になるのは自然な流れだった。 誰もが私が王太子妃になると信じて疑わなかった。 私も殿下と婚約してから一度も、彼との結婚を疑ったことはない。 だが殿下が病に倒れ、その治療のため異世界から聖女が召喚され二人が愛し合ったことで……全ての運命が狂い出す。 どなたにも悪意はなかった……私が不運な星の下に生まれた……ただそれだけ。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します。 ※他サイトにも投稿中。 ※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」 ※小説家になろうにて2022年11月19日昼、日間異世界恋愛ランキング38位、総合59位まで上がった作品です!

【完結】たぶん私本物の聖女じゃないと思うので王子もこの座もお任せしますね聖女様!

貝瀬汀
恋愛
ここ最近。教会に毎日のようにやってくる公爵令嬢に、いちゃもんをつけられて参っている聖女、フレイ・シャハレル。ついに彼女の我慢は限界に達し、それならばと一計を案じる……。ショートショート。※題名を少し変更いたしました。

素顔を知らない

基本二度寝
恋愛
王太子はたいして美しくもない聖女に婚約破棄を突きつけた。 聖女より多少力の劣る、聖女補佐の貴族令嬢の方が、見目もよく気もきく。 ならば、美しくもない聖女より、美しい聖女補佐のほうが良い。 王太子は考え、国王夫妻の居ぬ間に聖女との婚約破棄を企て、国外に放り出した。 王太子はすぐ様、聖女補佐の令嬢を部屋に呼び、新たな婚約者だと皆に紹介して回った。 国王たちが戻った頃には、地鳴りと水害で、国が半壊していた。

将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」 5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。 その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

【完結】残酷な現実はお伽噺ではないのよ

綾雅(要らない悪役令嬢1巻重版)
恋愛
「アンジェリーナ・ナイトレイ。貴様との婚約を破棄し、我が国の聖女ミサキを害した罪で流刑に処す」 物語でよくある婚約破棄は、王族の信頼を揺るがした。婚約は王家と公爵家の契約であり、一方的な破棄はありえない。王子に腰を抱かれた聖女は、物語ではない現実の残酷さを突きつけられるのであった。 ★公爵令嬢目線 ★聖女目線、両方を掲載します。 【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう 2023/01/11……カクヨム、恋愛週間 21位 2023/01/10……小説家になろう、日間恋愛異世界転生/転移 1位 2023/01/09……アルファポリス、HOT女性向け 28位 2023/01/09……エブリスタ、恋愛トレンド 28位 2023/01/08……完結

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

処理中です...